結局、どうしたら伝わるのか?
結局、どうしたら伝わるのか?
脳科学が導き出した本当に伝わるコツ
著者
NEW
結局、どうしたら伝わるのか?
出版社
出版日
2025年03月13日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

相手に何かを伝えようとするとき、あなたは何を意識するだろう。多くの人は、自分の考えていることをいかに正確に、具体的に言葉で表現するかに注力するのではないだろうか。自分の頭の中をいかに言語化するか。それもコミュニケーションにおいて必要なことだ。しかし、「相手に伝える」ことを考えるとき、それ以前に考えなければならないことがある。それが、「相手の視点を考える」ことだというのが、本書の主張だ。

本書にこんな質問が登場する。「とんかつは洋食ですか。和食ですか。」あなたの答えはどちらだろうか。身近な人にもぜひこの質問をしてみてほしい。そしてその理由を聞いてみてほしい。「とんかつ」ひとつとっても、いかに人によって持っているイメージが違うかが実感できるはずだ(ちなみに要約者は「とんかつは和食」派である)。

人は無意識に自分を中心に考えてしまいがちだ。人はそれぞれ違う考えを持っているということは、頭では理解できていても、「自分がこう思っているから相手もこう思うはず」「自分はわかるのだから、こう伝えれば相手もわかってくれるはず」と思ってしまう。本書はまず、自分と他者は違う視点を持っているということを脳科学の視点から理解し、その上で相手の特性に合わせた「伝え方」のテクニックを指南する。テクニックのひとつひとつは手軽なもので、すぐにでも実践できそうなものばかりだ。

「人と人はわかりあえない」という前提に立てばこそ、コミュニケーションをより豊かなものにできることを、本書は教えてくれる。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

西剛志(にし たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。1975年、宮崎県高千穂出身。東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。
30代で対人関係やストレスが重なった影響もあり難病を宣告されるも、脳の研究を通して自身のストレスをなくすことに成功し、半年で病気が完治。この出来事をきっかけに、「うまくいく人とうまくいかない人との違い」を本格的に研究するようになる。
現在は、世界的に成功している人たちのコミュニケーションや脳のしくみ、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで3万人以上に講演会を提供。テレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』や日テレ系『カズレーザーと学ぶ』など各種メディア出演も多数。
著作は20万部のベストセラー『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)をはじめとして、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教えるやりたいことの見つけ方』(PHP研究所)、『脳科学的に正しい一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)、『低GI食 脳にいい最強の食事術』(アスコム)など、海外を含めて累計発行部数40万部を突破。

脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com

本書の要点

  • 要点
    1
    相手に何かを伝えたいとき、言語化は重要だが、それ以前に「視点の理解」をすべきだ。自分の見ている世界と相手の見ている世界が違うことに気づき、それを尊重し、その違いを埋める努力をすることが、「コミュニケーション能力が高い」ということである。
  • 要点
    2
    相手と世界の見え方が違っていることを、「認知のズレ」と呼ぶ。これは「脳のバイアス」によって発生する。人にはそれぞれのバイアスがあるため、わかりあうことは難しい。「人と人はわかりあえない」という前提に立つことで、相手にやさしい視点や多様なものを認める思考が身につく。

要約

【必読ポイント!】 脳の特性を知る

「コミュニケーション力」とは視点の理解

言いたいことが相手になかなか伝わらないとき、私たちは言葉を尽くして説明しようとする。言語化はたしかに大切だ。しかし、それだけでは十分ではない。言葉を使う前に意識すべきなのが、「視点」だ。同じものを見ていても、注目するポイントによって、とらえ方はまったく異なる。そのことに気づき、それを尊重し、そこからその違いを埋める努力をすること。それが、「コミュニケーション能力が高い」ということである。

たとえば、意見が対立したとき、互いの意見を主張し合ってケンカのようになることがある。しかし、そんなときに「お互いの視点を相手に伝える」だけで、解決するという研究がある。コミュニケーションのゴールは、「相手に伝わること」、そして「互いをできるだけ理解すること」だ。それを達成するには、自分が言いたいことを言うのではなく、「相手の視点の理解」が必要だ。

相手と世界の見え方が違っていることを、「認知のズレ」と呼ぶ。これを引き起こす大きな原因が「脳のバイアス」だ。バイアスとは、先入観や偏見、思い込みなどから生まれる思考のくせを指す。100人いれば、100通りの脳のバイアスがある。だから、わかりあうことは難しいのだ。

「わかりあえない」という前提に立つことで、人にやさしい視点や多様なものを認める思考が身につく。

3つの脳タイプ
Wonderlane on Unsplash

心理学では、人は頭の中で自分が感じやすい五感のイメージで見ているものを再現していることがわかっている。著者はこうした研究をベースに、2000名以上を調べて、「脳タイプ」を3つに分類した。それは、視覚を優先する「視覚タイプ」、聴覚を優先する「聴覚タイプ」、触覚、味嗅覚など体の感覚を優先する「体感覚タイプ」だ。

脳タイプによって、同じものを見てもインプットする内容やその後の記憶のされかたがまったく異なる。たとえば、著者はある夫婦から部屋の片付けについてケンカが絶えないという相談を受けたことがある。部屋が散らかっているのに夫は片付けようとせず、妻はそれに苛立っていたそうだ。この原因は、脳のタイプにある。妻は視覚タイプだったので、ものが散らかっている状態を見て「汚い」と感じていた。ところが夫は体感覚タイプだったので、見ただけでは「汚い」とは思っていなかったのだ。

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要約公開日 2025.06.24
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