部下に仕事を任せるにあたっては、まず自分の業務を「緊急度」と「重要度」の2軸で分析する必要がある。仕事の種類によって適切な任せ方は異なるうえ、そもそも部下に任せる必要がない、あるいは任せられない仕事も存在するからだ。
第1領域は、重要で緊急な仕事。締め切り直前の仕事、クレーム対応、差し迫った問題への対処などが該当する。
第2領域は、重要だが緊急ではない仕事。戦略立案、部下育成、業務改善など、将来への投資となる業務であり、上司自身が時間を割くべきだ。
第3領域は、緊急だが重要ではない仕事。重要でない会議や断りきれない依頼への対応など、他者都合で発生した業務がここに含まれる。
第4領域は、重要でも緊急でもない仕事。不要な書類整理や形だけの業務報告書作成など、成果や成長にほとんど寄与しない無駄な業務であり、部下に任せる対象外とすべきである。
次項では、第1領域および第3領域の仕事の任せ方を見ていく。
第1領域の「重要で緊急な仕事」は、「重大問題の解決業務」と「間に合わせ業務」の2つに分類できる。
まず「重大問題の解決業務」とは、顧客からのクレームや重要設備の故障といった、突発的に発生した重大な問題や危機への対応業務である。迅速な解決が求められ、失敗が許されないため、マネジャー自身が対応するケースが多いだろう。
とはいえ、この種の業務は部下の成長に直結することが多いので、上司の立場でなければ対応できない場面を除き、積極的に部下に任せていきたい。
次に「間に合わせ業務」とは、先延ばしを続けた結果、期限が迫って慌てて対応する業務を指す。このような仕事に必要なのは自己管理の徹底であり、部下に任せるものではない。
第3領域の「緊急だが重要ではない仕事」は、「急な要望への対応」「定型・定例業務」「付帯業務」の3つに分類できる。
まず「急な要望への対応」は、他者からの突発的な依頼や問い合わせへの対応である。あなたにとっては価値の低い雑務に見えるかもしれないが、部下にとっては「成長機会」となりうる。その業務が部下の成長につながることとその理由を明確に伝えつつ、どんどん任せていこう。
次に「定型・定例業務」は、価値の少ない定例会議への参加や定型の報告書作成などが該当する。可能であれば廃止や簡素化を検討すべきだが、それが難しい場合は、各業務を実行することによる「成長機会」を伝えつつ、部下に任せたい。
最後の「付帯業務」は、会議室の手配など、業務本体に付随する些末な作業である。こうした業務は、指示ではなく協力依頼という形で部下の力を借りよう。
本書は、部下への仕事の任せ方として、部下の育成を目的とした「戦略的業務指示」を提案している。
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