こんな会社で働きたい DEI編
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こんな会社で働きたい DEI編
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2025年03月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)」が米国から世界へ広がるきっかけになったのは、2020年5月、ミネソタ州でアフリカ系アメリカ人男性が警察官の不適切な拘束によって命を落とした事件だった。

この事件を受けて「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」運動が全米に広がり、暴動が多発。企業経営にも大きな影響を与え、それまでのD&I(Diversity=多様性、Inclusion=包摂性)にEquity(公正性)が加わり、「DE&I」に形を変えた。

その後、DE&Iの動きは国境を越えて広がり、日本でもその重要性が認識されるようになってきた。実際、DE&Iの推進に取り組む企業は着実に増えている。

一方で、「なぜ企業がDE&Iに取り組む必要があるのか」と疑問を持つ人もいるだろう。この点について、組織における人材開発を専門とする立教大学・中原淳教授は、DE&Iは「人材確保」と「イノベーション」に直結するものだと指摘している。

人材を確保するには、誰もが働きやすい環境づくりが不可欠であるのは言うまでもない。さらに、多様性を尊重することで新たな発想が生まれやすくなり、イノベーションが促進されるという。つまり、DE&Iは企業の存亡にかかわる重要課題なのである。

本書では、日本におけるDE&I推進の先進事例として、14の企業を紹介する。各社の取り組みを通じて、実践的な知見を得ることができるだろう。企業経営者や人事担当者、管理職層は、本書を参考にDE&I推進の第一歩を踏み出してほしい。

ライター画像
荻野進介

著者

クロスメディアHR総合研究所(くろすめでぃあえいちあーるそうごうけんきゅうじょ)
クロスメディアグループの経営と人事をテーマにした研究機関として、調査・研究からビジネス書の執筆、採用支援、人材育成の支援まで幅広いサポートを行っている。「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」をミッションとし、編集とデザイン、マーケティングチームが一体となって、現場の課題を解決するためのソリューションを提供している。提案で終わりではなく、さまざまなメディアやツールを提供することで課題解決する実践力は高い評価を得ている。

本書の要点

  • 要点
    1
    DE&Iは、企業の成功を左右するキードライバーである。働きやすい環境を整えることで人材確保につながり、多様性を尊重することでイノベーションが生まれやすくなるからだ。
  • 要点
    2
    JTBはDEIにB(帰属性=心理的安全性)を加えた「DEIB」を推進している。
  • 要点
    3
    相互住宅は働き方改革の取り組みにより、男性の育児休業取得率がほぼ100%になった。
  • 要点
    4
    野村ホールディングスはDEIを重要経営戦略に位置づけ、全役職員の人事評価にひもづけている。

要約

【必読ポイント!】日本企業が「DE&I」に取り組むべき理由

DE&Iが企業の成功を左右する
Tasha Vector/gettyimages

現代の日本は、深刻な人手不足に直面している。立教大学経営学部教授の中原淳氏は、DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)の推進は「労働力確保のため、企業が取り組まざるを得ない必須の施策」だと考えている。

誰もが働きやすい環境を整えることができれば、人材の確保につながるうえ、ものの見方や考え方の多様化によって、イノベーションも生まれやすくなる。DE&Iは、まさに企業の成功を左右するキードライバーなのだ。

一方で中原氏は、DE&Iの推進には「3つの壁」があると指摘する。

1つ目は「理解度向上の壁」だ。これを乗り越えるには、トップの強いコミットメントが不可欠だ。トップ自らがDE&Iに取り組む意義を言葉で語り、「うちの会社が勝つために必要なこと」だと明確に打ち出すことが求められる。

2つ目は「行動変容の壁」だ。DE&Iを実践する人材を組織内に増やし、社員一人ひとりの行動変容を促す必要がある。

3つ目は「継続とインパクトの壁」である。DE&Iの取り組みは成果が見えるまでに時間がかかるため、現場に“シラケ”が広がりやすい。だからこそ、取り組みによる変化を数値として示し、納得感を得ることが重要だ。

本書では、こうした壁を乗り越えながら、DE&Iを推進している14社の事例を掲載する。本要約では、その中から4社の取り組みを紹介したい。

株式会社JTB

「違いを価値に、世界をつなぐ。」

旅行業のJTBが、Diversity推進に取り組み始めたのは2007年のこと。2023年からは「違いを価値に、世界をつなぐ。」を掲げたJTB Group DEIB Statementのもと、DEIB(Diversity, Equity, Inclusion, Belonging)の推進を本格化している。

その背景には、「多様な(Diversity)人財が活躍するためには、平等性だけではなく、一人ひとりが輝ける舞台をつくる公平性(Equity)が不可欠である」という考えがある。

加えて、多様な人が活躍できる働き方や制度を整えることで、包括性(Inclusion)を高めていく必要がある。

さらに重要なのは、個々人が自分らしさを表現でき、チームの一員としての居場所(Belonging)を実感できることだ。JTBでは、こうした状態がエンゲージメントを高め、結果的により高いパフォーマンスにつながると考えている。

働きやすい組織は自分たちでつくる

JTBでは、DEIにB(Belonging)を加えた「DEIB」を推進している。Belongingは「帰属性」を意味するが、同社では「心理的安全性」と表現されている。社員が安心して新しい挑戦をするには、自由に意見を言い合える環境が欠かせないと考えるからだ。

DEIB推進において、最も“JTBらしさ”が表れているのが「Smile活動」である。これは「働きやすい組織は自分たちでつくる」という考えに基づいた、組織風土改革の一環だ。

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要約公開日 2025.06.22
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