マウントを取らずにはいられない人
マウントを取らずにはいられない人
マウントを取らずにはいられない人
出版社
出版日
2025年05月29日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

誰しも一度は、誰かにマウントを取られて不快な思いをした経験があるだろう。あるいは逆に、自分が誰かについマウンティングしてしまい、後悔したこともあるかもしれない。

本書は、そうしたマウントの背景に存在する心理を解き明かす一冊である。相手をイラッとさせる態度の裏には何があるのか――。その言動の源にある「拒絶過敏性」や「パッシブ・アグレッション」といった概念を通じて、人間の心理を読み解いていく。

著者の片田珠美氏は、豊富な臨床経験をもつ精神科医だ。ベストセラーとなった『他人を攻撃せずにはいられない人』や『職場を腐らせる人たち』を読んだ人も多いだろう。

読み進めるうちに、「あの人がマウントを取りたがるのは、そんな理由があったのか」と他者の行動への理解が深まるだけでなく、「自分はどうだろう」と内省を促され、怒りや羨望といった感情への対処法が身につくはずだ。読み終えた頃には、不毛なマウント合戦から一歩引いた視点と、落ち着いた心を得られているに違いない。

同僚や友人との人間関係に疲れている人や、なぜかいつも誰かと張り合ってしまう自分にモヤモヤしている人にとって、きっと参考になるだろう。

著者

片田珠美(かただ たまみ)
精神科医。広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間•環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。2003年度~2016年度、京都大学非常勤講師。臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。著書に27万部ベストセラー『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『職場を腐らせる人たち』(講談社現代新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    相手の意見や批判に過剰に反応し、感情的に攻撃する背景には、「拒絶過敏性」が潜んでいる可能性がある。このようなケースでは、たとえ相手の機嫌を損ねるとわかっていても、最低限の指摘はしておくべきだ。指摘内容は必ず文書に残し、ときには録音するなどの工夫も必要である。
  • 要点
    2
    不機嫌な態度によって相手をコントロールしようとする人に対して、あなた自身が「イネーブラー」になってしまっている可能性がある。その人が不機嫌になっても、必要以上に反応せず、伝えるべきことは伝えるという姿勢を貫こう。
  • 要点
    3
    マウントを取りたくなったときは、それによって起こり得る事態を想像して、自制する必要がある。

要約

【必読ポイント!】 職場におけるマウント

否定マウント
mapo/gettyimages

著者の外来を受診したある男性は、部下の意見を頭ごなしに否定する上司に辟易している。上司の求めに応じて意見を述べても、そのたびに「そんなやり方でうまくいくわけない」と一蹴されるという。

否定の矛先は、部下の提案にとどまらない。親会社から出向してきたこの上司は、現場で長年培われてきた方法論すら否定し、ことあるごとに親会社のやり方を持ち出してくる。

さらに厄介なのは、アメリカの大学でMBAを取得したことをひけらかし、「MBA流」の新手法を強引に導入した点である。部下も取引先もその手法に順応できず、結果として業績は悪化した。

最も理不尽なのは、自ら却下した部下の案を、数日後にまるで自分のアイデアであるかのように再提案してくることである。こんな状況が続けば、部下の意欲が削がれて当然だ。

この上司は、自ら導入したやり方が正しいと信じ込み、現実に目を向けようとしない。このような心理は、精神医学では「幻想的願望充足」と呼ばれる。うまくいってほしいという願望と、実際の成果は切り離されるべきであるにもかかわらず、それらを混同してしまうのだ。

対処法としては、新手法の導入が業績悪化を招いている事実を、具体的な数字とともに詳細に記録し、上層部へ報告することが挙げられる。否定的な言動によって被害を受けている同僚数名と連携し、集団で動くほうが効果的だろう。

特に、部下の提案を否定したにもかかわらず、のちに上司が自らの案として再提示したケースがどれほどあったかについては、丁寧に記録して報告すべきである。そのためには、上司とのやり取りをすべて録音しておくくらいの覚悟も必要だろう。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2472/3177文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.07.30
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
うまくいく人は自分にやさしい
うまくいく人は自分にやさしい
今井孝
自分に嫌われない生き方
自分に嫌われない生き方
谷口たかひさ
努力の地図
努力の地図
荒木博行
イライラ、さよなら。
イライラ、さよなら。
堀内恭隆
リトリート休養術
リトリート休養術
豊島大輝
「伝え方」の本質
「伝え方」の本質
豊島晋作
気くばりのススメ
気くばりのススメ
中山秀征
ほんとうの会議
ほんとうの会議
帚木蓬生