「伝え方」の本質
不器用だった僕がたどり着いた
「伝え方」の本質
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「伝え方」の本質
ジャンル
出版社
出版日
2025年05月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

ダラダラと長い話をする人は、たいてい自分の自慢話、テッパン(だと思い込んでいる)話ばかりをしてしまう。会話のあとに「なんか気持ちのいい時間だったな」と感じさせる人は、その人の話術以上に、きちんと対話になっていたことがカギだったりする。

人の印象は「何を話したか」あるいは「何を話さなかったか」、そして「人の話を真剣に聞いたか」で決まる、ということだ。それなら、話したいように話し、相手が話すままを聞けばいいと考えるかもしれないが、そうして「ありのままに『伝え』『聞く』ことは、実は人生の多くの場面で通用しない」という。

よかれと思って言ったことが伝わらない。感情を抑えて黙っていたら、酷い対応がエスカレートしてしまう。そんなことは日常茶飯事だろう。

ビジネスパーソンは伝えることと聞くことに、ますます多くの時間を割いている。しかし、情報が氾濫し、ChatGPTですぐ答えらしきものを得られる現代、コミュニケーションにも効率が求められ、集中できる時間は短くなっている。これまでのスタイルでは、話を「聞いてもらいにくくなっている」ということだ。

テレビ東京やYouTubeといったメディアで「伝える」ということの極みに立つように見える著者も、迷いのなかでその技術を磨いていったのだということがよくわかる。本書が示す本質を実践によって会得すれば、誰もが伝えられる人になれることは間違いない。

著者

豊島晋作(とよしま しんさく)
1981年福岡県生まれ。テレビ東京報道局所属の報道記者、ディレクター、ニュースキャスター。現在、WBS(ワールドビジネスサテライト)メインキャスター。2005年3月東京大学大学院法学政治学研究科修了。同年4月テレビ東京入社。政治担当記者として首相官邸や与野党を取材した後、11年春からWBSディレクター、マーケットキャスターを担当。16年から19年までロンドン支局長兼モスクワ支局長として欧州、アフリカなどを取材。ウクライナ戦争や日本および世界経済の動きなどを解説した「豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス」「豊島晋作のテレ東経済ニュースアカデミー」などの動画はYouTubeだけで総再生回数2億回を超え、大きな反響を呼んでいる。著書に『ウクライナ戦争は世界をどう変えたか』『日本人にどうしても伝えたい教養としての国際政治』(ともにKADOKAWA)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「本当に伝わる話し方をする人は、自分ではなく『聞き手を満足させること』を最優先に」する。
  • 要点
    2
    相手に伝えるためのファーストステップは、シンプルに「『相手が聞きたいこと』を話すこと」だ。
  • 要点
    3
    人間は一度にたくさんのことを理解可能なようにはできていない。「話す内容を減らす、つまり『引き算』すること」が大切だ。
  • 要点
    4
    何かを伝えるには、聞き手に最後まで話を聞いてもらうための技術だけでなく、「感情」が重要な原動力になる。
  • 要点
    5
    「伝える力」のためには、大事な情報を引き出し、信頼関係を築いて人を動かすための「聞く力」も必要となる。

要約

伝わらない最大の原因

誰もが話を聞いてほしい
pinstock/gettyimages

8割くらいの人は、「自分が話したいこと」を「自己満足のため」に話している。それがつまらない話や長い話となる。不満や楽しい体験を誰かと共有したいと思っても、それは相手が聞きたい話とは限らない。

「本当に伝わる話し方をする人は、自分ではなく『聞き手を満足させること』を最優先に」するのだ。つまり伝える力とは、「聞き手を満足させる力」なのである。

話をしている人はたいてい自分自身を客観視できないため、自分が快感の赴くままにつまらない話をしていることに気づけない。時間的な余裕がなくて聞き手のことにまで頭が回らない場合もある。

ほとんどの人は「『自分の話を聞いてもらいたい』という願望」を強く抱いているし、他者からの承認を求めている。自分もそういう人間なのだということを自覚するところがスタート地点だ。

まずは、「スマホのカメラで自分が話している動画を撮影して見返すこと」を何度も繰り返してみよう。そのときの声色や表情が、「あなたが人に何かを伝えているときの姿」だ。この「スマホ自己診断」を実際に試すかどうかで、伝える力は雲泥の差となる。本を読むだけでは自転車の乗り方が身につかないのと同じだ。

本書で紹介する方法は、どれも練習が大切となる。そして、実際に伝えるには相手が必要だ。一人での練習に閉じることなく、プレゼンや会話などで経験を積まなくてはならない。

【必読ポイント!】 「伝える」技術

「相手が聞きたいこと」を伝える

相手に伝えるためのファーストステップは、シンプルに「『相手が聞きたいこと』を話すこと」だ。多くの人は「『自分が他人から褒められている』という情報」を知りたがっているので、「まず相手を褒めること」が大事である。そうして承認欲求が満たされれば、話を聞いてもらえる可能性が高まる。評価の理由をできるだけ具体的にすると、お世辞だと思われずに深い満足感を与えられる。

つまらない話はたいてい、「過去に起こったこと」だ。現在を生きている聞き手にとって、いま有益となる情報のほうが知りたい。過去の話であっても、「再現可能な方法が含まれているかどうか」が鍵となる。過去の話にもとづいて伝えたいことがあるなら、成功ではなく失敗を話すほうが引きつけられる。ここでも、「同じ失敗をしないための情報」を具体的に述べることがコツだ。「きちんと期限を守れ」というようにただ叱責するより、過去の失敗とそこから得た学びを交えたほうが、聞いているほうも前向きに捉えることができる。

後輩に経験を伝えるとき、そこには「『昔の自分の努力や成功を知ってもらいたい』という承認欲求」が顔をのぞかせている。「過去を肯定したい」という思いから苦い記憶を伝える場合も、それを吐露することで理解を示してくれることを望んでいる。いずれも、「自己満足のための話」なのだ、ということを肝に銘じておきたい。

「引き算」して伝える
Khosrork/gettyimages

新製品をアピールしようとして、伝えたいことを全部盛り込んでしまい、時間が足りなくなる。そういう失敗はよくあることだろう。

人間は一度にたくさんのことを理解可能なようにはできていない。「話す内容を減らす、つまり『引き算』すること」が大切だ。

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要約公開日 2025.07.22
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