「リトリート(retreat)」とは、日本語で「転地療法」「転地療養」と訳されている言葉だ。「日常を離れて自然の中でのびのびと過ごす」ことだとも言える。
著者はこのリトリートを「人がヒトに戻る旅」と定義している。社会の一部である「人」が、自然や生態系の一部である「ヒト」に還る――。言い換えれば、社会的な鎧を脱いで、自然の中でまっさらな自分を見つけるための旅である。
リトリートには絶大な休養効果がある。リトリート施設を運営している著者は、お客様の変化を間近で感じているという。到着時は緊張した様子であっても、自然の中を散歩したり焚火をぼんやり眺めたりしているうちに、たたずまいや表情が柔らかくなってくる。たった数時間で、大きな変化が見られるのだ。
また近年は、欧米を中心に「リトリート=日常を離れて自然の中でリセットする旅」という認識が広まっている。大自然でのキャンプや、温泉施設・リゾートホテルへの滞在のほか、都会の隠れ家サロンなど、さまざまに進化を遂げている。
リトリート文化は、日本にも古くから存在している。『風土記』のような古来の書には、湯治などの記録が残っているはずだ。そういった意味では、リトリートは古くて新しい習慣だと言えるだろう。
十分に寝ても疲れがとれない、休日にゴロゴロしてもスッキリしない――。そんな経験はないだろうか。
デスクワークやケアワークが増えている現代は、従来に比べて脳や心を酷使することが多くなっている。そのため、ただ横になって体の疲れをとっても、真の意味では休養になっていない。
そこで注目されているのが「アクティブレスト(積極的休養)」である。これは、軽度な運動をすることで疲労回復を促す休養法であるが、その概念をもっと広げてリトリートに取り入れることを、著者は提案している。週末をダラダラと過ごすのではなく、リトリートとしてリフレッシュできる活動を取り入れることで、メリハリをつけるのだ。
リトリートではよく、「自分と向き合う」「ありのままの自分を見つめる」という表現が使われる。アクティブレストを上手に取り入れられれば、楽しみながら自分自身を見つめられるようになるはずだ。
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