著者は「ローカル」な世界から、「グローバル的に最先端」な事例まで両方に接してきた。今の日本では、議論がすれ違っているだけのコミュニケーション不全が大量に放置され、互いを無意味に罵り合っているかのようだ。大事なのは、立場を超えていかに協力し合うか。著者はこれを「メタ正義感覚」と呼ぶ。
対立する立場の間をつないで成果を出してきた経営コンサルタントの視点と、様々な個人との文通を通じ、社会全体を複眼的に見てビジョンを作ってきた思想家の視点。両方を駆使しながら、敵に見えている相手とどう協力し合えるかを解き明かすのが、本書の狙いだ。
そのためには、思想と社会の現場感の両者を往復し合い、新しい活路を見出すことが欠かせない。今の日本に吹き荒れる「論破という病」を克服する試みを始めよう。
今のネット論壇は「論破という病」にかかっている。インスタントに敵を攻撃して、何か意味のあることを言ったかのように勝ち誇る。これを「平成の議論」と呼ぼう。
一方、旧来メディアが盤石な地盤を持ち、知的な権威とされる論客たちが知識を披露していた時代を、「昭和の議論」と呼ぶことができる。冷静に考えると、平成時代の議論と同じくらい、昭和時代の議論でも人の話を聞いておらず、何も検証されない世界が広がっていたといえる。
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