超新版ティッピング・ポイント
超新版ティッピング・ポイント
世の中を動かす「裏の三原則」
NEW
超新版ティッピング・ポイント
出版社
出版日
2025年06月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書の前作『ティッピング・ポイント』は、自殺やテレビ番組の流行といった社会現象を、伝染病の原理を応用して解明しようとした点が画期的で、世界的ベストセラーとなった。

カギとなったのは、「少数者の法則」「粘りの法則」「背景の力」の三原則である。少数者の法則は、社会を変えるわずかな人数の影響力を指す(前作では経済学の80:20の法則を引き合いに出し、伝染にはさらに少ない人数が影響を与えるとした)。粘りの法則は、人々の記憶に残る強い感染力を意味し、背景の力は、環境の違いが伝染の広がりに大きく影響することを示す。これら三つの原則を掘り下げたうえで、「リソースは一点に集中させること」「世界は直感どおりには動かない」という二つの教訓を導き出した。一見手に負えない社会現象を、ストーリー調で明快に解説した名著といえるだろう。

そして今回の新著では、25年の時を経て、「空気感」「スーパースプレッダー」「ソーシャル・エンジニアリング」という新たな三つの視点から、社会的伝染のメカニズムを掘り下げていく。注目すべきは、ソーシャル・エンジニアリング、すなわち社会への介入の難しさを問う姿勢だ。社会をデザインする際の倫理的ジレンマを描きながら、混沌とした現代社会への希望も託されている。まさに現代にこそ読まれるべき意欲作である。読後には「社会の空気をどう設計するか」を考えずにはいられないだろう。

著者

マルコム・グラッドウェル
Malcolm Gladwell
本害のオリジナル版である『ティッピング・ポイント:いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』(飛鳥新社)をはじめ、『天才!成功する人々の法則』(講談社)、『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと』『ボマーマフィアと東京大空襲 精密爆撃の理想はなぜ潰えたか』(いずれも光文社)など数々のベストセラーを世に送り出す。1996年から米名門誌『ザ・ニューヨーカー』のスタッフライター。イギリス生まれ、カナダ育ち、現在はニューヨーク在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    社会現象は、空気感や集団構成の条件が整うと「ティッピング・ポイント」に達して一気に広がる。
  • 要点
    2
    社会的伝染の新たな原則は、「空気感」「スーパースプレッダー」「ソーシャル・エンジニアリング」の三つである。
  • 要点
    3
    ティッピング・ポイントは意図的に操作されるケースもあるが、よりよい世界をつくるために活用できる。

要約

社会的伝染病の原則を求めて

狭域差異

1967年、医師のウェンバーグは、バーモント州の「地域医療計画(RMP)」に職を得た。RMPは連邦政府が出資した取り組みだ。ウェンバーグは州内の医療サービスの質を把握し、誰もが同レベルのケアを受けられる状態をめざした。

バーモント州内には13の医療地区が存在する。地区ごとにどれだけの資金が使われているかを調査すると、無視できない支出の差があった。たとえば、痔核を除去する手術は、ある地区では別の地区の5倍行われていた。しかも、地域の貧しさといった理由ではなく、なんの脈絡もないのである。ウェンバーグはこうした発見を「狭域差異」と名づけ、アメリカ中でそのエビデンスを確認した。

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要約公開日 2025.08.16
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