禅の目的は、心を静かにし、自分の気持ちや思いをよく理解することだ。雑念を取り除き、目の前のことに集中する。簡単にいえば、「心を整えて、今この瞬間を大切にする生き方」が禅だ。
禅僧というと、いつも穏やかで、感情に流されたり、周りの喧騒に動じたりしない人を想像するのではないだろうか。そうした佇まいの禅僧であっても、人間である以上、常に感情を抱いている。違うところがあるとすれば、すぐさま「平常心」に立ち戻ることができるところだ。怒りの感情が湧いても、その状態にとどまるのではなく、穏やかな心に戻るしなやかさは、禅の実践で培われる。禅による物事の見方、考え方、受け止め方をして、禅の教えに則って行動するのが、禅の実践であり、禅僧の生き方だ。
そのような生き方は、誰でも日常に取り入れることが可能なものだ。心が乱れた時にどう受け止め、行動すべきかという知恵が、禅の教えには詰まっている。ちょっとした考えを取り入れるだけで、驚くほど心が軽くなるはずだ。
現代はストレス社会だ。誰もが少なからずストレスをかかえ、イライラやモヤモヤを募らせている。
ストレスを抱えた人同士が関わっていれば、感情がぶつかり合い、思わず腹を立ててしまうこともあるだろう。相手の言動にカチンときたら、怒りの感情が込み上げてくるのは自然なことだ。問題なのは、その後の対応だ。
禅では、怒りを「頭に上げる」と表現する。怒りに頭が支配されると、理性が働かなくなり、事態は悪化するばかりだ。
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