断るのがなんとなく苦手。仕事も家庭も多忙で、常に時間が足りない。つい意見の強い相手に押しきられてしまう。愚痴につきあったり、相談を受けたりすることが多い。「あなたのためを思って」という言葉にモヤモヤする……そんなあなたに足りないのは、人間関係に「線を引く」意識かもしれない。
この「線」とは、心理学用語の「バウンダリー」に由来する。バウンダリーとは、「自分と他者の間にある境界線」のこと。より具体的にいえば、「どこまで相手と関わるか」「どこから自分を守るか」を自ら決めるための心理的な境界線を指す。
人にはそれぞれ「自分の領域」があり、その領域は本来、尊重されるべきものだ。
しかしながら、気づかぬうちにその領域へ、他者がずかずかと踏み込んでくることがある。これが「バウンダリーを越えられる」という状態だ。
そのようなとき、自分を守るために「それ以上はやめてください」と伝えることは、決してわがままではない。
たとえば「時間」のバウンダリーを考えてみよう。忙しい時期に新たな仕事を頼まれたとき、どのように対応するだろうか。
バウンダリーを適切に引けている人は、現状では引き受けられないこと、しかし1週間後であれば対応可能であることを率直に伝えられる。「できること」と「できないこと」の線引きを明確にし、相手との調整を図るのだ。
一方で、バウンダリーが曖昧な人は断りきれずに引き受けてしまい、結果的に自分の時間が失われていく。
人間関係において線を引くことは、自分を守り、大切にする行為である。同時に、相手の線を尊重することにもつながる。
自分の境界を明確にし、相手の境界にも敬意を払うことで、互いにとって心地よい距離感が生まれる。結果として、人間関係はより健やかで、人生そのものもずっとラクになっていくはずだ。
線を引くとは、「誰に」「どこまで」OKとし、どこからNGとするかを自分で決める行為である。
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