【必読ポイント!】「伝統」とは何か
危機に瀕する伝統食
発酵デザイナーであり、東京で発酵食品店を営む著者は「伝統の危機」を実感している。原料がない、つくる人がいない、資材や設備がない。様々な要因が重なって、今までのように仕入れができなくなってきている。
たとえば、秋田ではハタハタ漁が壊滅的で、しょっつるがつくれないという。酒や調味料を入れる瓶も、メーカーの廃業などで製造ができなくなったものもある。自然環境、働く人の持続性、各地で育んできた産業の仕組みなど、社会が放置してきた問題のツケに直面しているのだ。
国産の味噌や日本酒など、伝統食をつくる文化が損なわれると、どんな問題が起きるのか。そもそも経済的メリットの乏しい伝統的なものづくりを、継承する人がいるのはなぜなのか。
このような問いに対し、先人たちの歴史・伝統観や、国内外で出会った多彩な伝統文化とその担い手たちの営みを通して、答えを探求していく。「伝統とは何か」を明らかにし、現在を生きる個々人が未来に向けて伝統をどう役だてればいいかをひも解くのが、本書の目的である。
必要なのは「血」ではなく「手」

伝統の活かし方。それを考える際に注意しなければならないのは、伝統はときに捏造や悪用をされるということだ。
とりわけ注意すべきは「血統」である。そもそも生物学的に、純粋な血統というものは存在しない。かつて民俗学や国学の一部が日本の植民地主義を助長してしまったり、ナチス・ドイツの優生思想がユダヤ人迫害に結びついた事実を忘れてはならない。伝統が価値を発揮するには、排他的でないあり方を模索する必要がある。












