吉本における「営業」とは
「笑い」を望んでいないお客様をどう笑かすか
吉本興業は大きく3つの部門で構成されている。「劇場」「制作(テレビ制作やマネジメント)」「営業」である。本書の主題となるのは、3つめの「営業」である。
吉本における「営業」とは、制作のプロではない「クライアント」が企画・運営するイベントを指す。会社の表彰式や忘年会、ショッピングモールのイベント、学園祭、警察の1日署長、成人式、夏祭り……などがその例だ。芸能とは関係のない人たちが運営しているため、プロの現場では起こり得ないハプニングも当然起きる。
営業に共通するのは「チケット代を取らない」ことである。お客様自らがチケット代を払って観にいく興行と違い、営業の場合は「笑い」が目的ではない。たとえば、買い物ついでに偶然やっていたイベントを、「ながら見」するような感覚である。
営業で試されるのは、芸人や笑いを求めていないお客様の興味を引き、いかに盛り上げることができるか――。その一点に尽きる。
営業現場のマニュアル
「本番」は現場に入った瞬間に始まる

イオンモールの営業では、本番前に従業員のいる事務所へ行って挨拶をすることがある。著者はそこで必ず、本番さながらのギャグを披露している。イベントはお客様向けであり、従業員は本番を見ることができないからだ。まず従業員に喜んでもらい、「また呼びたいね」と思ってもらうためでもある。
仕事とプライベートの顔を分けることは、一般社会でもよくあることだ。しかし、「どこで切り替えるか」で明暗が分かれる。芸人の場合はステージ上とそれ以外で使い分けていることが多いが、ステージ以外の場所にも関係者はいる。ステージを降りたらすぐに「素の自分」に戻ってしまうのは、実は非常に危険である。
















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