生成AIにテーマと条件を伝えれば、ものの数秒でそれなりの文章ができあがる。「○○さんのような文体で」と指定すれば、その注文にさえ応えてくれる。
そんな時代にあって、人間の書く文章には、どんな価値が残るのだろうか――。
その問いに対して、本書は「芸風」というユニークな答えを提示する。
著者のレジー氏は、一般企業でキャリアを積みながら、批評家としても活躍しており、著書に『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』や『東大生はなぜコンサルを目指すのか』がある。会社員と執筆業という2つのフィールドで培った視点が、本書にも生かされている。
生成AIは、決められた型に沿って一定水準の文章をつくることに長けている。だからこそ価値を持つのが、その人が何に心を動かされ、何を選び、どんな経験を積んできたのかという「キャラクター」である。そして、それが他者に伝わる形で表れたものこそ「芸風」だという。
この指摘を読むと、AI時代に必要な文章力の見え方が変わってくる。大切なのは、わかりやすいだけの文章を書くことではない。自分は何を、なぜ書くのか。そしてどのように書くのか。そうした部分にこそ人間の価値があるのだ。
文章力はあるのに自分の書いたものに物足りなさを感じる人、借り物ではない言葉で書けるようになりたい人に、ぜひ熟読をおすすめしたい。読み進めるにつれ、「うまく書きたい」から「自分だからこそ書けるものを書きたい」へと、文章に対する意識を変えてくれる一冊である。