客に入店してもらうためには、最初のアプローチが重要になってくる。例えば、「いらっしゃいませ、どうぞご覧ください」という声出しは、賑やかさが必要な食品売り場や特売セールにおいては有効だが、客が少ない商業施設の館内では耳障りになったり、販売員の「売りたい」という必死さが伝わってしまったりしてマイナスになることがある。客に店舗に足を踏み入れてもらうという第一関門をクリアするためには、入店しやすい雰囲気作りが必要だ。
そのためには、ただ大声を出すのではなく、その内容に注意することが重要である。「完売していた○○が入荷しました」「2点以上のお買い上げで10%オフです」など、客が「聞いてよかった」と思える情報を出す。また、販売員が正面に待ちかまえている店を客は敬遠する。陳列品を整理するなど動きのある作業をしていると、客が入りやすくなる。
客の好みや考え方、感じ方は、それぞれに異なっているため、世間一般の基準や自分の思い込みに基づいた声かけをすると、共感を得られず、接客につながらないこともある。例えば、「お買い得になっております」という声かけに対して、「安く購入できるから良い」と思う人もいるが、安く買うことに引け目を感じて敬遠する人もいる。なので、季節物の洋服のセールであれば、「定番品なので長く使えます」「春物(秋物)でも似たデザインのものが出ています」といった具合に「お得感」を「安い」以外の言葉で客に伝えるように工夫するとよい。
声かけの際は、客の行動に合わせてタイミングをはかったり、客が考えていることを想像したりして言葉をかける。こうしたことを実践するには、実際に売れたときの、客の行動に対するアプローチワードをストックしておくとよい。
来店したときの服装で客の好みを判断するのは危険である。なぜなら、その姿が普段と違う場合もあるからだ。客の外見から好みを推測して提案をすることは接客では重要だが、販売員が客の好みや悩みなどのニーズを勝手に決めつけてはいけない。場合によっては、客のニーズと正反対のものをすすめてしまうことになりうる。
客の服装は、「今日はたまたま」なのかもしれないと考え、「普段も○○ですか?」というように、「いつもはどうなのか」を聞く。こうすることで客のニーズと販売する側のミスマッチを防ぐことができる。
プレゼントを探しに来た客には、プレゼントする相手について質問し、そのイメージを客と共有する。質問をする際には、「どんな人ですか?」のようなあいまいな聞き方をしないように気をつけよう。あいまいな質問は答えにくいため、的確な答えを引き出しにくい。
「○○ですか? □□ですか?」と二択で問いかけると客が答えやすくなる。こうした二つの選択肢を提示する質問を「クローズドクエスチョン」と言う。例えば、「派手な色と地味な色、どちらが多いですか?」「日本酒派ですか、ワイン派ですか?」といった具合で、プレゼント相手のイメージや嗜好を把握していく。イメージを絞り込むために、対照的な商品を二つ提示して意見を聞く方法も効果的だ。
商品を手にとって見ている客に、「○○をお探しですか?」と聞くと、ほとんどの客から迷惑そうな反応が返ってきてしまう。
3,400冊以上の要約が楽しめる