日本でいちばん大切にしたい会社

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日本でいちばん大切にしたい会社
出版社
出版日
2014年01月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

この本はただのビジネス書ではない。ノンフィクションの短編集という表現がふさわしいかもしれない。本書に取り上げられている各社のドラマに、読んだ人の多くは感動し、涙することだろう。

なぜこんなにもこの本は人の心を打つのだろうか。それは恐らくたくさんの人が、ビジネスにおける成功とは、血も涙もない、冷徹で無機質な判断を重ねることでようやく辿りつけるものであり、会社を経営するうえで従業員や地域社会に対して誠実に接することは不可能だと思い込んでしまっているからではないだろうか。本書はそういったビジネスに対する一種の諦念を見事に打ち破ってくれる。血が通った、周囲への感謝と愛情に満ちた経営は可能なのだ、という希望を与えてくれる一冊だ。だからこれほどに泣けるのだ。

しかも本書が取り上げている会社は全て地方の中小企業でありながら、それぞれが豊かな独創性を持ち、事業としてきちんと成功を収めている。どこかの大手企業の下請けを手掛けることで成功しているのではなく、自らが販売者となってお客様に価値を届けている。

本書はやはり、中小企業の経営者の方に読んでいただきたい一冊だ。正しい経営をすることに対して、勇気を持てることだろう。そして、個人的には若いビジネスパーソンにもぜひ手に取っていただきたいと思っている。未来を背負う人々が、会社の規模や拠点に関係なく、優れた会社とは何かという視点を養うきっかけになるはずだからである。

ライター画像
苅田明史

著者

坂本 光司
福井県立大学教授・静岡文化芸術大学教授等を経て2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授及び法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科(MBA)客員教授。他に、国、県、市町や商工会議所等団体の審議会や委員会の委員を多数兼務。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論

本書の要点

  • 要点
    1
    会社は経営者や株主のものではない。会社には、①社員とその家族、②下請企業の社員とその家族、③顧客、④地域社会あるいは地域住民、⑤株主という、五人に対する使命と責任があり、その五人に対する使命と責任を果たすための行動のことが、本当の「経営」だと言える。
  • 要点
    2
    本書で取り上げられている「日本でいちばん大切にしたい会社」は、大企業ではなく、立地も地方にあり、中には斜陽産業と言われる業界に属しているが、それでも従業員や地域社会に貢献しつつ、好業績を持続している。

要約

会社は誰のために?

iStock/Thinkstock
企業経営の第一義は、社員とその家族の幸福を追求し、実現すること

本書は第1部と第2部から構成されている。第1部では経営者が心すべき「五人」に対する使命と責任について、第2部では本書のタイトルにもなっている「日本でいちばん大切にしたい会社」5社の実例が紹介されている。

著者である坂本氏はこの本を執筆するまでに6000社を優に超える企業研究を行ってきたそうだ。その中でも選りすぐりの5社が紹介されているとあって、本書にて取り上げられたエピソードはどれも感動するものばかりだ。

第1部の冒頭で、坂本氏は「会社は誰のために?」という問いに対し、「会社は経営者や株主のものではない」と喝破している。氏によれば、会社には「五人に対する使命と責任」があり、その五人に対する使命と責任を果たすための行動のことを、本当の「経営」と定義しているのだ。それではこの五人とは誰か。

五人の一番目は、社員とその家族である。お客様ではなく社員を一番目にあげる理由は、お客様が満足するようなサービスを提供するには、社員の満足度が高くなければならないからだ。

二番目は、外注先、いわゆる下請企業の社員とその家族である。著者に言わせると、それらの人々は「社外社員」と言え、発注者と下請企業・外注企業のあいだで利益に大きな差があれば、それは健全な状態とは言えないからだ。

三番目に挙げられるのが顧客、四番目が地域社会あるいは地域住民に対する使命と責任で、五番目に株主が当たる。多くの経営者が株主の満足度を優先して追求する経営を標榜しているが、株主の満足度はこれまでの四人の満足度を高めれば、必然的に発生するものであり、株主とこれまで述べてきた四人を同列に考えるべきではないのである。

iStock/Thinkstock

【必読ポイント!】 日本理化学工業株式会社

社員の7割が障害者の会社

坂本氏が取り上げる「日本でいちばん大切にしたい会社」は、自分たちにしかできない仕事をしているオンリーワンの会社ばかりだ。そのすべてが、物ではなく心を大切にしている会社だ。本書ではまず、「日本理化学工業株式会社」というダストレスチョーク(粉の飛ばないチョーク)を製造している会社が紹介されている。この会社は従業員が約50名で、およそ7割が知的障害をもった方々で占められているという。

さらりと書いてあるが、7割もの障害者を雇用している企業が、読者の方々の周りに存在するだろうか。いったいどうすれば7割もの障害者を雇用することが可能なのか。どんな仕事を与え、どんな風に周りの社員と一緒に働いているのか。その秘密は、この会社が障害者の雇用を始めた50年前にさかのぼる。

「私たちが面倒をみますから」

1959年のある日、近くにある養護学校の先生が、日本理化学工業を訪ね、障害をもつ二人の少女を採用してほしいと依頼してきた。

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要約公開日 2013.11.20
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