いつも「時間がない」あなたに

欠乏の行動経済学
未読
日本語
いつも「時間がない」あなたに
いつも「時間がない」あなたに
欠乏の行動経済学
未読
日本語
いつも「時間がない」あなたに
出版社
早川書房
定価
2,200円(税込)
出版日
2015年02月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

欠乏が引き起こす現象とその構造、人間に対する影響を、行動経済学の視点から2人の研究者が本書で解き明かしている。ここで取り上げられている欠乏とは、主に「時間がないこと」と「お金がないこと」であり、特に「お金がないこと」=「貧困」について詳しい。ひとたび人が貧困に陥ると、なかなかそこから抜け出せないことや、そんな状態になってしまう構造について説明がなされている。さらには、貧困になることが経済的な面だけにとどまらず、人の日々の生活や精神状態、行動パターンに影響し、どのようなネガティブな要素を生み出すかについてもよくわかる。

日々忙しく、経済的に不透明な時代に生きる私たちにとって、時間とお金の欠乏は身近な問題であり、誰にでも襲いかかる可能性がある脅威でもある。ページを進めるごとに、自分自身が目の前のことのみに集中するあまりに、周囲の重要なことを無視してやりすごしてしまう「トンネリング」を起こしていることに(あるいは、そうした経験があることに)気が付いて、ドキリとする人もいるはずだ。『いつも「時間がない」あなたに』というタイトルからは、時間の使い方のノウハウ本のようなイメージを受けるかもしれないが、まったく違う。本書は、時間を含めて、欠乏という現象の深層にあるものをえぐり出し、私たちにどうすべきかを問いかけているのである。

著者

センディル・ムッライナタン
ハーバード大学経済学部教授。俗に「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞の受賞者で、専門は行動経済学・発達経済学。

エルダー・シャフィール
プリンストン大学ウィリアム・スチュワート・トッド心理学教授。専門は認知科学、行動経済学。

本書の要点

  • 要点
    1
    欠乏は集中を生み、目の前のもの以外が見えなくなるトンネリングを引き起こし、目先の欠乏に対処することだけに集中する。
  • 要点
    2
    トンネリングによって重要であるが緊急でないことを先延ばしにするとき、突発的に起こるショックを乗り切るために使えるスラック(ゆとり)が必要だ。
  • 要点
    3
    貧しい人々を理解するためには、彼らが集中し、トンネリングを起こし、まちがいを犯すこと、お金だけでなく処理能力も欠いていることを認識しなくてはならない。
  • 要点
    4
    欠乏が人を引きずり込む力は強いが、その論理を理解することで、ネガティブな影響を最小限にできる。

要約

欠乏によって起こること

トンネリングが目先だけに集中させる
aerogondo/iStock/Thinkstock

ひとつのことに集中するということは、他のことを放っておくということ。集中する力は物事をシャットアウトする力でもある。欠乏は「集中」を生む代わりに、「トンネリング」を引き起こす。つまり、目先の欠乏に対処することだけに集中する。

「トンネリング」は、トンネル視を連想させることを意図した表現で、トンネル視とは、トンネルの内側のものは鮮明に見えるが、トンネルに入らない周辺のものは何も見えなくなる視野狭窄のことを表わす。

人はトンネリングを起こすと、ほかのことを完全に放置することがある。トンネルの外の物事ははっきり見えにくく、過小評価されやすく、省かれる可能性が高い。

欠乏によって物の見方が変わり、選択の仕方が変わる。のめり込んでしまうせいで、本当は大切にしているものをおろそかにするのである。

欠乏は処理能力に負担をかける

欠乏への集中というものは無意識であり、人の注意を引きつけるので、ほかのことに集中する能力を邪魔してしまう。

注意しなければならないのは、外部に気を散らすものがまったくなくても起こるマインド・ワンダリングである。脳が安静状態になると、人は自分自身でも気づかないうちに行っていることから離れていく傾向がある。何かに集中しようとしていても、突然の物音と同じように、欠乏によって注意を他にそらされてしまう。

欠乏は、重大な心配ごとが連続発生することと言える。貧しい人はひっきりなしにお金の心配をしなければならず、多忙な人は、時間の心配と戦わなくてはならないのだ。欠乏は、ほかのあらゆる心配の上にさらなる負担を加え、常に処理能力に負担をかける。欠乏によって負荷をかけられた頭脳は、能力が発揮しにくい状態になるため、他の人からは無能な頭脳だと勘ちがいされやすい。

【必読ポイント!】 トレードオフ思考とスラック

欠乏していればトレードオフがわかる
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

欠乏はトレードオフ(一方を追及すれば他方を犠牲にせざるを得ないこと)思考を強いるものだ。お金に困っている人は、何かほかのものを買おうと考えるとき、トレードオフに直面する。厳しい締め切りに追われている人も、ほかのことに1時間を費やすことを考えるとき、トレードオフを感じる。トレードオフ思考は欠乏状態に特有の結果であるのだ。

欠乏は人を大きなまちがいへと導く傾向がある。処理能力が低下していると、衝動に屈しやすく、誘惑に負けやすく、失敗しやすいのである。

一方で、スラック(ゆとり)があると豊かさを感じられる。スラックは非効率ではなく、心のぜいたくだ。豊かであれば、より多くのものを買えるだけではなく、考えなくていい、まちがいを気にしなくてもいいぜいたくが許されるのである。

トンネリングで目先のことしか見なくなる

欠乏を経験する人は、今だけでなく、たいていあとでも欠乏を経験しがちだ。欠乏に直面すると、人は現在に集中してしまい、長期的な見通しなしで例えば借金をしてしまう。

人は重要で期限が迫った課題に取り組むとき、爆発的に生産性が上がるという。これを集中ボーナスと呼ぶ。その一方で、多忙な人は重要だが緊急でない課題を放置してしまう傾向がある。

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