幼児教育の経済学

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幼児教育の経済学
ジャンル
著者
ジェームズ・J・ヘックマン 古草秀子(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,728円
出版日
2015年07月02日
評点(5点満点)
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

幼児教育と聞くと、多くの人が算数や国語などの早期教育を想像するのではないだろうか。しかし、本書で言う幼児教育は、学力から判断する認知スキルだけでなく、社会的に成功するための忍耐力、協調性、自信、計画力といった非認知スキルも重要視している。この2つのスキルは幼少期に発達するため、子供が小学校へ入学する6歳の時点での家庭環境によって、スキルの格差が明白になってしまう。

幼児期の家庭内暴力、虐待、ネグレクトといった悲惨な体験は、成人してからの病気や医療費の多さ、うつ病や自殺の増加、アルコールや薬物の乱用、労働能力や社会的機能の貧しさ、能力的な障害などさまざまな欠陥を引き起こす。幼いころの親密なふれあいは、脳の機能をつかさどる重要な部分の発達に影響を及ぼしているので、ふれあいが欠落すると、脳の発達にも異常が生じてしまうのだ。

こうした状況を改善するにはどうすればいいのか。ノーベル賞経済学者の著者は、恵まれない家庭の子供を対象とした追跡調査の結果をもとに、「2つの就学前プロジェクト」が子供の成長を改善し、彼らの将来の学業や働きぶり、社会行動に肯定的な影響をもたらすことを明らかにした。本書の結果から、就学前の幼児教育に公益投資をすることが、非常に大きな収益を生むことがわかるだろう。教育や貧困、格差社会といった問題に興味のあるすべての人に読んでいただきたい一冊である。

山下 あすみ

著者

ジェームズ・J・ヘックマン
シカゴ大学ヘンリー・シュルツ特別待遇経済学教授。
1965年コロラド大学卒業、1971年プリンストン大学でPh.D.(経済学)取得。1973年よりシカゴ大学にて教鞭を執る。1983年ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞。2000年ノーベル経済学賞受賞。専門は労働経済学。

本書の要点

  • 要点
    1
    人生で成功するためには、IQに代表される認知スキルだけでなく、忍耐力、協調性、計画力といった非認知スキルも重要である。この2つのスキルは幼少期に発達し、その発達は家庭環境によって大きく左右される。
  • 要点
    2
    貧困層の子供たちに就学前プロジェクトを施すことが、子供たちの将来の所得上昇だけでなく、社会的成功や健康にも貢献する。また、幼児期の教育に対する公益投資は非常に収益率が高い。
  • 要点
    3
    日本でも子供の貧困は深刻化しつつある。貧困層への就学前教育支援に対して税金を投入する重要性を説明することが必要になる。

要約

【必読ポイント!】 子供たちに公平なチャンスを

アメリカ社会を覆う深刻な教育格差

人生で成功するには、IQテストや学力検査によって測定される認知スキルだけでなく、肉体的・精神的健康、忍耐力、協調性、意欲、自信、計画力などの社会的・情動的性質である非認知スキルも欠かせない。この2つのスキルは、幼少期に発達し、その発達は家庭環境によって大きく左右される。

アメリカでは家庭環境が悪化している。過去30年の間、特に男性の高校卒業率の低下が著しい。また、スキルのない移民が流入することにより、アメリカでは低スキルの人々が増加した。現に、アメリカの労働者の20%以上の人が、医者の処方箋に書かれた指示を理解する基本的能力を持っていないとされている。どうすれば現状を改善できるのだろうか。

著者は、幼少期の介入に力を注ぐ公共政策によって、こうした課題を改善することができると主張している。現在のアメリカの公教育は、認知能力を測定するテストの結果を重視している。しかし、社会性・情動に関する非認知能力も、賃金や就労、労働経験年数、大学進学、十代の妊娠、犯罪率などに大きく影響する。それを証明するために、著者は就学前プロジェクトのデータを用いて議論を展開している。

幼少期の家庭環境の重要性
©iStock.com/DZM

著者の研究によると、子供の認知的到達度(大学へ進学するかどうかの予測因子)も、社会性・情動のスキルも、早期に格差が生まれ、長年にわたって継続する。つまり、こうしたスキルの向上は、幼少期の家庭環境に大きく左右されるのだ。

アメリカでは、子供が貧困家庭に生まれる確率が以前よりも高くなっている。ひとり親家庭で育つ子供の割合が劇的に増加しているためだ。恵まれない環境で生まれ育つ子供は、中流階級以上の子供が受けるような豊かな幼児教育を受けられない。

高学歴女性を母親に持つ子供と、低学歴女性を母親に持つ子供との間に、環境格差が生じている。ある調査によると、大卒の母親は、低学歴な母親と比較すると、結婚も出産も比較的遅く、安定した結婚生活を営んでいるケースが多い。就労率ははるかに高く、収入も安定していて、子供の数も少ない。また、大卒の母親は育児にも多くの時間を割き、読み聞かせなどの情操教育にも熱心な傾向にある。

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幼児教育の経済学
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リベラルアーツ
著者
ジェームズ・J・ヘックマン 古草秀子(訳)
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東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,728円
出版日
2015年07月02日
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