著者は、働いている女性に「家族と自分のためにも、仕事と子育ての両立の道を選ぶ」ことをすすめている。その理由は次の三つである。
一つは、再就職への道のりが険しいことである。仕事が決まっていないと子どもを保育園に預けられず、仕事を得るには保育園が決まっていないといけない。ブランクが長くなると、仕事で培ったスキルの低下や自信の喪失につながってしまう。
二つ目は、教育費が足りなくなることである。将来の子どもの教育費を考えると、子どもが幼い頃に保育料がかかっても、夫婦で仕事を継続するほうが得策だといえる。
そして三つ目は、女性の退職が企業にとっても損失になるということだ。企業は入社から10年以内の社員が辞めると、採用や研修の費用を回収できない。育成費をかけた人材には、復帰して成果を上げてもらったほうが得なのである。
出産後、時間的制約のある自分にキャリアアップは無理と考える女性は少なくない。しかし、出産前の長時間労働に戻そうと思ってはいけない。残業がしにくくなる分、時間あたりの生産性を上げればいい。
著者は2度の出産を経験しているが、出産は仕事にプラスになっていると断言している。産休や育休は、スキルを身につけ、自分をブラッシュアップする期間ととらえることもできる。また、子育てによって、コミュニケーション能力や、同時多発的に起こるトラブルに対処する能力、マネジメント力も身につけられる。
長期間の休業は産休・育休に限ったことではなくなってきている。団塊の世代が70代に突入すると、介護が必要な家族を持つ人の割合が一気に増える「社員総介護時代」が迫っている。そこで、子育て中の社員の働き方は、時代を先取りしたモデルになるだろう。
時間的制約を抱えて働く人が正しく評価されるには、周囲の理解と共感が欠かせない。上司との定期面談などの際に、妊娠・出産後も働き続けたいという意志や、育児の経験を仕事に活かしたいという思いを、ポジティブに伝えておくとよい。また、周囲の負担感を減らすには、職場に貢献する意志を伝える心がけが重要になる。
妊娠がわかったら、なるべく早く直属の上司に報告し、安定期(妊娠5カ月)になったら同僚にも報告することを著者はおすすめする。産休に入る日を決めたら、その日から逆算して引き継ぎのスケジュールをつくり、上司や同僚、後輩にも早めに渡しておくことが必要だ。
産休直前まで自分で仕事を抱え込み、「替えのきかない存在」になろうとするのは、かえって周囲に迷惑をかける恐れがある。おすすめは、一つのクライアントを後任担当者とともに受け持つ「2人担当制」である。
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