錦織圭 マイケル・チャンに学んだ勝者の思考

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錦織圭 マイケル・チャンに学んだ勝者の思考
出版社
出版日
2014年12月28日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

2014年9月、錦織は日本人男子として初めてグランドスラムの決勝に進み、日本テニスの歴史を塗り替えた。残念ながら優勝はならなかったが、その後の大会でも安定した成績を残しており、日本人初のグランドスラム制覇も夢ではなくなった。今や国内に彼の名前を知らない人はおそらくいないだろう。野球のイチローやサッカーの本田圭佑と並び、間違いなく日本のトップアスリートのひとりである。

錦織は世界のトップ選手たちと比べても決して身体的に恵まれているわけではなく、むしろもっとも小柄な部類に入る。そんな身体的ハンディを乗り越えてどうやって世界のトップ選手たちと肩を並べられるようになったのか。本書はその秘密に迫っている。

錦織の成長に大きな役割を果たしたのが、コーチであるマイケル・チャンである。彼もまた小柄ながら世界のトップ選手として活躍した実績がある。テニスはメンタルのスポーツだとよく言われるが、錦織やマイケル・チャンがどのように己をコントロールし、そしてどのように訓練をおこなったのか、その軌跡には、仕事や日常生活にも役立つエッセンスがつまっている。

また、本書では錦織やマイケル・チャンが実際にインタビューや報道に際して発言した内容が数多く掲載されており、彼らの生の声に触れることができる。彼らが何を感じ、何を考え、何を実行したのか。それらに思いを巡らせながら本書を読み進めてみてはどうだろうか。

ライター画像
山下あすみ

著者

児玉 光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学客員教授。前鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒業。大学時代テニスプレーヤーとして活躍し、4年生の時、全日本学生選手権男子シングルスでベスト8に入る。1970~1974年まで全日本選手権にも出場。また、1970年大阪毎日選手権で当時の全日本ランク1位の小林功選手(住友軽金属)を破る大番狂わせを演じる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院に学び工学修士号を取得。米国オリンピック委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員としてオリンピック選手のデータ分析に従事。プロテニスコーチ、テニススクール経営者として多くのトップジュニアを指導する傍ら、過去20年以上にわたり臨床スポーツ心理学者としてプロスポーツ選手のメンタルカウンセラーを務める。また、日本でも数少ないプロスポーツ選手・スポーツ指導者のコメント心理分析のエキスパートとして知られている。2013年3月鹿屋体育大学を定年退職。
主な著書は、ベストセラーになった『イチローの思考』シリーズ(東邦出版)をはじめ、『実は180度違う一流テニス選手の思考』(東邦出版)、『上達の技術』(サイエンスアイ新書)、『マンガでわかるメンタルトレーニング』(サイエンスアイ新書)、『児玉光雄の読むだけでテニスが上手くなる本』(ベースボールマガジン社)等多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    錦織圭のコーチであるマイケル・チャンは、徹底的な練習と厳しい指導で錦織のテニスのレベルを引き上げた。チャンの指導の最大の功績は、錦織の意識の変革である。
  • 要点
    2
    マイケル・チャンはメンタルの強さを何よりも大切にしており、彼の勝負へ向かう心構えやチャンスを掴むための姿勢が錦織を変えた。
  • 要点
    3
    錦織には類稀なる才能だけでなく、人生のすべての時間を注ぐ覚悟や信念があったからこそ一流になれたのである。仕事に懸ける信念の強さが運命を左右するのだ。

要約

【必読ポイント!】 意識を変えれば人は成長できる

飛躍の理由

マイケル・チャンは2014年に錦織圭のコーチに就任するやいなや、徹底的な練習と厳しい指導で錦織のテニスをレベルアップさせた。チャンの指導の最大の功績は、錦織の意識の変革だろう。考え方を変えれば、人は潜在能力を発揮できるようになり、短期間に大きく飛躍できる。それは一流のアスリートだけに限ったことではなく、私たちも実践できることなのだ。

メンタルを強くする
©iStock/Gajus

チャンのトレーニングは非常に厳しく、練習場では徹底的に自分を追い込まねばならない。しかしこれは、メンタル面を強化するために非常に効果的なのだ。神経にギリギリまで負荷をかけ、その辛さを乗り越えると一段と逞しい精神力を手に入れられる。

接戦において勝敗を決めるのは技術や体力ではなく、結局はメンタルの差だ。重要な場面で粘り強く戦い、チャンスをものにできるかどうかはメンタルにかかってくる。そのために、覚醒レベルをコントロールする方法を身につけておくことは有効だ。もしイライラしてしまったら深呼吸をし、逆に、落ち込んでいる時は足の太ももやほっぺたを叩く。この方法を知っているだけで、自分を最適な覚醒レベルまでもっていくことができ、最高のパフォーマンスを発揮できる。

潜在能力を発揮する方法

名指導者は選手を洗脳するスキルを持っているといえる。「ピグマリオン効果」という心理学の法則がある。強く願えばその願いが実現するという効果である。チャンは錦織に「お前は世界のトップになれる!」と繰り返しメッセージを送り続けた。そのことは錦織の大躍進につながっている。「自分はできない」という思い込みこそが、潜在能力を発揮する妨げになっているのだ。もしコーチがいなくても、自分で「私はもっと凄いことができる!」と繰り返し唱え続けよう。これが潜在能力を発揮させる方法だ。

また、成長するためには、自分のなかで当たり前のこと、常識になっていることを一度疑ってみる必要がある。錦織は、絶対の自信を持ち、周囲からの評価も高かった技術面を、チャンに指摘されてすべて見直すことになった。実際やってみて、直すべきところがないと思っていた技術面が大幅に改善されたことに驚いたという。

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要約公開日 2015.10.24
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