問題解決に効く「行為のデザイン」思考法

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出版社
CCCメディアハウス

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出版日
2015年09月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

デザインというと、ビジュアルのセンスばかりが意識されるかもしれない。しかし、本来のデザインでは、エンジニアが携わるようなプロトコル(手順)領域をはじめ、色や形が作用する心理領域、経営や社会的つながりを考慮するソーシャル領域など、幅広い知識を総動員することが求められるのだ。

「行為のデザイン」とは、人の行動に着目し、改善点を見つけて、プロダクトのより良い形を見つけていく新しいデザインマネジメントである。究極の理想は、取扱説明書がなくてもユーザーが正しい使い方を直感的に理解し、スムーズに使用できる状態だ。

著者は、物理学を学び、デザイナーになったという異色のキャリアの持ち主である。これまでパナソニックやコクヨファニチャーなど多くの企業において、商品開発メソッドとしての「行為のデザイン」を指導してきた著者によると、デザインというスキルは問題解決を果たし、イノベーションを起こすツールだという。本書の魅力は、ユーザーに不便を感じさせる「バグ」と、その解決法の多彩な具体例が紹介されている点や、デザイナーや企画、営業、生産といった各ステークホルダーが意見を出し合い、すり合わせていくプロセスを説明している点である。

人間本来の自然な「行動」の価値が見直される今、デザインの本質と開発手法を学ぶにはうってつけの入門書である。ユーザー行動観察、商品開発、ビジネス開発、社会課題の解決をめざす人にぜひ読んでみていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

村田 智明(むらた・ちあき)
1959年、鳥取県境港市生まれ。1982年に大阪市立大学工学部応用物理学科卒業後、三洋電機株式会社デザインセンター入社。1986年にハーズ実験デザイン研究所を設立、プロダクトを中心に広範囲なデザイン活動を行う。オムロンの「スポットアーム」(2004年)やマイクロソフト「Xbox360」(2005年)などを手がけ、記録的な販売数量を達成する。また、自ら立ち上げたブランド共有型コンソーシアムブランド「METAPHYS(メタフィス)」のプロダクトは、グッドデザイン賞特別賞をはじめ、デザインフォーアジアアワードグランプリ、REDDOT BEST OF BEST、ジャーマンデザインアワードWINNER賞など、国内外で50点以上を受賞。
実践してきたユーザー心理行動分析法による商品開発メソッド「行為のデザイン」を指導するワークショップは、パナソニック、コクヨファニチャー、アップリカ、ローランドや日本能率協会など多くの企業や行政の地域振興施策にも導入されている。
現在は神戸芸術工科大学客員教授、九州大学非常勤講師のほか、2011年から京都造形芸術大学大学院にて、デザインで社会問題を解決するSDI(ソーシャルデザイン・インスティチュート)を開講し、所長をつとめている。著書に『ソーシャルデザインの教科書』(生産性出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「行為のデザイン」とは、ユーザーの行動や心理に着目し、ユーザーがより滑らかに目的の行為を進められるプロダクトのデザインを考えることである。
  • 要点
    2
    ユーザーの行動を時間軸に沿って思い描く「想像体験」によって、不便を引き起こすバグや、「ここが便利、使ったら楽しい」という「エフェクト」を発見することができる。
  • 要点
    3
    デザインは、プロダクトの設計思想を絞る「プランニング」、その思想をユーザーインターフェイスとビジュアルに落とし込む「可視化」、プロダクトを世間に認知させる「告知」のプロセスから成る。

要約

【必読ポイント!】 開発力を加速させる行為のデザイン

究極の理想は、立ち止まらないデザイン

本書の目標は、徹底的なユーザー目線で発想する「行為のデザイン」について解説し、デザイナー以外の立場でも、デザイン思考を活かすマネジメントができるようにすることである。

「行為のデザイン」とは、ユーザーの行動や心理に着目し、人や情報、環境を視野に入れて、ユーザーがより滑らかに目的の行為を進められるプロダクトやサービスのデザインを考えることである。利用行動が自然であればあるほど、説明書がなくても正しい使い方を導くことができるうえに、プロダクトが場になじみ、息の長いものになる。もしプロダクトの利用中にユーザーの動きが止まってしまうのならば、不都合や不便を感じさせる「バグ」が発生しているといえる。プロダクトの開発段階でバグを発見し、解消することが重要だ。

「行為のデザイン」の思考プロセス
©iStock.com/Passakorn_14

デザインの段階では、ユーザーの行動の「時間軸」を考えることが不可欠となる。実際の利用シーンにあわせて、ユーザーが目的を達成するための行為の流れを考え抜き、プロダクトの形状を連想していくのだ。例えばユーザーが押し間違いを起こしやすいスイッチがあれば、行為のシームレス感を生み出すために、形状やアイコンを変えてスイッチを認識しやすくするという方法があるかもしれない。

こうして「行為のデザイン」を習得すれば、プロダクトと自分と環境とのインタラクション(作用と影響)を俯瞰し、状況の本質を見抜くことができる。

「行為のデザイン」は、人とプロダクトの最初に接点にあたるインターフェイスを吟味することから始まる。インターフェイスを模式化するには、人と目的、そしてその目的を達成するための手段を書き込めるカードを使うと便利だ。

例えばカフェの容器開発をすると仮定しよう。「人」を「昼休みにコーヒーを買いにきた女性」、「目的」を「熱いコーヒーを飲む」と設定する。「手段(道具)」としてどんなカップを考えればよいか。まずは、その女性がどんな時間軸で熱いコーヒーを飲むのかを想像する。もしコーヒーが熱くて持てなければバグになってしまう。そのため、店内で飲むなら熱が伝わらない取っ手のついたマグカップのほうが便利で、持ち帰るなら軽い素材のカップが望ましいなどと想像する。また、コーヒーがこぼれないように、フタをするなどの解決策も必要になる。すると「熱さが伝わらない持ち帰り容器」「持ち運んでもこぼれない容器のフタ」などがプロダクトデザインのヒントになるだろう。

ここで「人」の部分を女性から年配の男性やインド人などに変えると、求められる「手段」も変わってくる。

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要約公開日 2015.12.25
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