もともと下戸でシャイで宴会嫌いだった、著者である児玉氏は、1997年に三菱商事に入社してからというもの、「東京の夜の怪物くん」の異名をとる先輩の教えにより、商社のなかでもトップクラスの宴会の仕切り屋に変身を遂げた。
そんな児玉氏は、2004年に世界最高峰の経営大学院といわれるハーバード・ビジネス・スクールに入学。実はハーバードは「パーティ・スクール」といわれるほどイベントやパーティが多い学校で、「宴会を仕切る力」に自信を持っていた児玉氏でさえ、さらにその宴会術が飛躍的に向上したことに驚いたという。
本書はそもそも暗黙知であった宴会術を、ハーバード・ビジネス・スクールで学んだ経営学によって整理し、体系立てて説明した一冊だ。
国際経験豊富な児玉氏が「世界ナンバーワン」と言って憚らない日本の宴会術を、本書を読んで学んでいただきたい。
児玉氏が「一番大切なこと」として最初に述べていること、それは「人は誰しも、自分のことをわかってほしい生き物」だということだ。
単純な行動原理として「人は自分の話を『聞いてくれる人』を待っている」。すなわち、「シャイ」「口べた」「奥手」な人であっても、「超おしゃべり人間」に変化することが出来るということである。
「自分が主役になっている超快感」の波が押し寄せたとき、人は無防備になり、すべてをさらけ出しはじめる。この状態のことを児玉氏は「心のパンツを脱いだ状態」と呼んでいるが、この「心のパンツを脱いだ状態」に参加者を誘うことこそ、宴会においてもっとも大切なことなのだ。本書に書かれている宴会術とは、すべて「限られた時間のなかで行われる宴会という特殊な空間を最大限活用し、参加者全員をこの『心のパンツを脱いだ状態』にもっていくための方法」である。
本書の大部分はその方法を学ぶための「実践編」が占めている。それではさっそくその内容を見ていこう。
仕事も宴会も「仕掛け8割」、つまり入念な準備が事の成否を決めることは言うまでもない。質の高い仕事をするには、自分が働きやすい、戦いやすい環境をつくることが重要だ。
宴会でも自分の環境は自分でつくることが必要である。オンラインの日程調整ツールで無機質にチャッチャと日程を決めてしまう前に、「自分が戦いやすい環境」をつくり出すために汗をかくべきだ。
最初は宴会の主旨を考えて「主賓」の日程を調整し、「主賓」が来れる日程を複数押さえることが第一だ。そして「主賓」の日程を押さえたらすぐに「その他全員」にオンライン日程調整ツールやメールで日程の多数決を促すのかというと、それではまだヌルい。「その他全員」に予定を確認する前に、まずは手帳を片手に「宴会キーパーソン」の日程を押さえにいくのである。
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