戦略「脳」を鍛える

BCG流 戦略発想の技術
未読
戦略「脳」を鍛える
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BCG流 戦略発想の技術
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戦略「脳」を鍛える
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2003年11月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のもつノウハウの中核部分を日本で初公開したということで、特にコンサルティング業界で必読の書とされている一冊だ。著者はBCG日本の代表であり、事業戦略のプロ中のプロとして知られる御立尚資氏である。著者の語り口は簡潔であり、それでいて示唆に富んでいる。

マイケル・ポーターに代表されるアカデミックな戦略論を学ぶだけでは、定石・定跡の域を出ることができず、プラスアルファの価値を提供することはできない――数々の実戦経験を経てきた著者はそう断言する。周囲と差をつけるためには、これまでになかった価値を提供することが必要である、と。

新しい戦い方を生み出す能力を、BCGでは「インサイト(Insight)」と呼んでいる。本書の素晴らしい点は、このインサイトを身につけるための手法が具体的に解説されているだけでなく、いくつもの事例や問題が解答例つきで提示されていることだ。そのため、戦略思考を身につけるためのワークブックとして、何度も読み返す価値があるといえる。

もちろん、戦略「脳」を鍛えるためには、最終的にいくつもの実戦経験を積んでいく必要があるだろう。しかし、考えるためのフレームワークを持っているかどうかで、その後得られるものに大きな違いが生じるはずだ。本書があなたに、戦略「脳」を鍛えるための土台をつくってくれるに違いない。

著者

御立 尚資(みたち たかし)
ボストン・コンサルティング・グループ 日本代表。京都大学文学部卒業。ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空株式会社を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&A等の戦略策定及び実行支援、経営人材育成、組織能力向上等のプロジェクトを数多く手がけている。BCG World Executive Committee(経営会議)のメンバー。

本書の要点

  • 要点
    1
    既存の戦略を学ぶだけでは、ユニークで勝てる戦略を構築することはできない。大切なのは、これまでの定石をしたうえで、新たな戦い方をつくりあげることである。この能力を「インサイト」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    インサイトは「スピード」と「レンズ」の2つの要素から成り立っている。思考のスピードが上がれば、次々と仮説を打ち立てて実行できるようになるし、人と異なったレンズで考えることができれば、定石を応用して新しい戦略を生み出せるようになる。

要約

【必読ポイント!】 独自の戦略を生み出す方法

勝つためには定石と「インサイト」が必要
woottigon/iStock/Thinkstock

戦略とは、「将来こうありたい」という理想の姿と現状を比較し、その差を埋めていく道筋のことである。企業ごとの理想は異なるのだから、理想に近づくための戦略も、本来はそれぞれ違ってしかるべきである。したがって、既存の戦略論を真似しているだけでは意味がない。

また、近年の企業間競争は以前よりもずっと複雑になっており、今まで戦ってきた相手とは全く異なるタイプの相手と戦わなければならないことも少なくない。そのなかで勝ち続けるためには、自分が優位となる新しいルールをつくるような、独自の戦略が求められている。

既存の戦略論を学ぶことは非常に大事なことだが、それだけではユニークで勝てる戦略を構築することはできない。大切なのは、戦略論という定石を知ったうえで、新たな戦い方をつくりあげる能力である。その能力を身につけたものだけが、自らを差別化し、競合優位に立つことができる。

この能力のことを、BCGのコンサルタントは「インサイト」と呼ぶ。インサイトとは、「勝てる戦略の構築に必要な頭の使い方、ならびにその結果として得られるユニークな視座」のことである。ユニークな戦略を生み出すためには、戦略論の定石を踏まえたうえで、インサイトを研ぎ澄ます必要がある。

インサイト=スピード+レンズ

インサイトは、「スピード」と「レンズ」という2つの要素から成り立っている。思考のスピードを最大限に上げ、定石を加工、応用して、次々に仮説を打ち立てる。これを競争相手を数倍、数十倍上回るスピードで実行することで、相手が考えついていない戦略で戦いに臨むことができるようになる。

レンズとは、ユニークな仮説をつくるための「モノの見方」のことだ。普段の自分とは違う思考を意識的に働かせることで、はじめて定石を加工・応用していくことが可能になっていく。

インサイトを身につける、すなわち戦略脳を鍛えるためには、とにかく実践が重要である。ただし、体得のしかたには個人差がある。自分が苦手とする部分を克服するためのコツを覚え、できるだけ効率よくインサイトを身につける必要がある。

思考のスピードを上げる方法

パターン認識が次の手を生み出す
Ingram Publishing/Thinkstock

思考のスピードを上げるためには、特に「パターン認識」、「グラフ発想」、「シャドウボクシング」の3つの能力を鍛えることを意識すべきだ。

パターン認識は、戦略コンサルタントが一人前になっていくうえで最初に必要になるものである。パターン認識ができるようになると、さまざまな角度からパターンをとらえたり、いくつかのパターンを組み合わせたりすることで、状況を端的に把握することが可能になり、より速く適した戦略の仮説が組み立てられるようになる。この力を高めるためには、ことあるごとに「これはこういうことだ」とパターン化して考え、それを記憶するという癖を身につけることが有効だ。いくつものパターンを頭の中に蓄積していれば、必要な時に蓄積されたパターンを使って、新しい戦略を構想することもできるようになる。さらに、1から論理的に思考を積み重ねる手間がなくなり、思考のスピードも上がる。

さまざまな戦略をパターン化するコツは、コンセプトワードを記憶の引き出しとして用いることだ。

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要約公開日 2016.08.03
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