キリンビール高知支店の奇跡

勝利の法則は現場で拾え!
未読
キリンビール高知支店の奇跡
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勝利の法則は現場で拾え!
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キリンビール高知支店の奇跡
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出版社
定価
858円(税込)
出版日
2016年04月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

世の中で必要とされる商品だとしても、市場が反応しない、競合他社にシェアを奪われるなどの状況に苦戦している企業は多いはずである。本書の著者、田村潤もキリンビール株式会社にて、そのような状況に悪戦苦闘した人物である。

1954年、キリンビールは国内シェア1位を獲得するが、1987年にアサヒビールが「スーパードライ」を発売したことにより、徐々にシェアを奪われる形となった。そのような状況下で、著者は全国でも苦戦していた高知支店へ異動となる。著者は試行錯誤しながらも、赴任から2年半後に高知支店の業績を回復させた。現実と向き合う中で、著者はシェア奪還の本質が「自社の風土との闘い」にあることに気付く。そして、そこから得た教訓は、様々な業界の営業マンが身につけるべき物事の捉え方であった。

業績が苦しいときほど、営業マンにはこなすべき指示が増えていく。そして上意下達の流れの中で、自分の頭で物事を考えることができなくなってしまう。そのような状況下に陥ってしまっているとき、本書で著者の伝える「自分で考えることの重要性」が、現状を打開するヒントになるのである。

ライター画像
流石香織

著者

田村 潤
1950年、東京都生まれ。元キリンビール株式会社代表取締役副社長。成城大学経済学部卒。95年に支店長として高知に赴任した後、四国4県の地区本部長、東海地区本部長を経て、2007年に代表取締役副社長兼営業本部長に就任。全国の営業の指揮を執り、09年、キリンビールのシェアの首位奪回を実現した。11年より100年プランニング代表。

本書の要点

  • 要点
    1
    営業マンが現場である料飲店を数多く訪問することで、料飲店との信頼関係が築かれ、地域の細かいニーズや声が拾えるようになり、様々な改善点が見えてくるようになった。
  • 要点
    2
    自発的に目標を設定し結果を検証する「結果のコミュニケーション」を用いて、営業マンが約束した目標を何としても達成するために、覚悟をもち、愚直に営業活動を行うようにした。
  • 要点
    3
    リーダーが「理念」と「ビジョン」をもち、それをわかりやすく言葉で語り、さらに立てた戦略にコミットする姿勢を見せることが重要である。

要約

1995年、高知の夜は漆黒だった

キリンビールの落日
Ljupco/iStock/Thinkstock

著者は1995年9月にキリンビール高知支店長の辞令を受けた。それまでは東京本社で本部担当営業企画の部長代理として、有名量販店チェーンとの商談や販売施策を担当していた。当時は有名量販店が海外からビールを輸入し格安で販売する、ビールの価格破壊が始まっていた。著者はブランド維持、顧客視点から考えても、無謀な安売り合戦に反対していた。しかしそれは所属する部署や上司の意見とは異なるものだった。結果、全国でも苦戦地域のひとつで、負け続けている高知支店に異動となった。社内では「左遷だ」といわれた。

1907年に設立されたキリンビールは、1954年に国内シェア1位を獲得する。しかし、1987年にアサヒビールが「スーパードライ」を発売したことで、キリンはシェアを奪われはじめ、商品開発から営業に至るまで見直しを迫られていた。キリンは1995年にシェアを50%以下に下げるが、売れる時代が長く続いたため、営業が売るための苦労を知らないことが課題となっていた。

負けの精神風土が染み付いている高知支店

高知に着任後、著者は支店内に「負けている組織の精神風土」が定着しているのを実感する。営業マンは、本社指示の施策を酒販店に伝えるだけで、あとは日報をつけるという作業を繰り返すだけ。前任の支店長は、本社が設定した目標をいかに達成するかだけを考えていた。地域の特性を活かし、有効な手段を打つことは考えられていない。営業マンは危機感を持たず、リーダーもそれを黙認しながら、成績が悪いのは本社が設定した高い目標や、能力の低いメンバーのせいにしていた。

しかし、著者もどのような指示を出せばいいのか悩んでいた。未経験の地方での営業で、どうすれば売り上げが上がるのか皆目わからない状態であった。しかしやってはいけないこともわかっていた。総花的な営業である。多くの施策を適当にこなしていては、勝てるはずはない。「戦力の逐次投入」は必ず失敗するのである。

【必読ポイント!】1996年、負け続けの年

料飲店に絞り、単純明快に
BallBall14/iStock/Thinkstock

著者は営業施策を絞り込み、独自の施策として、営業力の効きやすい「料飲店マーケット」に狙いを定めた。高知県民は外で飲む機会が多く、料飲店でビールを飲んで「キリンが美味しい」と感じれば、家庭でも飲むはずだと想定したからだ。そこで、料飲店との接点を増やすために、個々の営業マンの料飲店への訪問目標を高く設定し、チーム全体で力を合わせて乗り越えることを目指した。同時に「バカでもわかる単純明快」というスローガンを掲げた。誰でも理解できる、単純なことを愚直に地道に徹底して行う。著者が高知支店でメンバー全員に伝えた最初の指示であった。

冷たい逆風

しかし、1996年4月に逆風が吹いた。長年にわたるトップブランドの「ラガービール」の味が変更となり、売り上げが急落したのだ。急成長する「スーパードライ」に危機感をもった本社が「ラガー」の「古い」「苦い」といったイメージを払拭するために若者を意識し、飲みやすさのある味へと方向転換したのだ。飲みごたえのあるラガーを好んでいた高知県民の中には、新しいラガーの味に反発を覚える者が多く、「スーパードライ」にますますシェアを奪われてしまう結果となった。

「結果のコミュニケーション」で営業メンバーを本気にさせる

独自に営業施策を絞り込んだ高知支店は、目標の数字にまったく到達していなかった。しかしそれ以上に問題だったのは、料飲店への訪問目標が達成されなかったことである。

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