本書の要点

  • 商品の価値定義に特化したコピーを「タグライン」という。たくさん消費されて変化していくキャッチフレーズとは違い、「タグライン」はその商品がある限りなくならない。それゆえに非常に重要だ。

  • ブランドの強さを測る指標は、(1)気持ちいいと感じた体験の数、(2)その人が持つ課題との関係の深さ、(3)ブランドロゴを目にする頻度である。

  • 広告は「生活環境」の一部であり、否応なしに生活者の目の前に飛び込んでくる。だからこそクリエイターは、ターゲットの生活環境も作っているという自覚を持ち、希望に満ちた物語を提供しなければならない。

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広告コピーの基礎知識

知るべきはUSPとターゲット

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たとえば水の入ったグラスが置かれ、この水のコピーを書いてくれというお題が出されたとしよう。この時、コピーライターを志す者であれば、すぐにコピーを書きはじめてはならない。

まずコピーライターがするべきことは、その水がどういった性質のものなのか、どこの企業が販売しているのかなどを知ることだ。詳細を知らずにコピーを書き始めても、所詮「水」というカテゴリーについて述べているにすぎない。それでは単なる大喜利であり、商品としての広告コピーとして成立しているとはいえない。その商品の情報や、競合商品との違い、すなわちUSP(競合優位性)を理解しておくことが、コピーを考えるうえでの必須条件となる。

また、どんなターゲットに売るべきなのかを考えることも、コピーを考えるうえでは基本中の基本だ。どんな商品でも、探せばそれを求めている大きなターゲット層は存在するものである。それを捉えなければ、広告のコピーを書くことはできない。

現代日本という環境

日本でプロの広告クリエイターとして働くのであれば、知っておくべき用語が二つある。1つ目は「コモディティ化」だ。これは、たとえばiPhoneが開発された後に、他の企業がスマートフォンを次々と販売しはじめたように、どんな新しい技術でも似たような製品が出てきてしまう現象を指している。

現在、ほとんどの商品が、機能面で差別化できなくなっているのもそのためだ。ゆえに、商品の優位性ではなく、企業理念や社会貢献への共感を伝える方向にシフトすべきだ、という潮流が生まれつつある。

2つ目は「ハイコンテクスト」であり、日本ではコモディティ化よりも重要な概念である。コミュニケーションにおいて、前提となる言語や体験、価値観などが非常に近い日本は、まさにハイコンテクスト文化の典型だ。だからこそ、微妙な表現の違いで、競合と張り合える価値が作れる。

逆に、ヨーロッパのような移民が多い国の場合、「毎日を楽しもう」、「愛って素晴らしい」などの普遍的なメッセージをベースにし、「とにかくこれが最高」という、ある程度ざっくりとしたコピーでないと、ごく一部の人にしかメッセージが伝わらず、広告として機能しにくい。

キャッチフレーズよりもタグライン

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広告コピーとは、ターゲットがその価値に気づくよう、商品を「定義付け」するものだ。この「定義付け」に特化したコピーのことを「タグライン」と呼ぶ。商品ロゴの上に置かれていることが多いこのタグラインは、コピーのなかでもとりわけ重要なコピーだといえる。

一方、キャッチフレーズは、広告の最も目立つ場所に置かれるコピーを指す。キャッチコピーの役割は、ターゲットの関心をつかむことだ。そのため、内容はたびたび変更されるし、消費されるスピードも速い。

キャッチフレーズはアマチュアの学生でも書けるが、タグラインを書くにはプロの知見が必要だ。そのため、タグライン1本書くことで100万円程度もらうことはあっても、キャッチフレーズ1本ではなかなかそこまで請求できないという。

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コピーを「考える」

マーケティングの重要性

コピーライターにとって、マーケティングは重要である。マーケティングの概念は幅広いが、わざわざ営業や販促活動をしなくても、商品が勝手に売れていく状況を作りあげることが理想だ。

コピーライターは、こうしたマーケティング思考を持ち合わせ、それをツールとして使いこなす必要がある。ずっと机に向かっていても、コピーライティングはできない。マーケティング作業に九割の力を注ぎ、残りの一割で書くのが、「コピーを書く」ことの本質だ。

深層心理を引きずり出す

人は常になにかを意識しながら行動している。しかし顕在化している意識の下では、カタチにならない不満や欲求を抱えているものだ。それを「インサイト」と呼び、とりわけ、ターゲットが内に秘めている本音や欲求のことを「ターゲットインサイト」と呼ぶ。

インサイトは、それに関連する広告を見たときなどに、ひょっこり意識上にあらわれる。たとえば、「えっ、私、年収少なすぎ!?」といったバナー広告を見て、思わずクリックしてしまうのも、そういった不満を漠然と抱えていたからである。

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要約公開日 2016.11.14
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