本書の要点

  • 土台となるスキルを身につけて実行に移すことが、高い生産性につながる。

  • 情報収集と整理だけで満足せずに、一歩踏み込んだ、本質を見抜く分析を大事にしたい。

  • PDCAは生産性を向上させる最強のフレームワークであり、C(評価)とA(改善)が肝となる。

  • 6W2Hの発想法は、ビジネスの可能性を広げるのに効果的だ。

  • 予測不可能な変化に富む現代においては、過去に身につけたスキルや経験を手放す勇気も必要となる。

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土台となるスキルとは?

まずは「目的」ありき

あらゆる事柄には基礎力が欠かせない。どんなに表面的なスキルを学んでも、土台となる基礎力がなければ、効果はあまり期待できない。よくある間違いは、目的なく仕事をしてしまうということだ。上司の命ずるままに作業を始めた経験はないだろうか。本来、情報収集や分析、会議や交渉といったタスクは、あくまで何かを達成するための手段である。まずは作業の目的を確認することが大切だ。そうすることで、求める情報の量や質、それにかける時間やエネルギーも変わってくるだろう。またそれは、自らが指示を出す側になった時にも活用できる。相手にきちんと目的を伝えることで、質の高いアウトプットを生み出しやすくなる。また、最初に仕事の段取りを描き、逆算思考で考える習慣も必要となる。たとえば、理工系大学向けに機器を販売する営業担当者になったと仮定しよう。いきなり飛び込み営業をしてもなかなか成果は上がらない。この場合は、大学の研究テーマを調べる、見込みの高い研究室を選んで優先順位をつける、アポイントメントをとる、訪問して購買の当たりをつける、可能性のありそうな研究室に集中投下する。こうした戦略をもとに効率よく動くべきだろう。さらに、優先順位をつける際には、重要度と緊急度が一覧できるマトリクスを作成することも有効となる。

情報収集の「落とし穴」に注意

tadamichi/iStock/Thinkstock

情報を正しく収集し、分析することは、効果的なアクションを起こし、人をうまく動かすための大前提となる。その第一段階となるのが情報収集だ。最近はサーチエンジンの進化により、デスクにいながらにして様々な情報を手に入れられるようになった。しかし、気をつけるべきポイントがある。それは、他人が加工・編集した情報を鵜呑みにしてはいけないということだ。たとえば、あるサービス業の会社で、自社の過去の顧客満足度(5点満点)のデータがあるとする。顧客離れに悩んでいるにもかかわらず、直近の平均評価は4.5と高い数字を打ち出している。そこで元データを探ると、このアンケートの回収率は20%で、不満足な顧客は回答すらしなかったということが判明した。この例からわかることは、数字やグラフが必ずしも客観的に正しいとは限らない、ということだ。数字やグラフには必ず作成者の意図が入る。誰がどのような目的で、どのような前提のもとに作成したのかを意識しなければならない。何らかの違和感を抱いた時には、一次情報(元データ)にあたるようにしたい。

価値を高める分析

情報を集めた後は、分析が必要不可欠だ。多くのビジネスパーソンは、情報を収集し整理した段階で満足してしまう。たとえば、立ち食いそばチェーンでヒアリングをした結果、顧客のKBF(重要購買決定要因)、そして自社とライバル社の現況が割り出せたとする。しかし、これで終われば「だから何?」なのだ。重要なのは、これらの情報に「So what?」と問い、意味を引き出して、ビジネスで重要な示唆を導き出すことだ。ワンランク上の意味を引き出すこと、つまり「結晶化」こそが、ビジネスを成功に導く原動力となる。また、みんなが気づいていない実態を明らかにすることが、分析の醍醐味でもある。昨今、縮小傾向のウィスキー市場で健闘しているサントリーハイボールを例にあげよう。これまでウィスキーの濃度は12%程度が一番美味しいというのが「社内常識」だった。しかし自社の調査・分析の結果、8%程度が美味しいという結論に至った。予見のない視点で現場を見て、顧客の声を聴くこと。そして新しい角度から物事を眺め、本質を捉えることを心がけたい。問題の本質をえぐることこそ、分析の本懐といっていいだろう。

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実行スキル

ロジックとイマジネーション

kunertus/iStock/Thinkstock

ビジネスは実行し、結果を出してこそ評価される。「最強」といわれるフレームワークにPDCA(Plan-Do-Check-Action:計画―実行―評価―改善)がある。たとえば、工場や営業の現場で、毎日必ず目標を確認し、1日の終わりに振り返りをする。そして翌日の行動に活かしていく。この地道な繰り返しこそが、生産性や収益性の向上につながる。

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要約公開日 2018.04.17
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