ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
人事こそ最強の経営戦略の表紙

人事こそ最強の経営戦略


本書の要点

  • グローバル人事を進めるにあたっては、自社がどんな方法で事業をグローバル展開させたいのかを把握し、その方向性や事業戦略に合った人事のやり方を選択しなければならない。

  • グローバル人事は、「人材の需給をグローバルで把握すること」「計画的に人材を育成すること」「組織開発・組織活性化」の三つの課題を乗り越えていく必要がある。

  • 人の価値を正しく測るには、「スキル」「経験」「モチベーション」の掛け算で評価するのが望ましい。

1 / 3

【必読ポイント!】 グローバル人事とは何か?

グローバル人事の目的

traviswolfe/iStock/Thinkstock

この数年、人事のグローバル化を進める日本企業は増え続けている。ビジネスのスピードが加速する中、グローバル競争に勝ち抜くには、グローバルに商品やサービスを普及させるスピード感がますます重要になるためだ。

グローバル人事の目的とは、事業のグローバル化に伴う「人材の変化」に、人事のやり方を対応させることである。人材の変化は具体的には、人材の多様化、人材需給のグローバル化、人材の流動化の三つを指す。今後は、現地の人材を採用する機会が増え、人事管理の対象が日本人以外にも及ぶ。彼らが長く活躍するためには、性別や国籍、言語、バックグラウンドなどが異なる人材を扱えるよう、柔軟性の高い施策や受け入れ態勢が欠かせない。

また、様々な国に拠点ができるにつれ、別の国で採用した社員を、国を越えて異動させるといったグローバルな人材配置が増える。となると、評価や処遇制度をグローバルに対応させなければならない。

さらには、人材の多様化に伴い、雇用に対する価値観も様々になる。海外の流動的な人材マーケットを考慮して採用する、退職リスクに備える、といったことも求められる。

いずれにせよ、海外企業の施策をやみくもに導入したり、他社の事例をそのまま真似たりするのはふさわしくない。まずは自社がどんな方法で事業をグローバル展開させたいのかを把握し、その方向性や事業戦略に合った人事のやり方を選択しなければならない。

グローバル人事の三段階モデル

海外で事業展開している企業には、組織形態やグローバル展開の方向性などにより、三つのグローバル人事の段階がある。一つ目は、本社人材を海外現地法人の主要ポストに派遣する、「セントラル人事」だ。日本企業が以前から行う人事のモデルで、Samsungもこのやり方をとっている。ただし、海外支社を統括できる優秀なリーダーを数多く育成しなければならない。そのため、相当体力のある大企業でなければ実現は難しいといえる。

二つ目は、現地人材による現地法人トップを育成する、「マルチナショナル人事」だ。コマツ、ネスレなどがこのモデルを採用しており、今、多くの日本企業がめざしているグローバル人事のモデルでもある。特徴は、経営のほとんどを現地に任せ、現地のマーケットに最適な製品やサービスを提供しようとする点だ。ただし、現場の力が強くなりすぎると、本社のガバナンスが効きにくくなる。課題として、ガバナンスモデルの構築と、現地リーダーのキャリアパスの設計が求められる。

そして三つ目は、国や地域を越えてグローバルな人事施策を行う、「インターナショナル人事」だ。スピーディーな世界展開に向けて、国や地域を問わず、最適な事業を最適なロケーションに配置することをめざす。GEやP&G、武田薬品工業など、一部のグローバル企業だけが実現しているモデルである。ただし、このモデルを実現するには、組織としてのまとまりや組織力を向上させる取り組みが欠かせない。

実際には、これらのモデルの中から複数のモデルを、事業展開のステージや特性に応じて、事業ごとに使い分けるケースが多い。

グローバル人事を進めるには、その組織がめざすゴールを定めなければならない。めざすゴールによって、やるべきことや整備すべき人事制度は異なるためだ。グローバル人事で大事なのは、事業戦略との整合性である。よって、自社の状況、事業自体をしっかりと分析することが欠かせない。

日本の人事が変えるべき三つのポイント

g-stockstudio/iStock/Thinkstock

日本企業がグローバル人事に挑戦する際、次の三つのポイントを変化させなければならない。まずは、「結果人事→計画人事」である。前者は、年次の横並びで、一定の年齢になったときに結果的にリーダーが育つのを待つという仕組みだ。これでは、事業戦略に合わせて、その実行に必要な若手リーダー人材を選抜、育成することが難しい。よって、めざすべき人材の配置計画に基づいて、年齢や経験年数にかかわらず、若い頃から多様な経験を意図的に積ませなければならない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2677/4345文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2018.07.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

競争と協調のレッスン
競争と協調のレッスン
アダム・ガリンスキーモーリス・シュヴァイツァー石崎比呂美(訳)
勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全
勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全
大前研一
チームの生産性を最大化するエマジェネティックス®
チームの生産性を最大化するエマジェネティックス®
小山昇
常勝キャプテンの法則
常勝キャプテンの法則
サム・ウォーカー近藤隆文(訳)
運の技術
運の技術
角田陽一郎
成毛流「接待」の教科書
成毛流「接待」の教科書
成毛眞
RPAの威力
RPAの威力
安部慶喜金弘潤一郎
組織は変われるか
組織は変われるか
加藤雅則

同じカテゴリーの要約

ベンチャー人事のすごい仕組み
ベンチャー人事のすごい仕組み
村上亮
「人事のプロ」はこう動く
「人事のプロ」はこう動く
吉田洋介
無料
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
増補改訂版 フィードバック入門
増補改訂版 フィードバック入門
中原淳
心理的安全性のつくりかた
心理的安全性のつくりかた
石井遼介
「就職氷河期世代論」のウソ
「就職氷河期世代論」のウソ
海老原嗣生
なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか
なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか
古屋星斗
他者と働く
他者と働く
宇田川元一
幸せなチームが結果を出す
幸せなチームが結果を出す
及川美紀前野マドカ
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)