AIエージェント革命
AIエージェント革命
「知能」を雇う時代へ
NEW
AIエージェント革命
出版社
出版日
2025年06月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「知能を雇う」なんてSFの話ではないか? そう思っていたら、自律的に考えて行動し、成果を出す「新しい同僚」が瞬く間に現れつつある。その正体がAIエージェントだ。

本書は、AIエージェントが可能にする新しい働き方の地殻変動を描く一冊だ。2022年末のChatGPT登場がもたらした「自然言語処理の革命」を起点に、Soraによる映像生成や、Operatorによるウェブ上での自動操作など、AIは着実に進化している。本書の主役であるAIエージェントは、単なるタスク実行プログラムではなく、目標に応じて計画や情報収集、外部ツール連携を行うことができる。ただし現状では、人間の監督や調整を必要とする「限定的な自律性を持つ支援ツール」であり、完全な自律判断はこれからといえる。

本書の構成としては、第1・2章で、経営層・企画部門向けにAIエージェントのビジネスインパクトや活用事例を提示する。第3・4章では、主に技術者向けにAIエージェントの技術基盤や導入・運用プロセスを掘り下げていく。そして第5章では、AIエージェントが拓く未来を展望する。

AIエージェントの基礎から実践までの知識を、ビジネスと技術の両面からカバーし、「何ができるか」「どう備えるか」という戦略的な視座を与えてくれる一冊だ。すでに始まっている「変革」を、どう組織やチームのビジョン実現に活かしていくのか? そんな問いのもとに本書をお読みいただけたらと思う。

ライター画像
松尾美里

著者

著者:シグマクシス
執筆者一覧
溝畑 彰洋 常務執行役員
外資系IT企業を経て現職。AIをはじめとした先端技術を活用する新規事業・業務改革コンサルティングに従事。日経BPセミナー『生成AIとAIエージェントの導入&業務活用実践講座』等、実務に裏打ちされた知見を生かし、講演、セミナーへの登壇多数。

新井 克人 アドバンストテクノロジーシェルパ サービスリーダー
外資系IT企業を経て現職。AI・IoT等の先端技術を活用するコンサルティングに従事。プロトタイピングや設計開発を専門領域とし、技術解説ライターとしても活動。著書に『はじめてのFlutter』(2020年、工学社)等。

木村 迅 アドバンストテクノロジーシェルパ 先端技術応用研究所所長
外資系IT企業を経て現職。先端技術の応用研究や企業R&Dの戦略策定コンサルティングに従事。AIを活用した情報システム開発、アーキテクチャ策定の知見に深く、講演活動も行う。『DXサーベイ 2025-2027』(2024年10月、日経BP)に寄稿。

市川 隆敏 アドバンストテクノロジーシェルパ フェロー
原子核理論物理を専門とし、博士号を取得後大学・研究機関で核融合・分裂の研究に従事。現在は製造業を中心にAI、先端チップ技術調査、データ分析、数理最適化など物理の経験を活かしたコンサルティングを得意とする。『半導体チップレット未来戦略』(2024年12月、日経BP)に寄稿。

坂間 毅 アドバンストテクノロジーシェルパ フェロー
大学院博士課程で数学の哲学を研究した後、外資系IT企業を経て現職。流通・小売業界を中心に、データ分析の理論、モデル構築から実務運用、人財育成まで一貫して取り組んでいる。人工知能学会全国大会での発表や国際論文誌への投稿(PLoS One 14 (9), e0221911)なども手掛ける。

西山 和輝 アドバンストテクノロジーシェルパ マネージャー
大学院修了後、現職。データ分析、システム開発、機械学習モデルの構築などのエンジニアリングや、AI活用アイディアの創出、AIによる業務変革など、テクノロジーのビジネス適用プロジェクトの実績多数。

李 亮 アドバンストテクノロジーシェルパ コンサルタント
大学院修了後、日系産業機器メーカー、外資系IT企業でAIおよびIoT分野の専門スキルを習得し、現職。生成AIを活用した業務改革コンサルティング、チップ・組込みAI関連の先端技術調査に従事。

本書の要点

  • 要点
    1
    AIエージェント活用による経営インパクトを定量的に把握し、業務効率化で生まれたリソースをどう再配分するかを意思決定することが重要である。
  • 要点
    2
    AIエージェントによる解決が「向いている」業務と「向いていない」業務とがある。
  • 要点
    3
    今後AIエージェントは、多様なサービスやプロセスを横断し、オーケストレーターとして新サービスを生み出していく。

要約

AIエージェントがビジネスに与える影響とは?

AIエージェントとは何か?
Krot Studio/gettyimages

本書が示すAIエージェントの特徴は次の5つである。

(1)大規模言語モデルを使う

ほぼすべてのAIエージェントは大規模言語モデル(LLM)を基盤技術とし、自然言語での入出力を前提とする。画像や動画、IoTデータなどを扱う場合は大規模マルチモーダルモデル (LMM)と呼ばれるが、本書ではまとめて大規模言語モデルと表す。

(2)与えられたゴールを達成する計画を立てる

ゴールが与えられれば、AIエージェントは、問題を分解し段階的に思考する「推論能力」によって、自ら計画を導き出せる。これにより、人が手順を細かく指示する必要がなくなる。

(3)与えられたツールを使って外部とやり取りする

AIエージェントは、外部環境とのやり取りで、ブラウザーやデータベース、社内システムなどのツールを使う。これらのツールをいつ、どう活用するかも自ら判断できる。

(4)立てた計画に沿って臨機応変に実行する

想定外の状況でも計画の見直しやエラー対応が可能だ。人間が事前に全ケースを設定しなくても、臨機応変に対処できる。これを「適応的(adaptive)」と呼ぶ。

(5)自律的に行動する

AIエージェントは自律的に動くことを目指すが、人間の介入の度合いはゴールの性質などによる。重要な意思決定や行動には人間の確認・承認を組み込む設計が一般的だ。こうした設計は、ヒューマン・イン・ザ・ループと呼ばれる。

実企業における経営インパクト

生成AIはビジネスのあらゆる領域を革新する技術であり、AIエージェントはそのインパクトを最大化する用途として注目されている。生成AI市場は年平均48%で急成長し、2030年には約140.9兆円の市場規模に達すると予測される。

では、実際の企業における経営インパクトとはどのようなものだろうか。金融業界を例に、企業の財務諸表から、AIエージェントも含めた生成AI活用の経営インパクトを試算する。

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要約公開日 2025.10.03
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