オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
ジャンル
著者
オードリー・タン 早川友久(訳) 姚巧梅(訳)
出版社
プレジデント社 出版社ページへ
定価
1,980円(税込)
出版日
2020年11月29日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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オードリー・タン 早川友久(訳) 姚巧梅(訳)
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定価
1,980円(税込)
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2020年11月29日
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革新性
4.0
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レビュー

新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが爆発的に普及した。友人とはじめての「リモート飲み」を経験した人もいるだろう。人々の行動が制限されるなか、デジタルツールは大きな役割を果たしている。さまざまなものが急速にデジタルに置き換わっていく今、社会のデジタル化やAIは、私たち人間の生活をどのように変えていくのだろうか。

本書はそんな疑問に答えてくれる。著者は台湾のデジタル担当政務委員である、オードリー・タン氏。台湾は、世界のなかでもいち早く新型コロナウイルス封じ込めに成功した地域だ。市民プログラマーたちによって開発された「マスクマップ」や、健康保険証と連動してマスクを平等に分配するシステムなどが、世界的に注目された。こうした対策のデジタル技術を統括したのがタン氏である。

本書では台湾で行われた新型コロナウイルス対策が詳細に記されているが、読み進めると、それは一朝一夕で成し遂げられたわけではないことがわかる。台湾では政府と国民のあいだに信頼関係が築かれており、その上でデジタル技術が活用されたことで、今回の封じ込めを成し得たのだ。

台湾が目指すのは、「誰も置き去りにしない」社会だという。それを実現可能にするのが、デジタル技術の活用だ。タン氏はAIやデジタル技術について、「主体は人間であり、デジタル技術はツールでしかない」と繰り返し語っている。デジタル技術と社会を考えることは、私たち人間の生き方そのものを考えることなのかもしれない。

池田明季哉

著者

オードリー・タン(Audrey Tang 唐鳳)
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
1981年台湾台北市生まれ。幼い頃からコンピュータに興味を示し、12歳でPerlを学び始める。15歳で中学校を中退、プログラマーとしてスタートアップ企業数社を設立。19歳のとき、シリコンバレーでソフトウエア会社を起業する。2005年、プログラミング言語「Perl6(現Raku)」開発への貢献で世界から注目。同年、トランスジェンダーであることを公表し、女性への性別移行を開始する(現在は「無性別」)。2014年、米アップルでデジタル顧問に就任、Siriなど高レベルの人工知能プロジェクトに加わる。2016年10月より、蔡英文政権において、35歳の史上最年少で行政院(内閣)に入閣、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)に登用され、部門を超えて行政や政治のデジタル化を主導する役割を担っている。2019年、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』のグローバル思想家100人に選出。2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。

本書の要点

  • 要点
    1
    台湾がロックダウンなしに新型コロナウイルスの封じ込めに成功したのは、政府と国民の信頼関係のもと、デジタル技術が活用されたからだ。必要な情報が共有され、ディスカッションが生まれ、よりよい方法が考案され、その情報が拡散される。デジタル技術は、こうした行動をスムーズにしてくれる。
  • 要点
    2
    社会をつくるのは人間であり、AIではない。AIは人間をサポートするツールにすぎない。デジタル技術をうまく活用すれば、人々の精神に余裕が生まれ、「誰も置き去りにしない」社会が実現できる。

要約

なぜ台湾はいち早く新型コロナ封じ込めに成功したのか?

ロックダウンを行わずに乗り切った台湾
ZOONO3/gettyimages

2020年、全世界に新型コロナウイルスが広まった。だが台湾は、その封じ込めにいち早く成功している。これは蔡英文総統の言葉を借りれば、「医療専門家や政府、民間、社会全体の努力」が合わさった結果だ。

台湾の対策は素早かった。ウイルスの正体が明らかになる前から、政府の機関として中央感染症指揮センターが設立され、各部会(日本でいう省庁)が連携して防疫対策に臨む態勢が整えられた。1月21日に武漢から帰国した台湾人女性の感染が確認されると、翌日には武漢からの団体観光客の入国許可を取り消し、24日には中国本土からのすべての団体観光客の入国を禁止した。同時にスマートフォンを利用して感染経路の確認、および感染者と接触した可能性のある人を割り出し、全員に警告メールが送信された。さらには民間企業にマスク増産を要請し、そのすべてを政府が買い上げ、すべての人にマスクがいきわたるような対策が取られた。

こうした迅速な対応の結果、台湾では他国で行われたようなロックダウンや休校、飲食店の強制休業を行わずに済んだ。台湾は日常生活を維持しながら防疫に成功し、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の状況下にあってもGDPのプラス成長を実現した。その後は「台湾は手助けできる(Taiwan Can Help)」のスローガンのもと、各国に大量のマスクと防護用品を送っている。

少数の専門知識よりも、多数の基礎知識

台湾が今回の新型コロナウイルス感染拡大防止に成功した理由のひとつとして、2003年のSARSの流行を経験したことが挙げられる。台湾はSARSによって346人の感染者と73人の犠牲者を出し、台北市内の病院では2週間に及ぶ封鎖も経験している。

公衆衛生の観点から言えば、少数の人が高度な知識を持っているよりも、大多数の人が基本的な知識を持っているほうが重要だ。基礎的な知識を持つ人が多ければ、情報を再確認し、意見交換をして対策を考えられるからである。反対に、少数の人だけが高度な知識を持っている状態は、何が起きているか理解していない人が大多数であることを意味し、危険である。

台湾の人々は誰でも「ウイルスはせっけんで手を洗えば洗い流すことができる」「せっけんを使わなければ意味がない」という基礎的な知識を、SARSの経験から理解している。台湾の人々は日々発表される情報から、新型コロナウイルスへの知識を深め、「自分がいる場所でどのようにしてよりよい方法でウイルスに対抗していくか」を考え、ひとりひとりがイノベーションを図ってきた。

イノベーションは、中央にいる一握りの人間が多くの人々に強制するものではない。だから各地域で状況が異なれば、それに適合した方法が生み出されていく。これは台湾の人々がウイルスの仕組みを正確に理解しており、政府と人々の間にパンデミックに備えるための意識が共有されていたからこそ成し得たことである。

「官」と「民」をデジタルがつなぐ

市民プログラマーによるマスクマップ
insjoy/gettyimages

新型コロナウイルス対策において、政府が対処しなければならない最も大きな問題がマスクの供給問題であった。台湾のマスクマップは世界的に注目された。これはアプリを通して、店舗にあるマスクの在庫がわかる仕組みである。この仕組みは台湾南部に住む一人の市民が、近隣店舗のマスクの在庫を地図アプリに公開したことから始まった。

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