大衆の反逆

未 読
大衆の反逆
ジャンル
著者
オルテガ・イ・ガセット 神吉敬三(訳)
出版社
定価
880円(税込)
出版日
1995年06月07日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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大衆の反逆
著者
オルテガ・イ・ガセット 神吉敬三(訳)
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定価
880円(税込)
出版日
1995年06月07日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
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おすすめポイント

何も知らずに読み始めた読者は、きっと驚くだろう。なにせ90年以上前に書かれた本が、現在起きているような現象を、じつに雄弁に語っているのだから。

本書『大衆の反逆』は、スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットによる大衆社会論だ。オルテガの大衆に対する目は厳しく、その言葉は「苛烈」と呼ぶにふさわしい。曰く、大衆は過去に敬意を払うことなく、未来に対する指針も持たず、ただひたすら今をたゆたう。そして自分自身を「すべての人」と同じだと信じ、それに喜びを見出し、そうでない優れた少数派を追放する――。

こうしたオルテガの主張は、ともすればただのエリート主義のように映るかもしれない。しかし本書が書かれた時代背景を踏まえながら読んでいけば、その意図は容易に理解できる。当時のヨーロッパには「過去を克服した」という強い自意識があるにもかかわらず、これからの世界に関するヴィジョンが不在であり、それが精神の堕落を招いている、というわけである。

オルテガは「ヨーロッパ人」が新たに取り組むプロジェクトとして、「ヨーロッパ合衆国」ともいうべき構想を提示した。あたかも現代の欧州連合を予言するかのようだ。それは一見すると単なる理想論に思えるし、実際「綺麗事」と切り捨てるのも容易だったはずだ。しかし「理想論を掲げ、それをめざすプロセスにこそ価値がある」ということを、オルテガは強く信じていた。そしてその精神性は、現代を生きる私たちにとっても、きわめて大切なものに違いない。

ライター画像
石渡翔

著者

オルテガ・イ・ガセット (Ortega y Gasset)
1883-1955年。スペインの哲学者。マドリード大学卒後ドイツに渡り、マールブルク大学で新カント派の哲学を学ぶ。帰国後、マドリード大学教授。ジャーナリズムに多く発表の場を求めながら、「生・理性」「歴史理性」の体系化につとめた。著書『ドン・キホーテに関する思索』『無脊椎国スペイン』『人と人々』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    大衆とは、自分自身に特殊な価値を認めず、自分を「すべての人」と同じだと信じ、それに喜びを見出すあらゆる人間のことである。
  • 要点
    2
    大衆は非凡なもの、特殊な才能を持ったものを排除しようとする。
  • 要点
    3
    自己の願望や理想が満足してしまえば、もはやそれ以上は何も望まなくなり、過去への敬意も未来への展望も失ってしまう。
  • 要点
    4
    国家を国家たらしめているのは、理想を実現しようとする意志そのものであり、不断の努力なしに国家は存在しえないことを大衆は忘却している。
  • 要点
    5
    「ヨーロッパ人」は新たなプロジェクトとして、ヨーロッパをひとつの国民国家とするべく取り組むべきである。

要約

【必読ポイント!】 大衆について

大衆とそうではないものの違い
Ada daSilva/gettyimages

大衆がついに社会的権力の座についた――これが今日のヨーロッパ社会において、最も重要な事実である。大衆というのは、自分自身を指導することもできなければ、もちろん社会を支配統治することもできない。

ヨーロッパが大衆化したということは、その民族や文化が危機に直面しているということを表している。かつて大衆は、社会という舞台における背景的な存在だった。だがいまや舞台の前面に躍り出てきている。もはや舞台に特定の主役はいない。いるのは合唱隊のみである。

大衆とは、すなわち「平均人」のことだ。これは数の多寡に限らない。大衆とは心のあらわれである。大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めず、自分は「すべての人」と同じだと信じ、それに喜びを見出すすべての人間を指す。逆に大衆ではない者とは、たとえ自らの能力に不満を覚えていたとしても、常に多くを自らに求める者である。

つまり人間というのは、次の2つに分けられる。自分の人生に最大の欲求を課すタイプと、最小の欲求を課すタイプだ。優れた少数者は前者、大衆は後者に当たる。彼らを分けるのは、生まれの出自ではない。その資質、精神性である。

現代の恐るべき事実

大衆は今や社会の主役となり、かつては少数者のみのものだった施設を占領し、楽しみを享受している。そのこと自体はかまわないと思うかもしれない。だが問題は、大衆が享楽の面だけではなく、政治の面にも進出してきていることにある。

近年の政治的変革とは、すなわち大衆の政治権力化だ。かつてデモクラシーは自由主義と法を強く重んじ、大衆はその運営を専門家たちに一任していた。だが今の大衆は、物理的な圧力をもってして、自分の希望と好みを社会に押し付ける。

こうした変化は政治だけでなく、その他の知的な分野でも起こっている。今日の大衆が論文を読むのは、そこから何かを学ぼうとするからではなく、自分の持っている平俗な知識と一致しない場合にその論文を断罪するためだ。しかも始末が悪いことに、今日の大衆は、おのれが大衆の一人であることを承知しつつ、だからこそ大衆であることの権利を高らかにうたい、いたるところでそれを貫こうとする。

大衆は今、いっさいの非凡なるもの、特殊な才能を持ったものを退けようとしている。彼らと違う考えのものは、社会から締め出される恐れすらある。これが現代の恐るべき事実だ。

生について

人権という発明がもたらしたもの
svetolk/gettyimages

今日の私たちは、大衆が支配する残酷な社会を生きている。元来、社会というのは好むと好まざるとにかかわらず、常に貴族的であった。ここでいう貴族的というのは、きどった顔でしかめ面を浮かべるような者のことではない。むしろその逆だ。貴族というのは、

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