聞く技術 聞いてもらう技術

未読
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聞く技術 聞いてもらう技術
出版社
定価
946円(税込)
出版日
2022年10月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

こんな経験はないだろうか。心に抱えたモヤモヤを友人に打ち明けると、「わかるよ、それは大変だね」と静かに頷いてくれた。それだけで心がすっと軽くなった――。「聞くこと」と「聞いてもらうこと」、このささやかな循環は、私たちの日常を少しだけやさしいものにしてくれる。

ところが、この循環がうまくいかなくなるときがある。ギスギスした職場、別居中の夫婦、子をコントロールしようとする親など、人間関係に不信が横たわるとき、当たり前のように行なわれていた「聞く」と「聞いてもらう」は不全に陥る。こうなると、どれだけ話しても言葉は相手に届かず、逆に傷つけ合ってしまうようになる。

本書の著者は臨床心理士の東畑開人氏だ。東畑氏はまず、「聞く」ためには「聞いてもらうこと」が大切だと説く。人が耳を塞ぐのは、心が追い詰められているときである。周りの誰かに気持ちを共有して心のスペースをつくることで、ようやく相手の言葉を聞ける状態になるという。

とはいえ、いきなり「話を聞いて」と言うのも気が引ける。そこで役立つのは「単純作業を一緒にする」「黒いマスクをしてみる」などといった「聞いてもらう技術」である。著者は「小手先の技術」と銘打っているが、そこには心理士としての経験に裏付けされた説得力がある。

聞くこと、聞いてもらうことは思いのほか難しい。しかし、本書の声を「聞く」ことで、心をほどくきっかけが見つかるかもしれない。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

東畑開人(とうはた かいと)
1983年東京生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)・臨床心理士。専門は、臨床心理学・精神分析・医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。著書に『野の医者は笑う―心の治療とは何か?』(誠信書房)『居るのはつらいよ―ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)『心はどこへ消えた?』(文藝春秋 2021)『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)など。『居るのはつらいよ』で第19回(2019年)大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    人は話を聞いてもらえてはじめて、誰かの話を聞けるようになる。まずは「聞いてもらう」からはじめよう。
  • 要点
    2
    「助けて」と言えないときは、「ちょっと聞いて」と言ってみよう。それも難しいときは、「聞いてもらう技術」を使ってまわりを心配させ、声をかけてもらえるように誘導する。
  • 要点
    3
    誰かに話を聞いてもらうと、苦しい気持ちがやわらぎ、心にスペースができる。「聞く」は現実に直接作用するわけではないが、心に作用し、やがて現実をも変えていく。

要約

【必読ポイント!】 なぜ聞けなくなるのか

「聞いてもらう」からはじめよう

一般的に、「聞く」は声が耳に入ってくること、「聴く」は声に耳を傾けることを指す。心理士の著者が定義するなら、「聞く」は相手の語りを言葉通りに受け止めること、「聴く」は相手の語りの裏にある気持ちに触れることだ。

「聞く」と「聴く」のどちらがより難しいか。著者は「聴く」のほうがレベルも難易度も高いと思っていたが、実際は「聞く」のほうが「聴く」よりもはるかに難しい。

「なんでちゃんとキいてくれないの?」と言われるとき、求められているのは「聴く」ではなく「聞く」である。心の奥底にある気持ちを知ってほしいのではなく、言っていること、言葉にしていることを受け止めてほしい。それが「ちゃんと聞いて」の内実である。

「聞く」ことができないとき、僕たちに何が起こっているのか。決して「聞く必要はない」「聞かない」と思っているわけではない。「聞かなきゃいけない」「聞こう」という気持ちはあるはずだ。それなのに、心が挟まり、耳が塞がれて、聞けなくなってしまう。

あなたが話を聞けないのは、話を聞いてもらっていないからだ。心が追い詰められ、脅(おびや)かされているとき、人の話を聞くことはできない。誰かのストーリーを受け止めるスペースが心の中に生まれるのは、自分自身の話を聞いてもらえたときだ。

「聞く」を回復するために、まずは「聞いてもらう」からはじめよう。

それなりにうまくいっている、日常の「聞く」
millann/gettyimages

伝えたいことがあるのに聞いてもらえないとき、「聞く」の問題が立ち上がる。いくら言葉をソフトにしても、ロジカルに話しても、エビデンスを示しても、相手は全然わかってくれない。

このとき、問題は言葉の中身ではなく、2人の関係性にある。2人の間に不信感が横たわっているから、何を言っても聞いてもらえないのだ。

逆に考えると、2人の関係性が良好である限り、普段の僕らはそれなりに聞けている。「郵便局行ってくるね」といわれたら「行ってらっしゃい」と応じる。「ちょっと疲れてるんだ」といわれたら「早めに寝なよ、食器洗っておくから」と返す。普段の「聞く」は、呼吸のように自然に、かつ円滑に行なわれているのである。

「聞く」は失敗してはじめて意識される

精神分析家で小児科医だったウィニコットは、「対象としての母親」と「環境としての母親」というアイディアを提唱した。「対象としての母親」は、あなたがいま心に思い浮かべている母親の姿である。母親はこういう人とか、こんな思い出があったとか、一人の人としての母親だ。

これに対して「環境としての母親」は、あなたに意識されない母親のことだ。たとえば子どもの頃、タンスには綺麗にたたまれたTシャツがしまってあったとする。しかしあなたは「今日もお母さんが洗濯をしてくれたんだ、ありがたいな」「しわひとつないや、感謝です」とは思わなかっただろう。「環境としての母親」の存在は、当たり前すぎて気づかれない。

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