比べず、とらわれず、生きる

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比べず、とらわれず、生きる
出版社
出版日
2018年09月18日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「比べる必要はない」というのはよく言われることである。わかってはいても、それを実践することは難しい。SNSで人の成功が可視化される現代では、自分以外の人の活躍ばかりが目に入る。比べないでいられる人のほうが少数派だろう。

それでもなお「誰かと自分を比べて焦る必要はない」と呼びかける著者の言葉に説得力を感じてしまうのは、それが心から出た言葉だからだろう。本書の著者は、曹洞宗徳雄山建功寺の枡野俊明住職だ。禅僧の修行は厳しい。特に、雲水と呼ばれる修行僧時代の修行は体調不良者が出るほどだという。それを乗り越え、日常生活のすべてを修業ととらえながら生活している著者から、日々のやるべきことに集中していれば、人と比べて悩む暇などないと言われてしまえば、納得せざるをえない。

修業とまではいかなくても、暮らしに禅の教えを取り入れることができれば、心を静めることができるかもしれない。本書では、34の禅の知恵を中心に、生活の中に取り入れられそうな習慣や考え方が紹介されている。当たり前のように感じられることもあるかもしれないが、著者が極限のなかで見出した実感を伴った言葉には素直にうなずきたくなることだろう。自分の生き方に自信が持てない、誰かと比べて落ち込んでしまう、そんな気持ちに心当たりがあったら、本書をおすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

枡野俊明(ますの しゅんみょう)
曹洞宗徳雄山建功寺住職
庭園デザイナー
多摩美術大学環境デザイン学科教授
1953年神奈川県生まれ。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」の創作活動により、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年には『ニューズウィーク』日本版にて、「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル庭園など。
主な著書に、『禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本』(幻冬舎)、『心配事の9割は起こらない』(三笠書房)、『寂しさや不安を癒す 人生のくすり箱』(KADOKAWA/中経出版)、『悪縁バッサリ! いい縁をつかむ極意』(小学館)、『50代を上手に生きる禅の知恵』(PHP研究所)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    禅の世界には「今」という時間しかない。現在という時間に一生懸命向き合うその心のあり方こそ人生だと考えられている。
  • 要点
    2
    不安や心配なども含めて、すべての現象は私たちの心がつくりだしているものだ。今という瞬間に目を向け、心配事に必要以上に振り回されないようにしよう。
  • 要点
    3
    人間には必ず死が訪れる。いろんな悩みもあるかもしれないが、こうして生きているのは奇跡のようなことだ。命が尽きるその瞬間まで、今という一瞬を大切にしてもらいたい。

要約

今を一生懸命生き切る

禅の世界には「今」という時間しかない

人間は過去・現在・未来の3つの時の中に生きている。仏教ではこの3つを「三世」と呼ぶ。過去の自分に執着しながら、未来への不安を抱え、今という時間を生きる。それが人生というものだ。

禅の世界には過去と未来は存在せず、あるのは「現在」という時間だけだ。「今」という一瞬をいかに生きるか。現在という時間に一生懸命向き合うその心のあり方こそ人生だと考えられている。

「而今(にこん)」という禅語は、「過ぎ去った時」「今という一瞬の時間は二度と帰ってこない」ことを表した言葉だ。過去にとらわれていても何も前には進まないし、起こってもいない未来を心配することは時間を無為に過ごすことと同じだ。人生の真実は「今」という時間の中にしかない。だからこそ、今を一生懸命生き切ることが禅の基本的な教えだ。

心のどこかで死を意識すれば、生きている時間を、今というこの一瞬を大事にしようと思うものだ。与えられた命を無駄にしないような生き方を心がけることが、人生を豊かにしてくれる。

すべては自分の心から現れている

不安や心配事とは、心がつくり出すもの
Hakase_/gettyimages

人生には不安や心配事がつきものだ。心配事が常にあるのは人生では仕方のないことなのだから、必要以上に振り回されてはいけない。不安にばかり目をとらわれずに、距離をおいて眺めてみたほうがよい。

不安や心配は未来の中にある。どんな心配事も、それが過ぎ去った瞬間に薄らいだり、すっかり忘れてしまったりするものだ。たとえば、雨の中子どもを送り出した母親は、子どもが雨で転んだりしないか、風邪をひいたりしないかとあれこれ心配するかもしれない。だが、実際にはそうした心配事は実現しないことが多い。夕方に子どもが元気に帰ってくれば、朝の心配はすっかり消えてしまう。次の朝には気温が高くなりそうだからと、新たに熱中症の心配をしているかもしれない。人間の心とは面白いものだ。

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要約公開日 2023.10.04
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