本書の要点

  • タンパク質と炭水化物の配分が異なる餌をバッタに与えたところ、すべてのバッタが「理想的なタンパク質量」に達するまで餌を摂取した。人間も同様の実験では同じ反応を示した。生物の食生活は「タンパク質」に支配されているのである。

  • 寿命と繁殖はトレードオフの関係にある。高炭水化物/低タンパク質食は長生きするが、子孫を多く残せない。一方、高タンパク質/低炭水化物食は繁殖に有効だが、短命になる。ただ、タンパク質の摂取量を増やしすぎると、寿命は縮み繁殖数も低くなる。

  • 太古から人間は「自己改造」をすることで食環境の変化に対応してきた。しかし、その行動は栄養的には必ずしも正しいとは言えない。

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食欲と栄養の関係

生物は「正しい食事」を知っている

南アフリカ・ケープタウン郊外の自然豊かな集落。ステラはそこに住む25人の大人の1人で、40人の子どもの母親だった。人類学を専攻するアメリカ人学生、ケリー・ジョンソンは、食品に関する調査研究の際に彼女と出会い、ステラの食事を30日間続けて追跡した。

ステラは毎日多様な食品を摂り、その種類は90近くに及んだ。彼女の食事はその時々で自分が食べたいものを選んでいるように見えたが、ケリーはある重要な発見をした。それは、ステラの食事の栄養が毎日「タンパク質1に対し、脂肪と炭水化物が5」という、固定的なバランスを保っていたことだ。この比率は、彼女の体格の女性にとって最も健康的であることが実証されている。

「ステラは栄養の専門家だったのだろう」と考える人もいるかもしれない。しかし、驚くべきことにステラは人間ではなく「ヒヒ」だった。人間の近縁である野生のヒヒが、どのように自分にとって「正しい食事」を知り得たのだろうか。

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【必読ポイント!】 バッタの実験でわかった「最適な栄養バランス」

バッタの実験

動物は自分にとって最適な食べ物をどのような基準で選んでいるのだろうか。また、もし何らかの理由で最適な食べ物を摂れなかった場合は、どうするのだろうか。

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要約公開日 2023.11.28
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