ドラッカーの人生を変えた7つの経験から学ぶことは多い。そのうち1つを紹介する。ドラッカーは20代前半でドイツの有力新聞社の論説委員に抜擢されている。同社の編集長はドラッカーを含む若手を、毎週末と半年に一回の対話によって鍛えた。そこでは、「優れた仕事は何か」「一生懸命やった仕事は何か」「一生懸命やらなかった仕事は何か」という仕事ぶりに関する評価が行われた。
年二回の対話の締めくくりは次のような内容だ。「集中すべきことは何か」「改善すべきことは何か」「勉強すべきことは何か」。このプロセスがドラッカーの働きがいを育んでいくこととなる。自らを生き生きとさせ、成長を続けている人は、自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込んでいる(『プロフェッショナルの条件』)。
ドラッカーはその後、イエズス会の修道士などが行っていた意思決定の方法を取り入れて、フィードバック分析を生み出し、これを50年以上も続けた。それにより、自分の仕事ぶりを通して自分のことを知り、強みや得意分野に力を集中させ、そうでないものは省くことの大切さを学んだのだ。
ドラッカーはこう述べている。「本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。(中略)集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守が至難だからである」(『経営者の条件』)
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