孤独に生きよ
孤独に生きよ
逃げるが勝ちの思考 増補改訂版・孤独論
NEW
孤独に生きよ
出版社
出版日
2025年05月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたは孤独を感じたことがあるだろうか。孤独の、あなた自身の人生への意味を、考えてみたことはあるだろうか。

さまざまな葛藤や不安を抱えながらも、幼少期から好んできた「読むこと」と、それに付随している「書くこと」を中心とした生活ができている。著者の人生はそうして「孤独な時間がほかの人に較べて多めだったこと」が特徴的だという。

兄弟はおらず、友だちは少なくて、引きこもりも経験した。いまの仕事でも、編集者など限られた人とやりとりをするばかり。パソコンも携帯電話も使用したことがないので、インターネットにもつながっていない。そうした著者の目からすると、世の中の人は「あまりにも孤独を恐れすぎている」ように見える。

現代人は「孤独になる時間すら持てない」のだろうか。糧を得るためだけに仕事をこなし、好きなことには目をくれず、たいへんな人生をなんとかやり過ごそうとしているのだとしたら、そこに待っているのは「奴隷のような生き方」ではないのか。だからこそ著者は、「逃げよ、生きよ」と伝えようとしているのである。

自分から生まれようと思って生まれてくるわけではない。生まれる場所も環境も、選ぶことはできない。気づいたときには自分だけの人生が始まっている。そのことに絶望する人も、きっと少なくないだろう。でも、言葉があるなら、意志があるなら、そこには一歩踏み出すためのエネルギーが生じるはずだ。

最初は、となりの部屋くらいの距離でもいい。孤独かもしれないけれど、生きる手ごたえは、たしかにある。

著者

田中慎弥(たなか しんや)
1972年、山口県生まれ。2005年に「冷たい水の羊」で新潮新人賞を受賞し、作家デビュー。08年、「蛹」で川端康成文学賞、『切れた鎖』で三島由紀夫賞を受賞。12年、「共喰い」で芥川龍之介賞を受賞。19年、『ひよこ太陽』で泉鏡花文学賞を受賞。『燃える家』『宰相A』『流れる島と海の怪物』『死神』など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    仕事、学業、人間関係など、「いまを生きる人の多くは、『奴隷』になってしまっているのではないか」。
  • 要点
    2
    奴隷の状態に気づいたとき、なんとか克服したいと願うのであれば、やるべきことはひとつである。「いまいる場所から逃げること」だ。
  • 要点
    3
    奴隷の状況から脱したら、「あなたにとって価値ある『なにか』」を模索する必要がある。
  • 要点
    4
    読書を勧めるのは、「仕事や世間の奴隷にならず、くだらない流行から逃れ、そして孤独に耐えるため」である。

要約

【必読ポイント!】 奴隷状態から抜け出す

奴隷とは何か
Ivanna Oliinyk/gettyimages

机の前で時を過ごすことの多い生活をしていると、世の中から少し距離を置いているからこそ浮き彫りとなって見えてくる側面がある。仕事、学業、人間関係など、「いまを生きる人の多くは、『奴隷』になってしまっているのではないかということ」である。多少の困難はあっても、そこから抜け出し、みずらかの人生を取り戻せる可能性はある。そのためには、「自分の頭で考える」という「シンプルにして味わい深い営み」がポイントになるはずだ。

ここでいうところの「奴隷」は、時間のほとんどを仕事に拘束されたり、体力の限界までハードな仕事を課せられたりといった物理的な原因で、自分を見失っている人だけを指すわけではない。定刻に退勤できる人であっても、反論が許されないなどの環境要因により思考停止に陥り、主体的に考えることが億劫になっているようなら、やはり「奴隷」といえる。すなわち、「有形無形の外圧によって思考停止に立たされた人」が「奴隷」なのだ。

これは、友だち関係でも、恋愛、家庭などでも同様である。「少し意見したほうがみんなのためなんじゃないか」という疑問を抱いても、実際に口にして伝えるケースは少ない。それでもそこそこやっていけるから、黙したままにしてしまう。このような状態も思考停止であり、奴隷ということになる。

それで自分を損ねているのだとしたら、それは幸せとは呼べないのではなかろうか。「自分の人生を自分の足で踏みしめようとしたこと」、そこに人生の手ごたえがあるのではなかろうか。

奴隷のような状況に陥っていないか自覚的になり、それを制御する意思を持つ。そこに、「奴隷と非奴隷の分かれ目」がある。嫌な響きがつきまとう言葉ではあるが、「奴隷になってしまうかどうかは、つまるところ自己責任」と言うしかない。自身の命と生き方に関わるものなのだから、「相応の手間と覚悟」をかけるべきなのである。

逃げるということ

人間は環境への適応能力が高いので、不満を感じていても、「なんとか今日もやり過ごせた」などと現状肯定に走りやすく、すぐに思考停止しがちだ。その奴隷の状態に気づいたとき、それがどうにもならないことであっても、なんとか克服したいと願うのであれば、やるべきことはひとつである。「いまいる場所から逃げること」だ。

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要約公開日 2025.07.19
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