この本をある一人の大人に捧げたことを、子どものみなさんに許してほしい。僕にとってその大人は、一番の友だちなのだ。その大人は何だって、子どもの本だって理解できる人だ。そのうえ、その大人は空腹と寒さに苦しむフランスに住んでいる。
これだけでは理由として十分でないのなら、僕はこの本をかつて子どもだったこの大人に捧げようと思う。多くの人は忘れてしまっているけれど、大人はみんなかつて子どもだったのだ。だから僕は献辞をこう書き換える。
子どもだったときのレオン・ベルトへ
ぼくが画家というすばらしい職業を諦めたのは6歳のときだった。『本当の話』という本で見たウワバミを、自分で絵に描いてみたのだ。ぼくの傑作イラスト第一号は、ゾウをまるのみにしたウワバミの絵だった。ところが大人たちはそれを見て「帽子だ」と思ったのだ。仕方がないのでウワバミの内部の絵まで描いてみせたのだが、大人は、絵は脇に置いて、もっと役に立つことに関心を持つように言うだけだった。
だから、ウワバミや原生林や星の話をするのはやめて、パイロットになった。そうして、本音を話せる人がいないまま生きてきた。6年前、サハラ砂漠で飛行機が故障するまでは。
砂漠の真ん中でエンジンが故障し、ぼくはたった一人で難しい修理にあたることになった。水は8日分しかない。生きるか死ぬかの状況だった。
人里から1000マイルも離れた砂の上で寝ようとした最初の晩、ぼくは小さな声を聞いた。
「お願いします。ヒツジを描いて」
3,400冊以上の要約が楽しめる