ジョブ型人事の道しるべ
ジョブ型人事の道しるべ
キャリア迷子にならないために知っておくべきこと
著者
ジョブ型人事の道しるべ
出版社
中央公論新社

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出版日
2025年02月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ジョブ型」という言葉は、一時の流行語から一般のビジネス用語に移行した。そもそもこの言葉を名付けたのは、厚生労働省のシンクタンク的存在である労働政策研究・研修機構の政策研究所長、濱口桂一郎氏である。2012年に上梓した『新しい労働社会』(岩波新書)において、その対極である日本的な「メンバーシップ型」とは対の概念として紹介したのである。

時は下って2020年、日本経済団体連合会(経団連)が「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」においてジョブ型を大々的に打ち出したことで、いわば“ジョブ型祭り”が始まった。さらに2024年に閣議決定された岸田文雄政権下の「経済財政運営と改革の基本方針2024」の中で、ジョブ型人事制度の導入促進が謳われ、実際に多くの企業でジョブ型人事制度とそれに付随する職務給が導入され始めている。

本書はそうした流れに一石を投じるもので、昇進・昇格や給与が、これまでの「ヒト=能力」基準から「仕事=ジョブ」基準に変わると、働き方がどう変わるかを、多くの調査や資料を駆使しながら具体的に示している。

本書の特徴は、対象となる社員層を一律に設定せず、管理職、専門職、一般社員というように、大多数の「ふつうの社員」が辿る道を踏まえて、ジョブ型の影響を考察し、キャリア形成のための「道しるべ」を述べている点にある。

「そもそもジョブ型って何だろう」という人や、自分の会社がジョブ型に移行した人はもちろん、移行しそうな人、これからジョブ型の会社に転職することを考えている人は、ぜひ目を通していただきたい。

ライター画像
荻野進介

著者

藤井薫(ふじいかおる)
パーソル総合研究所シンクタンク本部 上席主任研究員。電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、総合コンサルティングファームにて20年にわたり人事制度改革を中心としたコンサルティングに従事。その後、ソフトウェア開発企業にて取締役タレントマネジメントシステム事業部長を務める。 2017年8月パーソル総合研究所に入社、タレントマネジメント事業本部を経て20年4月より現職。24年4月よりコンサルティング本部ディレクターを兼務。メディアへの寄稿も多数。著書に『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業がジョブ型に関心を持つ理由は2つある。1つは人件費の合理性を求め、仕事と処遇の関係を見直したいこと。もう1つは経営戦略推進のため、各ポジションに最適なタレント(才能)を確保するタレントマネジメント実践のためである。
  • 要点
    2
    管理職層の専門職は、専門分野のハブとなる「プロデュ―サー型」を目指すべきだ。
  • 要点
    3
    一般社員に対するジョブ型の影響は少ないが、30代半ばから40歳前後には専門分野を確立しておきたい。

要約

ジョブ型について企業が考えていること

6割以上の企業が「ジョブ型」や「職務給」に前向き

日立製作所、KDDI、富士通など、名だたる大企業で「ジョブ型人事制度」や「職務給」の導入が相次いでいる。諸調査によると、ジョブ型人事を導入済み、もしくは検討中である企業はおよそ6割。職務給の導入状況に至っては、管理職層で職務給や役割給を導入している企業が70%、一般社員でも50%に上る。

人事制度や給与制度には「ヒト」基準のものと「仕事」基準のものがある。「ヒト」基準は、その「ヒト」の能力や経歴などに応じて等級や給与を決めるやり方で、職能等級や職能給、年齢給などがそれにあたる。

一方の「仕事」基準は、誰が担当するかに関係なく、「仕事」そのものに応じて等級や給与を決めるやり方だ。職務等級や職務給、役職手当、役割等級、役割給などが「仕事」基準である。

企業がジョブ型や職務給を推進する理由
TrixiePhoto/gettyimages

ジョブ型人事や職務給に関心をもつ企業がなぜ多いのか。それには2つの理由が考えられる。

まず、「人件費の合理性」を高めるためである。仕事と処遇の関係を見直し、仕事に応じて給与を決めたい、つまり、職務給の導入を図りたいのだ。

仕事と処遇の関係で、矛盾が目立つのが管理職層である。多くの日本企業は能力主義の等級制度である職能資格制度を導入してきたが、等級別の定員がなく、しかも一旦昇格すると降格しない。そのため、たとえば課長相当の等級に実際の課長だけでなく、ポストについていない実力の怪しい人も在級してしまう。在級年数が長いと定期昇給が積み上がり、その等級に付随する職能給の上限まで近づく。結果、企業にとっては課長ではない人にも課長と同程度か、それ以上の給与を支払うことになってしまうのだ。

2つめは、「タレントマネジメント実践」のためである。タレントマネジメントとは、「経営戦略推進に向けて、各ポジションに最適なタレント(才能)を確保するマネジメント施策」を指す。次世代マネジメント人材の発掘や、競争の激しいIT人材の確保などもこれにあたる。エンジニアなど、需給タイトな職種の人材を獲得するためには、ジョブ型や職務給で対応する必要が高まっているのである。

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要約公開日 2025.07.26
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