内藤は、ネオワーク乃木坂のラウンジに待ち合わせの15分前に到着した。経営する株式会社TEAMの大株主である、ベンチャーキャピタル(VC)の運営者ヤスさんの紹介で、フルさんに会うためだ。フルさんは、外資系大手消費財企業のユニバース日本支社代表を長い間務めた、ピープルマネジメントのプロだという。
内藤が代表を務める会社は、一昨年に組織崩壊を経験している。彼以外の共同創業者2人が同時に会社を去り、2人を慕うメンバーの退職も相次いだ。兼務や抜擢人事でなんとか基幹業務が回るようにし、有名企業から役員を迎えた経営チームの再編もできた。自分の独りよがりな態度が共同経営者の離職を招いたという反省から、新しい経営メンバーの領域には、あまり口を挟まないことにした。だが、これが新たな袋小路の入り口だった。
社内はあからさまに殺伐としていた。経営会議にも冷めた空気が漂う。再び退職が増え始めてしまった頃、最古参メンバーの一人である山本さんが退職すると耳にする。内藤は慌てて、約1年半ぶりの1オン1をセットした。
「この会社は終わっていますよ」
目にうっすら涙を浮かべながら語る山本さんを見て、内藤は悲しむよりも先に怖くなってしまった。
そんなことを思い出していると、もう約束の時間だった。
「ナイトウさんですか」という声に顔を上げると、黒縁メガネの白髪の外国人、フルさんが立っていた。
フルさんのオフィスに移動すると、まずはマネジャーの定義から話が始まった。内藤は「マネジャー」の役割を「組織を導くえらい人」のようなイメージでとらえていた。しかし、フルさんいわく、それは「リーダー」の役割だ。
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