私たちは何かを選択する必要に迫られたとき、「どれが正解か」「どの選択肢がもっとも良いか」と考える。しかし、間違いないと確信していた選択肢が後から失敗だったとわかったり、消去法で選んだら予想外の幸運に恵まれたりといったことは、誰もが経験済みだろう。私たちは実のところ、「正解を選びたい」のではなく、「正解がないことはわかっているけど、いい選択をしたい」のだ。
いい選択をするためにキーワードになるのが、「納得感」だ。その結論に至った自分の思考を信頼し、たとえ期待外れの結果に終わったとしても、「その時点で自分なりに十分考え抜いたうえでの選択だった」と受け入れられる状態が、納得感である。
納得感のある選択ができるようになるには、二つの段階が必要だ。第一に、「考え方を変えること」である。ただ焦ったり、周囲の人に流されたり、同じことをぐるぐる考えたりするのではなく、質の高い考え方ができる思考の枠組みを手に入れないといけない。第二に、「新しい選択肢を作り出す思考法を身につけること」だ。私たちは、与えられた選択肢に囚われる傾向があるが、「そうだ、これこそ私が本当に望んでいたものだ!」と思える第三の選択肢を見つけることが実は可能だ。
納得感ある選択にたどり着くためのこの二段階を可能にするのが、本書が紹介する「哲学を使った選択思考」だ。
今、「選択」という行為の重要性はますます高まっている。テクノロジーの進化、価値観の多様化、自律性の重視といった時代の流れを受けて、「頑張れば報われる」「目標を設定し、努力し達成することこそが成功である」といったこれまでの人生観は崩壊し、何を選び、どのように努力するかが鍵になったからだ。人生は「ゴールを目指すレース」ではなく、「自分に合ったレースを見つける旅」になったといえよう。
4,000冊以上の要約が楽しめる