悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
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悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
出版社
出版日
2025年06月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

著者の経歴は異色だ。新卒で総合商社に就職するも、社会を変えると豪語して数年で退職。司法試験の勉強を開始するが挫折し、シャワーもなくお湯も出ない四畳半一間のアパートに引っ越して、フリーターと引きこもりになった。30歳の夏には腸から大出血し大腸がんが疑われ、その後、救いを求めるなかで哲学に出逢う。市役所に再就職し、昼間は働きながら夜は大学院で勉強をする生活を送り始め、博士の学位を取得して、哲学者に転身した。

このように絶え間なく「選択」をしてきた著者が、誰でも簡単に「いい選択」ができるようにと考案したのが、本書で提示される「哲学を使った選択思考」だ。これは著者個人の経験のみから導かれた方法論ではなく、デカルト、ソクラテス、マルクス・ガブリエル、デリダ、ドゥルーズをはじめとする古今東西の哲学者たちによる集合知である。ここに、このメソッドの強みのひとつがあるだろう。著者が開催する市民向けの「哲学カフェ」に参加した人が人生を変える大きな決断をしたり、研修を受けた企業が事業改革を成功させたりと、「哲学を使った選択思考」はすでに目覚ましい結果を生んでいるという。

“市井の哲学者”である著者のわかりやすい解説に導かれながらさまざまな哲学思想に触れることができることも、本書の大きな魅力だろう。私たちと同じように悩みを抱えながら生きていた哲学者たちの鋭い言葉が、胸にグサリと刺さるかもしれない。迷ってばかりで選択できない、自分が本当にしたいことがわからない、後悔はしたくないという人に相応しい一冊だ。

ライター画像
奥地維也

著者

小川仁志(おがわ ひとし)
哲学者・山口大学国際総合科学部教授。
1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど、市民のための哲学を実践している。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」「ロッチと子羊」では指南役を務めた。
近年は、中小企業から大企業まで業種を問わず「ビジネス哲学研修」を多数実施。哲学思考を活用し、企業のコアメッセージ再定義から新規事業開発、働き方改革、部署間コミュニケーション改善まで、多様なビジネス課題をサポート。深い問いかけと対話を通じて、組織と個人の本質的な成長を支援している。
専門は公共哲学、哲学プラクティス。著書も多く、ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』をはじめ、これまでに百数十冊を出版。YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも発信中。

本書の要点

  • 要点
    1
    「正解」などない。あるのは、自分が納得できる「いい選択」だけだ。著者が考案した「哲学を使った選択思考」を身につければ、「いい選択」ができるようになる。
  • 要点
    2
    悩むのではなく考える、最後は自分で決める、ファイナルアンサーだと考えない。この3つのスキルが、「いい選択」をするための前提条件だ。
  • 要点
    3
    「哲学を使った選択思考」は、核となるワードを一つ選ぶ、定義する、疑う、視点を変える、再構成・再定義する、コンセプト化する、選択する、の7つのステップを踏む。

要約

「選択」について

「正解」などない

私たちは何かを選択する必要に迫られたとき、「どれが正解か」「どの選択肢がもっとも良いか」と考える。しかし、間違いないと確信していた選択肢が後から失敗だったとわかったり、消去法で選んだら予想外の幸運に恵まれたりといったことは、誰もが経験済みだろう。私たちは実のところ、「正解を選びたい」のではなく、「正解がないことはわかっているけど、いい選択をしたい」のだ。

いい選択をするためにキーワードになるのが、「納得感」だ。その結論に至った自分の思考を信頼し、たとえ期待外れの結果に終わったとしても、「その時点で自分なりに十分考え抜いたうえでの選択だった」と受け入れられる状態が、納得感である。

納得感のある選択ができるようになるには、二つの段階が必要だ。第一に、「考え方を変えること」である。ただ焦ったり、周囲の人に流されたり、同じことをぐるぐる考えたりするのではなく、質の高い考え方ができる思考の枠組みを手に入れないといけない。第二に、「新しい選択肢を作り出す思考法を身につけること」だ。私たちは、与えられた選択肢に囚われる傾向があるが、「そうだ、これこそ私が本当に望んでいたものだ!」と思える第三の選択肢を見つけることが実は可能だ。

納得感ある選択にたどり着くためのこの二段階を可能にするのが、本書が紹介する「哲学を使った選択思考」だ。

あなたから「選択」を奪おうとするもの
Yutthana Gaetgeaw/gettyimages

今、「選択」という行為の重要性はますます高まっている。テクノロジーの進化、価値観の多様化、自律性の重視といった時代の流れを受けて、「頑張れば報われる」「目標を設定し、努力し達成することこそが成功である」といったこれまでの人生観は崩壊し、何を選び、どのように努力するかが鍵になったからだ。人生は「ゴールを目指すレース」ではなく、「自分に合ったレースを見つける旅」になったといえよう。

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要約公開日 2025.09.05
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