【新】100円のコーラを1000円で売る方法
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
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【新】100円のコーラを1000円で売る方法
出版社
出版日
2025年04月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

ビジネスで飛び交う難解なマーケティング用語。それが物語を読むだけで使いこなせるようになる。

主人公の日吉慶子が新事業を立ち上げ、個性的な仲間と協力しながら困難を乗り越えていく。そんな手に汗握る物語を楽しんでいるうちに、マーケティングの基本でもある4PやSTPといった言葉が理解できるようになっている。それが本書の強みだ。

シリーズ三部作『100円のコーラを1000円で売る方法』は、マーケティングの基本用語を覚えなくてもマーケティングの本質がわかる、というコンセプトで書かれていた。一方、装い新たな『【新】100円のコーラを1000円で売る方法』は、重要なマーケティングの基本用語を理解したうえで、それを使いこなせるようになるための一冊として書かれている。この10年で日本を取り巻く環境や新たなるマーケティング理論の登場など、様々なことが変わった。そうした事情を加味して、本書は完全新作となっている。

前作を読んだ人でも新しい学びが得られるし、ストーリー的な意味で、前作を知っているとニヤリとするような場面もある。マーケティングの教科書としてだけでなく、物語としても前作よりかなりパワーアップしている印象だ。今回は明確な「敵」が存在し、主人公たちに様々な妨害行為を仕掛けてくる。前回にも共通する物語を通じた学びという魅力は、より強い輝きを放っているといっても過言ではない。

デフレ経済から脱却しつつあるという日本にいま必要なのはアニマルスピリットだ、と著者はあとがきに記している。日本経済の転換期において、ぜひとも読んでおきたい一冊だ。

著者

永井孝尚(ながい たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント。
慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMで大和研究所の製品開発マネージャー、ソフトウェア事業部の戦略マーケティングマネージャー、人材育成責任者などを経て、2013年に退社。同年多摩大学大学院客員教授を担当。マーケティング戦略思考を日本に根づかせるためにウォンツアンドバリュー株式会社を設立。多くの企業へ戦略策定支援、講演・研修を提供。2020年からオンライン「永井経営塾」を主宰し、仕事に役立つマーケティング・マネジメント戦略を伝え続けている。
主な著書に60万部超『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ、23万部超『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』シリーズ(すべてKADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング』(SB新書)などがあり、著書累計は100万部を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    マーケティングとは広告を指す言葉ではない。マーケティングの神髄は「ビジネスでいかに価値を生むか」を考えぬくことにある。
  • 要点
    2
    STPと4Pはマーケティングの基礎中の基礎だ。STPは、市場を細かく分けて、勝てる市場を選ぶことを指す。これをうまくやったのが「チョコザップ」である。
  • 要点
    3
    STPの次は「4P」を考えなくてはいけない。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションを検討する「4P」は、STPと首尾一貫している必要がある。

要約

マーケティングの神髄

ある会社にて

「納得できません!」

日吉慶子は激怒した。日吉はITサービス専業の中小企業「UDサービス社」の若手社員だ。

「この見積金額で合意したはずです。約束を守るのは、ビジネスの基本ルールです」

イスから立ち上がり激昂する日吉に対し、

「悔しかったら、ご自分でビジネスを取ることですね」

と切り返すのは港未来である。4万人の社員を抱える大手ITサービス会社「トライアンフ社」。港はそこの購買部・担当課長を務める才媛だ。

下請けに対する一方的な値下げ強要であったが、結局は引き下がらざるをえなかった。金額も合意し、作業が終わっている上での理不尽な要求である。

ITによる中小企業の経営変革を実現してきたUDサービスは、日吉の憧れだった。いざ入社してみると往年の勢いはすでになく、長期の低迷を続けている。それでも日吉は「この会社を世界一の会社にして、日本を元気にする!」という気持ちを胸に、現場の第一線セールスとして活躍していた。

浮上の鍵はマーケティング
PeopleImages/gettyimages

今回の商談の1週間前、入社5年目となった日吉に転機が訪れていた。27歳にして新規事業開発リーダーに指名されたのだ。この仕掛け役となったUDサービスの創業社長・祐天寺大介は日吉を「アニマルスピリットの持ち主だ」と評価する。次々と前向きに挑戦し、仕事を楽しんでいる。その「アニマルスピリット」が新規事業による成長に必要だと考えたのだ。

新たに3人の部下がつくことになる……はずだったのだが、UDサービスの待遇への不満を主な理由として2人が退職、残ったのは同期社員1人だけとなった。

「お世話になりマスッ! マルクス・ハマーと申しマスッ!」

そこにいきなり加わってきたのが、流暢な日本語を操るマルクスだった。米国のマーケティング研究者で、日本企業の知見を深めるために入社してきたという。

マルクスは、トライアンフ社からのひどい扱いをUDサービスが甘受せざるを得ない現状について、その原因を「マーケティングをまったくわかってないこと」だと指摘した。マーケティングを武器にできれば、UDサービスは世界一になるし、日本も元気になるのだとマルクスは息巻いた。

高評価ばかりは衰退の兆候?

「マーケティングって、要は広告や宣伝でしょ」

そう言う日吉に対し、マルクスは反論した。マーケティングの神髄は「ビジネスでいかに価値を生むか」を考え抜くことだ。「成長が止まるのは、市場の飽和でなく経営の失敗」である。「あらゆる製品は、陳腐化を免れない」からこそ、「自ら成功の要因を作り出すしかない」。

そして、「得意先を絞り込む戦略だけでは衰退する」ことも告げる。

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要約公開日 2025.09.22
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