1991年12月、著者のもとに1本の電話がかかってきた。電話の主はアラン・アウフゼン。NBA(全米バスケットボール協会)のいちチーム、ニュージャージー・ネッツ(以下、ネッツ)の会長だ。アランは著者に、チームのコンサルティングを依頼するために電話をかけてきたのだ。
当時ネッツはNBA27球団中、観客動員数最下位とひどい状態にあった。著者は「興味ないです」と断ったが、アランは「アドバイスだけでも」と譲らない。著者はしぶしぶ、その週の水曜に会うことを承諾した。
それから4年半の間、著者はネッツでマーケティングを担当することとなる。そして、ここでの困難に満ちた経験が「ジャンプスタート・マーケティング(売れない商品を売る方法)」の発見につながることになるのだ。
著者は、商品(チーム)の現状を把握することから始めた。すると、次の実情が明らかになった。
まず売上だが、全27商品中、堂々の最下位。それに加え、チームの成績も最悪だった。ネッツは過去5年、NBAで最下位か下から2番目ばかりだったのだ。つまり、商品力が圧倒的に低い。試合内容もひどく、編成もめちゃくちゃだった。
さらに、地元ニュージャージーでの人気も芳しくなく、名門ニューヨーク・ニックスにファンを取られていた。ニュージャージーの住人は地元意識が欠けている、つまり「自分の街」への愛着が薄いことでも有名だった。
ネッツの経営体制にも問題があった。CEOを立てず、7人の共同オーナーが経営の責任を分担していたのだ。1人は人事、1人はマーケティング……と分担していたため、7人の意見がまとまらず、経営方針もバラバラだった。これでは迅速な意思決定などできるはずもない。
商品分析の結果を踏まえて、著者は次の施策を考えた。
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