新版 エスキモーに氷を売る
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NEW
新版 エスキモーに氷を売る
出版社
フォレスト出版

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出版日
2025年04月03日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

どんな商品やサービスにも、かならず魅力はあるはずだ。だが、その魅力が著しく低く、興味を持つ人がほとんどいない場合、どう売り込めばいいのだろうか。

本書は、そんな悩めるセールスパーソンに救いの手を差し伸べる一冊だ。「マーケティングのバイブル」と称される世界的ベストセラーであり、その名を知る人もいるだろう。今回、初版から四半世紀を経て、新訳による待望の「新版」が登場した。

本書では、著者の実体験をベースに話が展開する。舞台はNBAチームの「ニュージャージー・ネッツ」。当時ネッツは観客動員数最下位で、チームの戦績も一番下か下から2番目。地元ニュージャージーでも人気を他チームに取られているという、ひどい状態にあった。そんなネッツのコンサルティングを任されたのが、著者である。さて、著者はどうやってこの逆境を打破していったのか?

本書ではさまざまなマーケティングやセールスの手法が紹介されるが、どれも驚くほどシンプルで「言われてみれば当然」というものばかりである。それなのに実践が難しいのは、思い込みや連綿と続いてきた慣習、短期的な利益追求――。あなたも思い当たる節があるはずだ。

ストーリーベースで軽快に綴られる本書は、マーケティング初心者にも読みやすい。ぜひ稀代の名著を、この機会に楽しんでいただきたい。

※「エスキモー」は、現在では差別的な意味合いを持つとされることがありますが、本書では原題の用語を尊重し、そのまま使用しています。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

ジョン・スポールストラ(Jon Spoelstra)
1968年ノートルダム大学(コミュニケーション専攻)卒業。
1978年NBA(全米バスケットボール協会)のポートランド・トレイルブレイザーズ副社長、1989年デンバー・ナゲッツの社長兼CEO。1991年、NBAで観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツの社長兼CEOとなり、独自のマーケティング理論を適用して、NBAの27球団中、1位のチケット収入伸び率を達成した。ネッツ引退後はSROパートナーズを設立し、会長に就任。現在はマンダレー・スポーツ・エンターテインメントの社長を務めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    NBAチーム「ニュージャージー・ネッツ」は、観客動員数最下位の弱小チームだ。著者はネッツで「ジャンプスタート・マーケティング」を行い、起死回生を実現した。
  • 要点
    2
    売り上げをすぐに伸ばす秘訣は、既存顧客に直接売り込むことである。
  • 要点
    3
    ネッツの営業規範は「顧客が買いたい商品だけを売る」「顧客が買いたいと思うより、少しだけ多く売る」の2つだけだ。
  • 要点
    4
    ターゲットのセグメンテーションでは「自社商品に興味があるかどうか」だけを基準とする。

要約

【必読ポイント!】売れない商品を売る方法

「ジャンプスタート・マーケティング」の始まり

1991年12月、著者のもとに1本の電話がかかってきた。電話の主はアラン・アウフゼン。NBA(全米バスケットボール協会)のいちチーム、ニュージャージー・ネッツ(以下、ネッツ)の会長だ。アランは著者に、チームのコンサルティングを依頼するために電話をかけてきたのだ。

当時ネッツはNBA27球団中、観客動員数最下位とひどい状態にあった。著者は「興味ないです」と断ったが、アランは「アドバイスだけでも」と譲らない。著者はしぶしぶ、その週の水曜に会うことを承諾した。

それから4年半の間、著者はネッツでマーケティングを担当することとなる。そして、ここでの困難に満ちた経験が「ジャンプスタート・マーケティング(売れない商品を売る方法)」の発見につながることになるのだ。

まずは商品の現状分析から
fstop123/gettyimages

著者は、商品(チーム)の現状を把握することから始めた。すると、次の実情が明らかになった。

まず売上だが、全27商品中、堂々の最下位。それに加え、チームの成績も最悪だった。ネッツは過去5年、NBAで最下位か下から2番目ばかりだったのだ。つまり、商品力が圧倒的に低い。試合内容もひどく、編成もめちゃくちゃだった。

さらに、地元ニュージャージーでの人気も芳しくなく、名門ニューヨーク・ニックスにファンを取られていた。ニュージャージーの住人は地元意識が欠けている、つまり「自分の街」への愛着が薄いことでも有名だった。

ネッツの経営体制にも問題があった。CEOを立てず、7人の共同オーナーが経営の責任を分担していたのだ。1人は人事、1人はマーケティング……と分担していたため、7人の意見がまとまらず、経営方針もバラバラだった。これでは迅速な意思決定などできるはずもない。

売り込みの施策を立てる

商品分析の結果を踏まえて、著者は次の施策を考えた。

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要約公開日 2025.10.02
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