仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
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仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2025年07月01日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

仕事における意思決定は一瞬でありながら、時にその後の展開を大きく左右する。「あのとき別の選択をしていれば」と悔やんだ経験は、誰にでもあるはずだ。本書は、そんな後悔を減らし、自信を持って決断できるようになるための脳の使い方を教えてくれる。

著者の加藤俊徳氏は脳内科医であり、脳科学・MRI脳画像診断の専門家だ。米ミネソタ大学放射線科での研究経験をもち、現在は加藤プラチナクリニック院長として、脳の使い方の指導や執筆活動に取り組んでいる。

本書の核となるのは、「判断には基準が必要である」という考え方だ。判断基準が曖昧だと感情や雑念に流されやすく、的確な判断は難しくなる。だからこそ、自分の中で判断の基準を定めるとともに、振り返りを習慣化することで、判断の精度は向上していくという。

また、判断を誤るときには人それぞれの「クセ」があるという指摘も印象的だ。「寝不足のときは判断ミスが多い」「いらいらしているとうまくいかない」といった自分の失敗パターンを把握できれば、ミスを未然に防ぎやすくなるという。ここでも振り返りが効果的だそうだ。

人間は1日に約3万回の意思決定をしているといわれている。判断ミスで後悔したくない人や、判断にかける時間を短縮したい人が本書を読めば、より効率的かつ戦略的に判断できるようになるはずだ。

著者

加藤俊徳(かとう としのり)
脳内科医、医学博士
加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳活性助詞強調音読法を開発・普及。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年に、現在世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見した。脳が一生成長することを目指す「加藤脳内科療法」として、独自開発した加藤式脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、脳の使い方の指導や、学習・進学、適職の相談などを行う。著書に、『一生頭がよくなり続けるすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』(ダイヤモンド社)、『脳の名医が教えるすごい自己肯定感』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。
加藤プラチナクリニック公式サイト https://nobanchi.com/
脳の学校公式サイト https://nonogakko.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちは物事を判断する際、4つの段階を経ており、それぞれに判断ミスの要因が潜んでいる。
  • 要点
    2
    過去の記憶や体験に縛られ、「過去」を判断基準にしてしまうと、判断ミスをしやすい。
  • 要点
    3
    判断力を磨く習慣として、自分自身の「判断基準」を作ることや、寝る前にその日の判断を振り返ることが有効である。

要約

なぜ人は判断ミスをするのか

判断の4段階とその落とし穴
kuppa_rock/gettyimages

私たちは物事を判断する際、次の4段階を経ていると考えられる。

(1)知覚・認知の段階

(2)感情・欲望の段階

(3)理解・記憶・分析の段階

(4)判断・選択・実行の段階

それぞれを具体的に見ていこう。

例えば、友人の家を訪れたあなたは「先に部屋に入って待っていてほしい」と言われたとする。部屋に入ると机の上にバナナが置いてあった。まず視覚を通じてその存在を認識する。しかし、それは精巧なサンプルかもしれない。手に取って匂いを嗅ぎ、確かに本物だと知覚する(知覚・認知)。

本物だとわかると、ちょうど空腹だったあなたは食べたいという気持ちを抱く(感情・欲望)。だが、そのバナナは友人のものであり、勝手に食べればまずいことになると理解する(理解・記憶・分析)。とはいえ友人から「部屋で自由にくつろいでいていいよ」と言われたことを思い出し、きっと自分のために用意されたものだろうと考えて食べてしまった(判断・選択・実行)。

このように、バナナを認知してから食べるまでには4つの段階がある。そしてそれぞれに判断ミスの要因が潜んでいる。

「知覚・認知」の段階では、視覚だけに頼ればサンプルを食べてしまう危険があった。これは五感情報の不足による判断ミスだ。正しい判断のためには客観的で多角的な情報収集が必要だといえる。

次の「感情・欲望」の段階では、空腹ゆえに「食べたい」と思ってしまった。実際に食べて友人を怒らせたなら、それは感情・欲望に流された結果の判断ミスである。

さらに「理解・記憶・分析」と「判断・選択・実行」の段階では、「自由にくつろいでいいよ」という言葉を拡大解釈した。友人にその意図がなければ、それは思考のバイアスによる曲解だ。本人が理性的に結論を導いたつもりでも、無意識のバイアスが判断を狂わせることになる。

思考のノイズと判断ミス

ここでは、判断ミスを招く「思考のノイズ」について取り上げたい。

例えば、上司から「1週間後にレポートを提出せよ」と命じられたとしよう。思考のノイズが少ない人は、まず「レポートの狙いと目的」「レポートの内容の構成」「レポートの大体の分量」といった必要最低限のチェックポイントを上司に確認する。そのうえで提出期限から逆算し、大まかな日程を立てて作業に着手するだろう。余計なことに注意を奪われず、集中して作成に取り組み、期限に間に合わせる。

一方、思考のノイズが多い人はチェックポイントに集中できない。「なぜこの時期に自分が任されたのか」「上司の表情が硬かったのは何か理由があるのか」といった、本来考える必要のないことに心をとらわれてしまうのだ。結果として、判断ミスをしやすくなる。

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要約公開日 2025.10.06
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