Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
著者
NEW
Z世代の頭の中
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2025年07月11日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「3年で3割が辞める」「転職志向が強い」――そんな言葉で語られるZ世代の価値観や行動に、疑問や違和感を抱いたことのある人は少なくないだろう。だが本書を読めば、この世代への理解が深まるはずだ。

本書によれば、若者が3年で3割辞めるのは事実である。しかしその理由は、決して堪え性がないからではない。不確実な時代を生き抜くために「常に自分をアップデートしなければ」という切迫感に背中を押され、より多くの経験を積める環境を求めているのである。

本書は、Z世代のリアルな姿を豊富な調査とインタビューを通じて描き出している。取り上げるテーマは、仕事と働き方にとどまらず、政治と起業・地元志向、恋愛と結婚、家族と出産、消費とSNS・友人関係にまで及ぶ。

なかでも印象的なのは仕事観である。第一志望の大手企業に内々定したその日に転職サイトを眺める学生や、「人生を倍速で生きています」と語る若手起業家など、多様な声を通じてZ世代のリアルに迫っている。

著者の牛窪恵氏は、世代・トレンド評論家として「おひとりさま」「草食系」といった社会を動かすキーワードを次々と世に送り出してきた人物だ。内閣官房や財務省などでの委員・研究会メンバーのほか、企業との消費者研究も数多く手がけてきた、豊かな実績を持つ。

読み進めるうちに、Z世代の行動は合理的で緻密な戦略に基づいたものであることが分かる。Z世代の部下を持つ上司や採用・教育に携わる人、この世代をターゲットとした商品開発やマーケティングに従事する人に勧めたい。読めば自らの価値観をアップデートできるだろう。

著者

牛窪恵(うしくぼ めぐみ)
世代・トレンド評論家。立教大学大学院(MBA)修了(経営管理学)。同大学院および文京学院大学大学院・客員教授。
大手出版社勤務を経て、2001年4月、マーケティング会社インフィニティを設立、同代表取締役。企業各社との消費者取材・研究や多くの著書を通じ、「おひとりさま」「草食系」「年の差婚」などの流行語を世に広めた。これまで内閣官房、財務省、経済産業省等の委員や研究会メンバーを多数歴任。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、TBS系「Nスタ」ほか、テレビのレギュラーコメンテーターとしても知られる。

本書の要点

  • 要点
    1
    Z世代の働き方を理解するうえで重要なキーワードは「二刀流」と「先回り」である。この世代は、何が起こるか分からない時代だからこそ、常に自分を守るための「お守り」として複数のアイテムや装備を持っておきたいと考えている。
  • 要点
    2
    Z世代を対象とした施策のキーワードとなるのは「『多様』を『個別』に落とし込む」と「『古い』を『新しい』に活かす」だ。

要約

Z世代の「仕事と働き方」のナゾ

Z世代の驚きの仕事観

著者がコロナ禍でZ世代の声に驚かされた一例は、自身の会社でインターンをしていた大学生・ユキさんの発言である。

ユキさんは就活で第一志望の会社から内々定を得たまさにその日、転職サイトを眺めていた。驚いた著者らが「あれ?第一志望の企業じゃなかったの?」と尋ねると、「はい、行きたかった会社です」と涼しい顔で答え、さらにこう続けた。「でもこの先、いつどうなるか分からないじゃないですか」

著者はこの一言を聞いた瞬間、「Z世代は、ゆとり世代以前とはまた異なる『仕事観』を持っているのではないか」と直感した。そして実際にインタビューや定量調査を重ねるなかで、この世代特有の意識や新しい価値観が次々と明らかになっていったのである。

本書では、Z世代の仕事と働き方、政治と起業・地元志向、恋愛と結婚、家族と出産、消費とSNS・友人関係について、調査結果に基づいて紹介されている。要約ではそのうち、Z世代の仕事と働き方に焦点を当てる。

Z世代の「アップデート」願望
migimigi/gettyimages

Z世代に関してよく語られる説の一つに「3年で3割が辞める」がある。

この数字自体は事実だ。24年に厚生労働省が発表した大卒社会人の離職率でも、21年入社の若者が3年以内に離職した割合は約35%に達している。

ただし、実は「3年で3割が辞める」傾向は00年ごろからの25年間で大きく変化していない。

この25年で企業や職場の労働環境は改善傾向にある。それなのに、なぜZ世代は3年以内に離職するのか。

この疑問を読み解くカギとなるのが、リクルートワークス研究所が広めた「ゆるブラック(企業)」という概念である。労働環境に大きな問題はなく、表面的には居心地が良いが、「ゆるい」職場ゆえに成長実感を得られない状況を指す。

22年3月、同研究所が従業員1000人以上の大手企業に入社した1~3年目の社員(大卒以上)に「現在の職場をゆるいと感じるか」と尋ねた調査では、「(どちらかといえば)あてはまる」と答えた割合が4割弱にのぼった。

Z世代は「自分をアップデートし続けなければならない」という危機感が非常に強い世代である。23年に人材紹介関連の企業が行った調査でも、Z世代が転職を考える最大の理由は「将来の目指す方向に近づくため」、次いで「スキルが身につかない環境のため」であり、いずれも自分をアップデートできない環境を挙げていた。

Z世代が「アップデート」を求める背景

なぜZ世代は、自分をアップデートできないことに不安を抱くのか。

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要約公開日 2025.09.30
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