著者がコロナ禍でZ世代の声に驚かされた一例は、自身の会社でインターンをしていた大学生・ユキさんの発言である。
ユキさんは就活で第一志望の会社から内々定を得たまさにその日、転職サイトを眺めていた。驚いた著者らが「あれ?第一志望の企業じゃなかったの?」と尋ねると、「はい、行きたかった会社です」と涼しい顔で答え、さらにこう続けた。「でもこの先、いつどうなるか分からないじゃないですか」
著者はこの一言を聞いた瞬間、「Z世代は、ゆとり世代以前とはまた異なる『仕事観』を持っているのではないか」と直感した。そして実際にインタビューや定量調査を重ねるなかで、この世代特有の意識や新しい価値観が次々と明らかになっていったのである。
本書では、Z世代の仕事と働き方、政治と起業・地元志向、恋愛と結婚、家族と出産、消費とSNS・友人関係について、調査結果に基づいて紹介されている。要約ではそのうち、Z世代の仕事と働き方に焦点を当てる。
Z世代に関してよく語られる説の一つに「3年で3割が辞める」がある。
この数字自体は事実だ。24年に厚生労働省が発表した大卒社会人の離職率でも、21年入社の若者が3年以内に離職した割合は約35%に達している。
ただし、実は「3年で3割が辞める」傾向は00年ごろからの25年間で大きく変化していない。
この25年で企業や職場の労働環境は改善傾向にある。それなのに、なぜZ世代は3年以内に離職するのか。
この疑問を読み解くカギとなるのが、リクルートワークス研究所が広めた「ゆるブラック(企業)」という概念である。労働環境に大きな問題はなく、表面的には居心地が良いが、「ゆるい」職場ゆえに成長実感を得られない状況を指す。
22年3月、同研究所が従業員1000人以上の大手企業に入社した1~3年目の社員(大卒以上)に「現在の職場をゆるいと感じるか」と尋ねた調査では、「(どちらかといえば)あてはまる」と答えた割合が4割弱にのぼった。
Z世代は「自分をアップデートし続けなければならない」という危機感が非常に強い世代である。23年に人材紹介関連の企業が行った調査でも、Z世代が転職を考える最大の理由は「将来の目指す方向に近づくため」、次いで「スキルが身につかない環境のため」であり、いずれも自分をアップデートできない環境を挙げていた。
なぜZ世代は、自分をアップデートできないことに不安を抱くのか。
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