小澤隆生 起業の地図
小澤隆生 起業の地図
困難をいかに乗り越え、事業を成功させるのか
著者
NEW
小澤隆生 起業の地図
出版社
出版日
2025年09月02日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は起業家・投資家として知られる小澤隆生氏の評伝である。

ECの先駆けとなるIT企業をつくり、その売却によって楽天の幹部となり楽天イーグルスを設立、ヤフーではPayPayを立ち上げて社長に就任。その後は投資家として活躍――と、その経歴は実に華々しいものに思える。誰もが知る日本の天才起業家のひとりと言って、異論がある人はいないだろう。

一方で、小澤は自らのことを天才ではなく凡人だと語る。起業家としても成功しつつ、楽天の三木谷浩史、ソフトバンクの孫正義という名だたる経営者の右腕としても実績をあげてきた小澤のことを本当に凡人であると受け止める人はいないとしても、本書が凡人にとって学びにあふれていることは確かな事実だ。

本書は、小澤の成功の真髄を「おざーんの法則」という親しみやすく明快な18の原則にまとめている。そして、著者・北康利氏の手により、「おざーんの法則」がいかに小澤のキャリアにおいて成功の鍵を握っていたかがよくわかる構成になっている。

もし天才を「天からギフトを授かった唯一無二の存在」と定義するなら、再現性を武器として後進を一流起業家へと育て上げる小澤は、凡人であることの価値を証明する究極の起業家なのである。

ライター画像
池田明季哉

著者

北康利(きた やすとし)
1960年12月24日愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。2008年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。100年経営の会顧問。日本将棋連盟アドバイザー。一燈照隅の会を主宰。
『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』(以上、講談社)、『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』、『稲盛和夫伝』(以上、PHP研究所)、『胆斗の人 太田垣士郎―黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『本多静六― 若者よ、人生に投資せよ』(実業之日本社)、『ブラジャーで天下をとった男 ワコール創業者塚本幸一』(プレジデント社)など著書多数。複数のスタートアップ企業の役員・顧問として、現場で起業支援活動を行なっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    小澤は父の借金を返すためにIT起業を志し、CSK入社後に「ビズシーク」を創業して楽天に売却。楽天幹部として活躍し、楽天イーグルス設立を成功に導いた。
  • 要点
    2
    楽天退社後は「投資ではなく消費、自分のやりたいことにカネを使おう」という方針で、エンジェル投資を通じて数多くの起業家を育成した小澤は、多くのIPOを実現するなど抜きん出た実績を残した。
  • 要点
    3
    ヤフーでの小澤はEC改革を主導し、PayPayの普及を牽引。最終的にヤフーの社長を退任し、「友だちをつくろう」というモットーどおり、友人たちに囲まれて舞台を降りた。現在は後進の育成にいっそう注力している。

要約

【必読ポイント!】 起業家としての原点

60億円稼げる職業を探せ
high-number/gettyimages

小澤隆生(以下、小澤)の祖父は戦後に木炭で財を成し、その後、生コンという成長産業へ進出した起業家であった。父が跡を継いだが、ホテル事業のため銀行から60億円を融資された直後に市況が変化し、そのまま巨額の借金が残ることになった。

早稲田大学法学部に在籍していた20歳のとき、父から借金の事実を打ち明けられた小澤は、「親父の借金を返すために60億円以上稼ぐにはどんな職業を目指すべきか」という基準で長者番付と日経新聞を徹底的に調べ、起業しか道はない、しかも資金が少なくても可能な成長市場IT分野で挑むと決意する。

ところがプログラミングを学ぼうとするもまったく理解できなかったため、未経験からIT企業に就職して学ぶ戦略を立てた。当然断られ続けたが、CSKから内定を得る。

入社した1995年はITにおける節目の年であった。ウィンドウズ95が登場した年であるし、アメリカのビル・クリントン政権と日本の橋本龍太郎政権による新自由主義的政策は、IT起業にとって追い風となった。

小澤は白いスーツ姿で内定式に現れ、同期のSE職135人全員に「僕は将来、起業を考えている。一緒にやろうというヤツいないか?」と声をかけて、仲間集めを始めた。その過程で技術に強い同期の岡元淳と出会う。

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要約公開日 2025.10.17
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