「わかってもらう」ということ
「わかってもらう」ということ
他人と、そして自分とうまくやっていくための言葉の使い方
著者
「わかってもらう」ということ
出版社
出版日
2025年07月16日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

誰しも自分のことをわかってほしいと思うものだ。しかし、「わかってもらう」ことのハードルは意外なほど高い。

この問題に対して、言語学者の川添愛氏は「結局のところ、言葉の使い方に正解はない」と語る。川添氏といえば作家としても活躍し、専門的な内容をわかりやすく身近に感じられる著書で知られている。その経歴から「言葉のエキスパート」と称されることが多いが、自分ではそのように思えないのだという。

今では手がけた解説書や講演を「わかりやすかった」と言ってもらえる著者も、かつては「話がわかりにくい」と言われ、ろくに反省することもできていなかったという。本書はそんな著者だからこそ書けた、「たいしてわかってもらえない人間」が、「そこそこわかってもらえる人間」になるまでに得られた教訓をまとめた一冊だ。「教えること」ではなく「寄り添うこと」を目的とした本書は、読者自身が言葉について試行錯誤するための道しるべを与えてくれる。

自身の失敗談や、そこから日頃気をつけていることなどの身近なトピックが並び、どれもどこかで経験したことのあるような状況ばかりだ。ビジネスやプライベートでも、すぐに気をつけられそうな事例が豊富で、実践に落とし込みやすいのが魅力だ。話がわかりにくいと言われて悩んでいる人は、本書を開いてみてほしい。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

川添愛(かわぞえ あい)
1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大学大学院にて博士(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は作家としても活動している。著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード(〈Round 1〉〈Round 2〉)』(以上、東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(朝日出版社)、『ヒトの言葉 機械の言葉』(角川新書)、『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「わかってもらうこと」は、言葉を使うことで、他人や自分自身とうまくやっていくことである。理想は言葉を使うことで自分と他人の両方が幸せになることであり、そのための第一歩として「わかってもらうこと」がある。
  • 要点
    2
    聞き手に一方的に理解を強いるのはコミュニケーションとはいえない。一方、自分の本心を犠牲にすることとも違う。他人との関係を調整する上で「落としどころ」となる言葉の使い方を目指す。

要約

【必読ポイント!】 「わかってもらう」とは?

他人や自分とうまくやっていくこと

本書では「わかってもらうこと」を「言葉を使うことで、他人や自分自身とうまくやっていくこと」と考える。理想は「言葉を使うことで、自分と他人の両方が幸せになること」だが、その第一歩として「わかってもらうこと」を位置づけている。

人間は、他人と関わることなしに生きていくことができない。直接やりとりする身近な人はもちろん、一生会うこともない膨大な人々と、さまざまな形で関わり合い、助け合って私たちは生きている。他人と関わり合う上で、強力な手段となるのが言葉だ。

「わかってもらう」には、どんな言葉を使ってもいいというわけにはいかない。コミュニケーションは話し手と聞き手、双方の協力により成り立つものであり、聞き手に一方的に理解を強いるのはコミュニケーションとはいえない。同時に、他人とうまくやっていくために自分の本心を犠牲にすることとも違う。他人と自分、自分と自分の関係を調整する上で、うまい「落としどころ」となる言葉の使い方を考えるのが本書の目指すところだ。

「わかってもらう」大前提
oodboy Picture Company/gettyimages

わかってもらうために絶対に必要なのは、「ある程度の信頼関係」だ。

良好な関係を築くのは容易いことではないが、嫌われるのは簡単だ。敬意を示さないようにすればいい。誰でも、「自分に敬意を払わない人」なら簡単に思い浮かべられるはずだ。しかし怖いのは、自分が他人に敬意を払っていないことに、自分ではなかなか気づけないことだ。著者自身も、相手に指摘されてハッとした経験がある。自分が知らず知らずのうちに敬意を欠いた言動をしていないか、こまめにチェックするしかない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3922/4623文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.10.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
吉田浩岩井俊憲 (監修)
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
阿部恵
いいことが起こる人の習慣
いいことが起こる人の習慣
内藤誼人
やりきる意思決定
やりきる意思決定
中出昌哉
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
荒木俊哉
はじめる力
はじめる力
安野貴博
「月曜の朝がつらい」がなくなる本
「月曜の朝がつらい」がなくなる本
森下克也