値上げのためのマーケティング戦略

まだ価格競争で勝負するのか?
未読
値上げのためのマーケティング戦略
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まだ価格競争で勝負するのか?
未読
値上げのためのマーケティング戦略
出版社
クロスメディア・パブリッシング
出版日
2013年11月08日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本が誇る優良企業、トヨタ社の2012年度売上は22兆641億円で純利益率は6.4%弱だった。一方、ドイツの自動車会社、フォルクスワーゲングループの2012年度売上は日本円で約22兆1682億円、純利益率はなんとトヨタを遥かに凌ぐ13.2%。売上高は同等であるにもかかわらず、純利益率が倍以上も離れている。フォルクスワーゲン傘下のポルシェ社にいたっては、同年度売上約1兆5944億円、純利益率はなんと17%もあるそうだ。

こうした現状を踏まえて、本書の著者である菅野氏は、日本企業は高収益を誇るグローバル企業と比較して「顧客価値創造プライシング」、すなわち事業環境の変化に対応したマーケティング戦略の遂行能力が十分ではないと語り、この能力を高めることこそ日本復活のカギであると主張している。日本企業は製品のブランディングやデザインなどの情緒的価値を高めることを苦手としているが、これを見直し、製品価値に見合った「値上げ」を実行するための戦略的視点を持たねばならない。

本書ではこれまで広く語られてきたマーケティングの基礎概念も充足しつつ、最近のトレンドであるソーシャルメディアの活用やデザイン思考の考え方を随所に取り入れている一冊だ。マーケティングを初めて学ぶ人にも十分に理解できる中身となっているが、同時にマーケティングや商品企画に携わる方も、「価格」を中心としてマーケティング理論を振り返ることで、価格戦略に関する多くのインサイトを得ることができるだろう。

著者

菅野 誠二
ボナ・ヴィータ代表取締役 ビジネス・ブレークスルー大学教授(マーケティング)
早稲田大学法学部卒、IMD経営大学院MBA。ネスレ日本株式会社、ブエナ・ビスタ(ウォルト・ディズニー・カンパニー ビデオ部門)マーケティングディレクター、マッキンゼー&カンパニーにて経営コンサルタントとして営業戦略立案プロジェクトの実施や、商社のマルチメディア戦略、韓国財閥企業の新商品開発プロセスのリ・エンジニアリング、都銀のニューメディアバンキング戦略、アパレルメーカーの新規事業戦略立案等を担当。
現在、ボナ・ヴィータを設立。コンサルティングによる企業の戦略立案と、アクションラーニングを通じた企業変革に関わっている。
著書に『共感をつかむプレゼンテーション』(日本経団連出版)『図を描き・思考を磨き・人を動かすプレゼンテーション』(翔泳社)、訳書に『マッキンゼー流プレゼンテーションの技術』(東洋経済新報社)等。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本は、企業が利益志向ではなく価格競争に明け暮れる結果、売上重視の価格設定を行っているという、世界でも稀な市場と言える。
  • 要点
    2
    顧客価値創造プライシングとは、同一商品でも異なるセグメントのお客様には、時と場合によって感じていただける価値が異なるため、それぞれに価値を創造し、最適価格をつけて儲けるための手法である。
  • 要点
    3
    本書では顧客価値創造プライシングの実行手法が詳細に解説されており、この手法を身に着けることで、値上げのためのマーケティング戦略を練ることが可能となる。

要約

マーケティングはお客様へ提供する価値を創造すること

日本企業の多くは売上重視
Jupiterimages/BananaStock/Thinkstock

自分の会社が1%値上げに成功した場合と、売上数量が1%増加するよう打ち手を実行した場合では、どちらがどのくらい営業利益が増加するかご存じだろうか。あるいは売上数量の増加ではなく、1%の費用減でも構わない。当然、これらの施策を実行するには投資や作業量も必要となる。

手に入れられる果実の大きさから優先順位を述べると、圧倒的に「価格を1%上げる」ことの成果が大きい。これは数多くの学者やコンサルタント会社が繰り返し証明してきたことだ。

しかし、ドイツを基盤とする国際的なコンサルタント会社、サイモン・クチャー&パートナーズがアジア、欧州、米国の3904社に対して行った2011年のサーベイ結果によると、日本は価格競争に明け暮れ、企業が利益志向でない価格設定を行っているという、世界でも稀な市場であることが明らかとなっている。調査によると、高い収益を得るために重要なことを「売上の増加」と考える日本企業は91%である一方で、「価格設定において利益を最も重要視している」と答えた日本企業は33%にとどまる。このように日本企業には売上重視の姿勢が顕著に表れている。

価格戦略下手企業4つのシンドローム

あなたの会社でプライシングが上手でないとしたら、それには4つの理由が想定されると著者は語っている。

1 永いデフレ経済下の経験から値上げが不可能と思い込んでいる

2 価格設定において、①自社コストに必要な利潤を加えて決める、②自社対競合商品の強弱で調整する、③顧客のいいなり、という3つのうち慣習的にどれかのパターンでしか想定していない

3 価格の決定権を持つ責任者が不明確

4 プライシングを科学し、実行するノウハウと仕組みの欠如

そこで本書では『顧客価値創造プライシング』という概念を紹介している。顧客価値創造プライシングとは、同一商品でも異なるセグメントのお客様には、時と場合によって感じていただける価値が異なるため、それぞれに価値を創造し、最適価格をつけて儲ける手法である。

【必読ポイント!】 顧客価値創造プライシングを最適化しなさい

狙うべき良い顧客は誰か決める
ratch0013/iStock/Thinkstock

利益を上げるためにはまず、「誰をお客様にするか(顧客のセグメンテーション)」を考えるべきである。現在の顧客のニーズは多様化している。もっと言えば、一人の人間のニーズが時と場合によって多様に変化するようになっている。これによって心理的特性、行動特性を加味し、顧客を姓、年代、年収、家族構成、人種など、単なる数字の羅列としてでない人間の心理特性、購買行動特性に重点を置くことが肝要である。

そのため、マーケティングで成功するには、まず人間が何かを欲しくなる心のメカニズムを理解すること、つまり顧客ニーズとウォンツの理解が必要不可欠だ。

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要約公開日 2014.02.05
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