ロレックスの創業(1900年~1945年)
群雄割拠のスイス時計メーカー
20世紀初頭、スイスは世界の時計市場を支配し、1914年には世界生産の約40%を占めていた。当時、スイスの時計産業は少数の大手マニュファクチュール(メーカー)と、数多くの中小企業を基盤とした産業集積のように組織されていた。
当時、ほとんどのメーカーは高品質のムーブメント(駆動装置)を製造し、その精度の高さで競っていた。一方で、ブランドの美的側面はほとんど重視されていなかった。ロンジン、オメガ、ティソといったスイスの時計ブランドも、機能面では卓越していたが、見た目については特別なアイデンティティを持っていなかった。
ロレックスは、ハンス・ウィルスドルフという若く野心的なドイツ人商人によって創業された。市場で経験を積んだ彼は、数多の競争相手を観察した結果、「差別化」をする必要性に気づいた。時計ブランドは精度の高さだけでなく、「独創的な製品」であるべきである――そう思うに至ったのである。
「Rolex」の誕生

1903年、22歳のハンス・ウィルスドルフは、スイス時計を売るためイギリスに渡った。当時イギリスは、スイスの時計メーカーにとって重要な市場であったからだ。
ウィルスドルフはロンドンでスイス時計メーカーの代理店として2年働いた後、イギリス人パートナーとともに、スイス時計メーカーとイギリス市場を仲介する商社を立ち上げた。しかし彼はすぐに自社ブランドを持つことの重要性に気づき、複数の商標をスイスで登録し始めた。その中のひとつが「Rolex」である。
第一次世界大戦開始の翌年、イギリス政府は時計を含む贅沢品に高関税を課した。これを受け、ウィルスドルフはスイスのビエンヌに会社を移転することを決め、イギリスを離れた。ビエンヌでは、時計のムーブメントメーカーであるエグラーと提携した。エグラーは事実上専属のサプライヤーとなった。
20年、ウィルスドルフはジュネーブにロレックス時計株式会社(以下、ロレックス時計)を設立した。この時期、ロレックスの時計は、同社とエグラーの共同で開発されていた。ブランドの本質は時間の計測における正確性であり、形状やビジュアル・デザインではなかった。
自動巻き防水腕時計の開発
第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、ロレックスは自動巻きムーブメントを搭載した防水腕時計(オイスター)を開発・販売し、世界的成功を収めた。防水ケースの特許取得と自動巻きムーブメントの開発は、創業期のロレックスにおける重要な出来事のひとつである。大成功の背景には、懐中時計から腕時計へと、時計の使用様態が大きく変化したことが関わっている。
防水腕時計の開発はロレックスの技術的革新であることに違いないが、競合他社との差別化に至るラディカル・イノベーションではなかった。当時のロレックスのビジネスモデルは、他のメーカー同様、高品質の時計を大量生産して売るモデルであった。急進的な革新ではなく、フォロワー戦略を採用していたのである。



















