Z家族
Z家族
データが示す「若者と親」の近すぎる関係
NEW
Z家族
出版社
出版日
2025年09月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

Z世代を分析した本は数あるが、本書はZ世代とその親の関係に着目したユニークな一冊である。

ある特定の世代の特徴や傾向を見出すには、「比較」が欠かせない。本書の著者である博報堂生活総合研究所は、2024年と、その30年前である1994年に大規模な「若者調査」を実施した。当時の19~22歳の未婚男女を対象に、同じ条件・同じ項目での意識調査を行い、両者を比較することで「若者像」を導くことを試みた。

そこから見えてきたのが、本書のタイトルでもある「Z家族」だ。今の若者(Z世代)の家族関係、特に母親との関係は従来のそれと比べて格段に近く、また親密になっているという。

かつて親は小うるさく煙たい存在で、10代にもなると誰もが親に反抗したものだ。しかし今の若者に目立った反抗期はなく、むしろ母親は「何でも相談できる相手」「本当の自分を見せられる相手」として、親友や恋人よりも近しい存在になっているというのだ。

本書では調査から得られた膨大なデータをもとに、驚くべき「事実」が次々と提示される。Z世代については「空気を読みすぎる」「SNSの影響で他人と比較しがち」「恋愛をしなくなった」などさまざまな言説が飛び交うが、データを引き合いに出しながら「本当の姿」を明かしていく。

子は育つ過程で親から多大な影響を受ける。親世代が経験したことがそのまま、あるいは反面教師的に子育てに反映され、それがZ世代の価値観として表れているのも興味深い。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

博報堂生活総合研究所(はくほうどうせいかつそうごうけんきゅうじょ)
広告会社博報堂の企業哲学「生活者発想」を具現化するために、1981年に設立されたシンクタンク。人間を単なる消費者ではなく「生活する主体」として捉え、その意識と行動を継続的に研究している。1992年からの長期時系列調査「生活定点」のほか、さまざまなテーマで独自の調査を行い、生活者視点に立った提言活動を展開。本書は、若者研究チーム(酒井崇匡、高橋真、伊藤耕太、佐藤るみこ、加藤あおい)による調査・分析をもとに構成されている。

本書の要点

  • 要点
    1
    経済低迷の時代しか知らず「かわいそう」と言われがちなZ世代だが、実は生活の満足度・幸福度はとても高い。その裏には、親密すぎる家族関係「Z家族」の存在がある。
  • 要点
    2
    Z世代にとって、自分のことを最も理解し、かつ本当の自分をさらけ出せる相手は「母親」である。かつては同性の親友や恋人が占めていたポジションを、今は母親が占めるようになった。
  • 要点
    3
    この30年で女性の高学歴化・社会進出が進み、母親は子どもの勉強やキャリアに助言をするメンター的な存在になった。
  • 要点
    4
    就職内定者の保護者に了承を取る「オヤカク」が急増している。

要約

若者像のウソを見破る

「30年前の若者」と比べてみたら

いつの時代も、若者論は世間を盛り上げる「鉄板コンテンツ」だ。だが、それらは単なるイメージや思い込みであることも多い。「本当の若者像」にたどり着くには、長期的な変化を検証できるデータの分析が不可欠だ。

博報堂生活総合研究所では、1994年と、その30年後である2024年に大規模な「若者調査」を実施した。対象はいずれも19~22歳の未婚男女で、家族関係や交友関係、働き方、学び、環境意識など、さまざまな側面から若者の意識・行動の傾向を調査した。両者の結果を比較することによって、時系列の変化を分析できるようになったのだ。

両調査の対象である若者は、世代的に「親子関係」にあたる。今の若者であるZ世代は、親世代が若者であった時代と何が変わり、何が変わっていないのか? まずはその辺を紐解いていこう。

若者像の誤解
Ababsolutum/gettyimages

2つの若者調査を比較して浮かび上がったのは、次の3つの「若者像」である。(1)今も昔も変わらない若者像、(2)他の世代にも共通する「だけじゃない」若者像、(3)イメージとは違う「正しくない」若者像。ここでは(2)と(3)の代表例を紹介する。

・「だけじゃない」若者像

「意見が違っても反論しない」「目立つ格好をするのは恥ずかしい」といった「空気を読みすぎる」傾向は、この30年で大幅に上昇している。だがこれは若者に限った話ではなく、親世代も同様であるようだ。

「仕事では気楽な地位にいるほうがいい」「人生の目標がない」「仕事に燃えている女性は素敵だ」なども若い世代に限らず、時代的な傾向だと言える。

・「正しくない」若者像

Z世代がよく言われる言説には、実像と乖離しているものも少なくない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3654/4371文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.12.09
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
プロ目線のPodcastのつくり方
プロ目線のPodcastのつくり方
野村高文
ランサムウエア攻撃との戦い方
ランサムウエア攻撃との戦い方
勝村幸博
一・五代目 孫正義
一・五代目 孫正義
井上篤夫
頼るのがうまい人がやっていること
頼るのがうまい人がやっていること
有川真由美
職場問題ハラスメントのトリセツ
職場問題ハラスメントのトリセツ
村井真子
リーダーの「任せ方」の順番
リーダーの「任せ方」の順番
伊庭正康
記憶脳
記憶脳
樺沢紫苑
「リーダーシップのベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。
「リーダーシップのベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。
小川真理子藤吉豊