DEEP THINKING
Where Machine Intelligence Ends and Human Creativity Begins

未 読
DEEP THINKING
ジャンル
著者
Garry Kasparov Mig Greengard
出版社
出版日
2017年05月02日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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レビュー

人工知能に関する議論は尽きることがない。人工知能の進化はめざましく、SF小説で描かれたストーリーは、次々と現実のものとなっていく。

本書の著者ガルリ・カスパロフは、弱冠22歳でチェスの世界チャンピオンの座を獲得し、そのタイトルを15年間も保持した天才的なチェスプレーヤーであった。著者と、IBMの開発したチェス・マシン「ディープブルー」との対局は、人間の知能と人工知能との歴史的対局として世界中から注目を集めた。

著者はチェスの歴史を概観しつつ、チェス・マシンが誕生し、進化を遂げていく軌跡をたどりながら、著者とディープブルーとの熱戦へと読者をいざなう。手に汗握る対局の光景が鮮やかな筆致で描かれる。そして、最先端の人工知能と私たち人間がどのように関わり合えば明るい未来を切り開けるのかを、著者は力強く提言する。

人間の知力だけでは太刀打ちできない人工知能に、職業や社会的地位を奪われるのではないか。そんな恐怖を著者自身が身に染みて感じたという。しかし、著者の展望は楽観的であり、説得力に満ちている。人工知能をはじめとする機械とパートナーを組み、その発展を促し、テクノロジーを大いに活用することにより、私たち人間の生活をより豊かなものにできる、というのが著者の見解だ。人工知能と人間との関係についての、世界最高峰の「知」を発揮し続けてきた著者ならではの提言は、未来へのロードマップを描く際に、大いなる希望と示唆を与えてくれることだろう。

佐藤 瑞恵

著者

ガルリ・カスパロフ
人権活動家、作家、元チェス世界チャンピオン。ビジネスパーソンを対象とした講演活動を広く行う。特に、戦略的思考、業績の達成、テクノロジー改革についての基調講演やセミナーは、世界各国で高い評価を受ける。ウォールストリート・ジャーナル紙を始め、各種刊行物への寄稿多数。著書に、How Life Imitates Chess(「決定力を鍛える―チェス世界王者に学分生き方の秘訣」 NHK出版)、およびWinter is Comingがあり、これら著書は、多数の言語に翻訳されている。Foundation for Responsible Robotics諮問委員会のエクゼクティブ・メンバー。オックスフォード大学マーティン・スクールの客員研究員として、学際的研究および人間と機械の意思決定についての研究に従事。

ミグ・グリーンガード
ガルリ・カスパロフのスポークス・パーソン、また、アドバイザー。カスパロフと共に、数多くの記事、スピーチ、書籍を著述。ニューヨーク州ブルックリン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    チェスは、人間の認知能力の解明やコンピューターのプログラミング理論への応用に寄与するものと考えられてきた。そのため科学者たちは長い間チェス・マシンを生み出すことに魅了されていた。
  • 要点
    2
    チェス・マシン「ディープブルー」は、チェスの世界チャンピオンであった著者と1997年に第二戦を迎え、初の勝利を収めた。
  • 要点
    3
    テクノロジーや人工知能の発展を逆戻りさせるのは間違いだ。夢を描けるのは人間だけである。テクノロジーと協働して夢の実現をめざすことで、明るい未来を切り開くことが可能となる。

要約

チェスに関する基礎知識

チェスの起源と世界各地に広がる人気

チェスの起源ははっきりとわかっていない。チェスの原型と思えるゲームが、古代インドで広まり、6世紀頃にアラブやイスラム諸国に伝わったという。中世後期までには南ヨーロッパに普及したようだ。15世紀の終わりにはヨーロッパ全体に広まり、クィーンやビショップといった駒も加えられ、ゲームがよりダイナミックなものとなっていった。地域や文化による違いはあるが、18世紀にプレーされていたチェスは今日のチェスとほぼ変わりがない。

世界中のチェス人口は数億人と推定されている。チェスが伝統的に盛んな地域は旧ソビエト連邦諸国であるが、その人気は世界各地へと広まっている。近年ではインドが輩出した世界チャンピオンのヴィスワナーン・アーナンドの影響で、チェスはインドでも人気を博しているという。

チェスにまつわる誤解
DimaSobko/iStock/Thinkstock

一般的に、一流チェスプレーヤーは知能レベルが高いという印象がある。確かに彼らは記憶力、集中力ともに優れている。一方でチェスプレーヤーには良きにつけ悪きにつけ、様々な誤った印象がつきまとう。

著者はチェスのスキルと一般的知能との間にほとんど相関関係はないと考えている。チェスプレーヤーの優劣を決定する能力は明らかではないという。

プロのチェスプレーヤーは、ゲームのオープニングと呼ばれる序盤の動きを入念に研究し、その知識を実際のゲームの際に記憶から引き出している。駒を動かしている間、脳内でも、数学の問題を解いているときに活動する部位よりも視覚的空間を司る部位のほうが大きく活動している。

優れたプレーヤーほど、駒の配置のパターン認識に長けており、情報をチャンク(塊)として拾い上げるのが得意だ。心の目を通して、これらを分析し、駒の動きを考えていく。能力が同等レベルのプレーヤー同士であっても、駒の配置、戦略、プレーのスタイルは様々であり、それらが創造性や卓越性の源泉になっているといえる。

しかし、「チェスプレーヤーには反社会的な面がある」という印象も存在している。頭脳の処理能力が高くなると、情緒面に欠落している部分があるのではないかというわけだ。このような先入観が生じるのは、人々がチェスをよく知らないことに起因していると著者は推察している。実際のところチェスは、6歳児でもプレーできる楽しいゲームなのだ。

著者はいかにして世界で活躍するチェスプレーヤーになったのか

優秀なチェスプレーヤーを探し求めていた時代背景
PhonlamaiPhoto/iStock/Thinkstock

著者が育った旧ソビエト連邦では、チェスは国民的な趣味の一つであり、まるでプロスポーツのように見なされていた。旧ソビエト連邦諸国からのプレーヤーが長年、世界チャンピオンの座に君臨していたこともうなずける。1970年代、著者は生誕地アゼルバイジャンでチェスに没頭していた。

この時期、アメリカ人のチェスプレーヤー、ボビー・フィッシャーがことごとくソビエトの一流プレーヤーを打ち負かしていた。フィッシャーが世界チャンピオンに輝いたとき、ソビエトは国家の威信をかけても、世界チャンピオンのタイトルを取り返そうと躍起になっていた。

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テクノロジー・IT
著者
Garry Kasparov Mig Greengard
出版社
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出版日
2017年05月02日
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