科学が他の分野と異なるのは、特別な「科学的方法」があるからだと多くの人は考えている。しかし、科学とは何かを考える科学哲学者たちは、「科学的方法」などというものはないという認識を共有している。科学理論が生まれるまでの道のりは一通りではない。偶然の発見やひらめきなど、思いがけない幸運で生まれることもある。それでも多くの人が科学に信頼を寄せるのは、たとえ偶然から生まれた理論であっても、結果を合理的に再構成できるからだ。つまり、重要なのは、科学理論を発見する方法ではなく、理論が論理的に正当とみなされるまでの過程である。
ただし、科学哲学者たちは単純な「科学的方法」を否定する一方で、方法論の分析に価値も見出してもいる。方法論に着目することは、科学と科学以外を線引きする手段になりうるのだ。科学と非科学を区別するための「線引き問題」は20世紀初頭以降、哲学者の大きな関心を集めてきた。この問題に取り組んだカール・ポパーは、科学問題の「反証可能性」に着目するアプローチを提示した。これは、科学理論は反証によって否定される可能性をもっていなければならないという考え方だ。
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