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「科学的に正しい」とは何か
出版社
ニュートンプレス

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出版日
2024年05月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

インターネットの普及に加え、AIの急速な発達によって、私たちは莫大な量の情報に囲まれている。それゆえに、物事の「正しい」理解をすることはかえって難しくなっている。あふれる情報の真偽を見極めるのは容易ではない。しかし、本書が提示する「科学的態度」を身につければ、自らの判断で正しい情報を選び取る力を養うことができるだろう。

科学とは、研究者たちがデータに基づいて相互に誤りをチェックし、修正を重ねることで信頼性を高めていくプロセスである。これを機能させるには、自分が正しいと思っていたことでも、確かな根拠に基づいて否定されたならば、誤りを受け入れて修正に応じる心構えが不可欠だ。そしてこれこそ、科学の正しさを特別なものにする科学的態度だ。

科学者も人間である以上、さまざまな認知バイアスにとらわれ、意図しないミスを犯すこともある。しかし、科学的態度を備えた複数の科学者たちがお互いにチェックしあうことで誤りは減らしていける。

この態度は、研究以外の場面、私たちの日常生活の中でも必要とされることだ。どの情報が正しいのかを判断するために複数の情報源を確認したり、他の人に意見を求めたりする。組織の意思決定の際に、リーダーの独断ではなく多様な立場の意見を取り入れる。こうした方法をとりながら、場合によっては自分の意見を修正する。こうすることで、正しい判断に近づくことができる。本書は科学哲学の入門書であると同時に、あやふやな情報に惑わされずに、真理を求めるための「作法」を学べる一冊である。

ライター画像
大賀祐樹

著者

リー・マッキンタイア(Lee McIntyre)
ボストン大学哲学・科学史センターリサーチフェロー。著書の『ポストトゥルース』(人文書院)は世界6カ国で翻訳され、ベストセラーとなった。

本書の要点

  • 要点
    1
    「科学的方法」や「科学であること」の厳密な基準は定めにくいが、科学的態度の有無で科学でないものを見分けることはできる。
  • 要点
    2
    科学的態度とは、経験的根拠を重視し、新たな根拠に基づいて自説を改める意思をもつ姿勢である。
  • 要点
    3
    科学は、科学的態度を共有する科学者たちが、互いの誤りを検証し、ミスや不正を修正する集団的プロセスである。
  • 要点
    4
    信じたいことのみを擁護し、誤りを認めない姿勢は、科学的な態度ではなく、疑似科学である。

要約

科学的方法と線引き問題

科学的方法はない

科学が他の分野と異なるのは、特別な「科学的方法」があるからだと多くの人は考えている。しかし、科学とは何かを考える科学哲学者たちは、「科学的方法」などというものはないという認識を共有している。科学理論が生まれるまでの道のりは一通りではない。偶然の発見やひらめきなど、思いがけない幸運で生まれることもある。それでも多くの人が科学に信頼を寄せるのは、たとえ偶然から生まれた理論であっても、結果を合理的に再構成できるからだ。つまり、重要なのは、科学理論を発見する方法ではなく、理論が論理的に正当とみなされるまでの過程である。

ただし、科学哲学者たちは単純な「科学的方法」を否定する一方で、方法論の分析に価値も見出してもいる。方法論に着目することは、科学と科学以外を線引きする手段になりうるのだ。科学と非科学を区別するための「線引き問題」は20世紀初頭以降、哲学者の大きな関心を集めてきた。この問題に取り組んだカール・ポパーは、科学問題の「反証可能性」に着目するアプローチを提示した。これは、科学理論は反証によって否定される可能性をもっていなければならないという考え方だ。

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要約公開日 2025.06.14
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