インターネットには情報が溢れている。外国の新聞・雑誌は簡単に読むことができるし、SNSを見ていれば紛争地域の住民が置かれている状況もある程度わかる。さらには北京のどの通りが今混雑しているか、旅客機や商船が世界のどこを通っているのかを知ることも難しくない。少しお金を出せば、衛星写真で北朝鮮の核ミサイル基地を直接確認することさえ可能である。
しかし溢れる生情報を分析する方法――比喩的にいえば「情報処理装置」――はインターネットからはなかなか手に入らない。情報は誰にでもいくらでも入ってくるが、その処理装置を自分の中に作り上げることは簡単ではないのである。
生情報氾濫の弊害のひとつに、フェイクが混じりやすいことがある。偽情報を完全に見分けることは困難であり、専門家であってもフェイクに引っかかることはある。だが、一定の相場感を身につけることはできる。
たとえばカレーを作ったことがある人なら、「3分でカレーが作れます」という触れ込みのレシピを見たら、なにかがおかしいと思うはずだ。誇張かもしれないし、従来とはまったく違う手法なのかもしれない、あるいはレトルトカレーを温めるだけではないか、といった疑いの目を持つことができる。これと同じように、情報分析がどのようになされているかを知れば、偽情報に引っかかる確率は大幅に下げられるはずだ。
情報分析は料理に似ている。生のままでは食べられず、調理してはじめて食べられるようになる。この「料理」に、生情報(インフォメーション)を処理して役立つ形に変換したものを、情報分析ではインテリジェンスと呼ぶ。集めた食材(情報)を調理(処理)して、お客さん(情報需要者)が食べられる料理(情報資料)に仕立て直して、はじめて意思決定に役立つものになるのだ。
インテリジェンスという言葉は諜報機関でも用いられるので、非常に特殊なものというイメージが持たれがちだ。実際、敵国の高官を買収して得た秘密情報のようなインテリジェンスも存在する。しかしそれは超高級料亭で有名料理評論家にだけ出される特別な料理のようなものだ。
本書が目指すのは、普通に炊いたごはんに、塩鮭を焼いて味噌汁とおしんこをつけた朝ごはんを作れるようになることだ。当たり前に手に入る材料をしっかりと処理する手順を身につけさえすれば、日常のほとんどの事態には対応できるようになる。これは誰にでもできるが、一方でやり方を知らないとうまくできないことでもある。驚くような手法ではないが、それゆえに、ビジネスパーソンから学生までの幅広い人にとって重要なことであるはずだ。
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